20. 果実水で二日酔いだぜ!(……うん、なんでかな?)
翌朝、
「うぅ……」
目を覚ました瞬間、頭が重かった。
ズキズキする。
身体も少しだるい。
「……あれ?」
昨日、酒なんて一滴も飲んでいない。
飲んだのは果実水だけだ。
「なんで……?」
ベッドから起き上がる。
ふらり、と身体が揺れた。
「うわっ!」
危うく床へ倒れそうになり、慌てて机へ手をつく。
「まさか風邪……?」
いや、
熱はない。
咳もない。
ただ、頭だけが重い。
「……」
前世でもこんな感じになったことがある。
会社の飲み会で、
酒はあまり飲まなかったのに、周りの勢いで付き合わされて……
「二日酔いみたいだな」
いやいや、酒飲んでないじゃないか。
自分で自分にツッコミを入れる。
宿を出る。
朝日が眩しい。
「うぅ……」
今日はいつも以上に光が目に染みる。
これ、本当に二日酔いじゃないか?
そんなことを考えながら冒険者ギルドへ向かう。
ギルドへ入ると⋯⋯
「ぐはぁ……」
「頭いてぇ……」
「もう飲まねぇ……」
昨日の先輩冒険者たちが、机へ突っ伏していた。
ガルドさんまで、ぐったりしている。
「お、おはようございます……」
俺が声を掛けると、ガルドさんがゆっくり顔を上げた。
「バサルトか……」
「おはようございます」
「元気そうだな……」
「いえ」
俺は首を振る。
「実は俺も頭が痛くて」
「……は?」
ギルド中が静かになった。
「酒飲んでねぇだろ?」
「果実水しか飲んでません」
「じゃあ何で二日酔いなんだよ!」
俺が知りたいよ、そんなの。
そこへ受付のお姉さんが近づいてきた。
「あら?」
「バサルト君も体調悪いの?」
「はい……」
「昨日飲んだものは?」
「果実水です」
「……」
受付さんは少し考え込む。
「あっ」
何か思い当たったらしい。
「もしかして、うちの果実水かも」
「え?」
話を聞くと、
この世界の果実水とは、
果物を水で薄めた飲み物……
ではないらしい。
魔力を含んだ果実を、
魔力を多く含む天然水で抽出した飲み物らしい。
「つまり」
「魔力回復飲料なのよ」
「……」
俺は固まった。
「えっと」
「四杯飲みました」
「でしょうね」
受付さんは苦笑する。
「普通は一杯で十分なの」
「飲み過ぎると?」
「魔力酔いするわ」
「……」
「症状は?」
「頭痛」
「めまい」
「倦怠感」
「酒の二日酔いとほぼ同じね」
「……」
完全に今の俺だった。
「ぶははははは!」
ガルドさんが腹を抱えて笑う。
「酒じゃなくて果実水で二日酔い!」
「初めて聞いたぞ!」
周りの冒険者たちも笑い始めた。
「伝説だな!」
「新人すげぇ!」
「いや、笑い事じゃ……」
俺は頭を押さえる。
「知らなかったんです」
「まぁ、普通は知らねぇよ」
ガルドさんは涙を拭きながら言う。
「でも覚えたな」
「果実水は飲み過ぎるな」
「はい……」
勉強になった。
「ほら」
受付さんがコップを差し出す。
「これ飲んで」
「これは?」
「精製水」
透明な水だった。
「魔力を落ち着かせる効果があるの」
「ありがとうございます」
俺は一気に飲み干す。
「……」
「……あれ?」
さっきまで重かった頭が少しずつ軽くなっていく。
「治った……」
「でしょ?」
受付さんが笑う。
「精製水は魔力酔いの特効薬なの」
「すごいですね」
「だから昨日は飲ませようと思ったんだけど……」
「皆酔っ払って忘れてたのよ」
ガルドさんたちは気まずそうに目を逸らした。
「すまん」
「完全に忘れてた」
「まぁ」
俺も苦笑する。
「いい経験になりました」
絶対にもう、
果実水を飲みすぎないと誓った俺であった。
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