17. 収納の刻印
盗賊もとい、レグさんたちと別れた後、
俺は街へ戻る道を歩いていた。
だが、頭の中は、別のことでいっぱいだった。
「収納……」
何度もその言葉が頭を巡る。
収納魔法。
物を別空間へ保管する魔法。
冒険者にとっては非常に便利な能力だ。
大量の素材を運べる。
荷物を減らせる。
旅では必須とも言える能力。
でも、俺が一番思っていることは……
「石をたくさん持ち運べる……」
だった。
「……」
自分でも思う。
普通そこじゃないだろう、と。
でも仕方ない。
俺は石好きなのだから。
宿へ戻ると、俺は机の上に石を置いた。
依頼達成報告は、この際、あとにする。
そして、
その隣に、レグさんから預かった収納袋を置く。
「さて……」
問題はここからだ。
今まで刻印したもの。
土壁
探知
どちらも成功した。
しかし、
収納は少し違う。
魔法というより。
空間そのものを扱う能力。
果たして石に刻めるのか。
「……」
少し不安になる。
だが、同時に、
楽しみでもあった。
前世でも、
新しい鉱石を見つけた時、
初めて見る結晶を手にした時、
同じ感覚だった。
未知への興味……
試したいという気持ち。
「やってみるか」
俺は石を握る。
まず、
収納袋に魔力を流す。
すると、
袋の内部に広がる特殊な魔力構造が感じ取れた。
「……」
不思議だ。
普通の魔法とは違う。
空間が折り畳まれているような。
小さな袋の中に大きな場所が存在しているような。
「これを……」
石へ刻む。
「《岩石刻印》」
魔法陣が浮かぶ。
石が光る。
収納袋から流れる魔力。
それを石へ移す。
だが、
「……っ」
難しい。
探知や土壁とは比べ物にならない。
空間というものを理解する必要がある。
「ただ保存するんじゃない」
「入り口と出口を作る……」
イメージする。
石の中に小さな空間を。
そこへ繋がる道。
そして、取り出すための入り口。
「……!」
石の光が強くなる。
成功する。
そう思った瞬間、
バキッ。
「え?」
嫌な音がした。
手の中を見る。
刻印途中だった石に。
亀裂が入っていた。
「失敗……」
少し落ち込む。
しかし、
「いや」
俺は石を見る。
完全な失敗ではない。
途中まで刻めていた。
つまり、
「可能性はある」
その後、何度も試した。
一つ目、
失敗。
二つ目、
失敗。
三つ目、
失敗。
「……」
机の上には割れた石が増えていく。
普通なら諦めるところだろう。
でも、俺は違った。
「あと少し」
「ここを変えれば……」
石を見る。
割れ方。
魔力の流れ。
刻印の形。
全てを見る。
そして気づく。
「なるほど……」
空間を直接刻もうとしていた。
だから石が耐えられなかった。
必要なのは。
空間そのものではなく。
「収納へ繋がる道」
つまり、石は入口になるだけでいい。
もう一度、
新しい石を用意する。
今度は、前に買ったD級魔石だ。
絶対に失敗していられない……
「《岩石刻印》」
魔法陣
魔力
イメージ
今度は違う。
無理に大きな力を押し込まない。
石に合わせる。
石の性質を利用する。
自然と、
《好きこそものの上手なれ》も発動する。
石への理解、刻印への集中、
その全てが高まる。
そして、
「……」
光が収まる。
手の中には一つの石が。
そこには新しい刻印が刻まれていた。
「成功……」
俺は息を吐く。
試してみよう。
小さな石を持ち、刻印石へ魔力を流す。
「収納」
すると、手の中の石が消えた。
「……!」
もう一度やってみよう。
意識する。
「取り出し」
すると、
石が手元に戻る。
「できた……」
俺は思わず笑う。
初めて作った。
新しい力……
「収納の刻印石」
そして、
俺はすぐに気づいた。
これがあれば旅が楽になる。
素材集めも依頼も。
そして、もちろんのこと、
「石集めも……」
「……」
やっぱりそこだった。
でも、それでいい。
俺は石が好きだ。
好きだからこそ。
この力を磨いていく。
収納の刻印石が出来上がった後、
俺は冒険者ギルドへ向かった。
すると、
受付のお姉さんが驚いた顔をする。
「バサルトさん」
「はい?」
「その荷物……」
「ああ」
俺は背負っていた大きな袋を見る。
中には、大量の石がある。
「……」
受付さんは少し困った顔をした。
「また拾ったんですか?」
「はい」
即答。
すると、隣にいた冒険者が呟く。
「新人なのに、変な奴だな……」
だが俺は気にしない。
だって、この世界には、
まだ見たことのない石が山ほどあるのだから。
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