21. 人間さんは入りますか?
二日酔い事件から一日、
俺は森にいた。
そして、俺はつくづく感じていた……
それは何かというと、
収納の刻印石。
それが完成してから、俺の冒険者生活は、少しだけ変わった。
いや、
少しどころではない。
かなり変わった。
「便利すぎる……」
俺は森の中で呟く。
目の前には採取した薬草。
その横には鉱石。
さらにその奥には……
「……」
石、
大量の石。
以前なら、持ち帰るだけで一苦労だった。
しかし、
今は違う。
「収納」
小さな石へ魔力を流す。
すると、
目の前の素材が次々と消えていく。
重量は変わらない。
見た目も変わらない。
でも、
中には大量の物が入っている。
「最高だ……」
思わず笑みがこぼれる。
冒険者として便利。
それもある。
だが、
一番大きいのは、
石を諦めなくていいこと。
「この世界の石、全部見て回りたいな」
そんな夢が少しずつ現実になっている気がした。
そんなある日、
俺は冒険者ギルドで、ある人物を見つけた。
「……あ」
見覚えのある顔。
大きな体。
少し怖そうな顔。
「レグさん」
「ん?」
男はこちらを見る。
「お前……」
「バサルトか」
「はい」
数日前に出会った盗賊。
いや、
元冒険者?らしい男。
「元気そうだな」
「レグさんも」
そう言うと。
レグさんは少し苦笑した。
「まあな」
「今は少し仕事を探しているところだ」
「仕事?」
「ああ」
盗賊をやめたらしい。
当然と言えば当然だ。
ずっと続けられるものではない。
「そういえば」
俺は思い出す。
「あの収納袋」
「使わせてもらいました」
レグさんの表情が変わる。
「使った?」
「はい」
俺は小さな石を取り出す。
「これです」
「……」
レグさんが見る。
そこには刻印が刻まれている。
「収納……」
「まさか」
「刻んだのか?」
「はい」
レグさんはしばらく黙った。
そして、
「本当に変な奴だな」
笑った。
「ところで」
俺は前から気になっていたことを聞く。
「収納って」
「人も入るんですか?」
「……」
レグさんの顔が固まった。
「……」
「……」
沈黙が続く……
「あの」
「バサルト」
「はい」
「今なんて言った?」
「人も収納できるのかな、と」
俺は言い直す。
すると、
レグさんは頭を抱えた。
「いや……」
「お前……」
「普通そこを試そうとするか?」
「?」
俺は不思議に思う。
だって、収納だ。
物を入れる。
なら人は?
当然の疑問ではないだろうか。
「危険だぞ」
レグさんは真剣な顔になる。
「もし入った後、何かあったらどうする」
「確かに……」
言われてみれば……
簡単に試していいことではない。
「すみません」
「いや」
レグさんはため息をつく。
「お前らしいと言えば、お前らしい」
しかし、
俺にはもう一つ気になることがあった。
「でも」
「理論上は可能なのでは?」
収納とは、
空間を別の場所へ繋ぐ能力。
物質を保存する。
ならば、人間も物質ではある。
「……」
レグさんが俺を見る。
「やめろよ?」
「え?」
「その顔」
「絶対また研究しようとしている顔だ」
「……」
図星だった。
その後、
俺はガルドさんにも聞いてみた。
「人間を収納できるか?」
すると、
「……」
ガルドさんも沈黙した。
「バサルト」
「はい」
「お前は」
「たまに発想が怖いな」
「え?」
「いや」
ガルドさんは苦笑する。
「だが」
「そういう発想が、普通じゃないものを生むのかもしれない」
「……」
少し嬉しかった。
結論、
人間収納は危険なので試さない。
今のところ。
そう決めた。
でも、
収納の刻印石。
これは間違いなく俺の旅を変える。
素材
鉱石
道具
全部運べる。
そして、
俺は思った。
「もっと改良できるかもしれない」
容量、
効率、
使いやすさ。
まだまだ研究の余地がある。
石と同じだ。
知らないから面白い。
分からないから調べたい。
それが。
俺が石を好きな理由だった。
評価をお願いします!




