14. 石好きの初依頼
冒険者として初めての依頼。
内容は、
『薬草採取』
難易度としては、Fランク冒険者向け。
つまり、初心者用の依頼だ。
……なのだが。
「本当に大丈夫か?」
隣を歩くガルドさんが聞いてくる。
「はい」
俺は頷く。
「問題ありません」
そう答えたものの。
正直に言えば、
少し緊張していた。
今までの俺は、屋敷の中で暮らしていた。
森を歩いた経験なんてほとんどない。
外に行くのも我慢してたから、木々に囲まれるのも久方ぶりだ。
そして、魔物と戦った経験もないから、
冒険者としては、完全な新人だ。
だからこそ、
「気を付ける」
そう決めていた。
今度こそは石にまみれて生活したいのに、
こんなところで死んでたまるか。
街から少し離れた場所。
そこには広大な森が広がっていた。
「ここが……」
初めて見る、本格的な自然。
木々が高く伸び、太陽の光が葉の隙間から差し込む。
風が吹くたび、葉が揺れる。
「綺麗だ……」
思わず呟く。
すると、
「森がか?」
ガルドさんが聞く。
「はい」
俺は周囲を見る。
「木もそうですが……」
地面を見る。
そこには小さな石が転がっていた。
「石も」
「……」
ガルドさんは少し黙る。
そして、
「やっぱりそこか」
苦笑した。
「え?」
「いや」
「お前、本当に石が好きなんだな」
「はい」
即答。
迷う理由なんてない。
ガルドさんは少し笑った。
「分かりやすいな」
「さて」
ガルドさんが周囲を見る。
「薬草は、この辺りにあるはずだ」
「《探知》は使わないんですか?」
聞いてみる。
「使える」
「じゃあ……」
「だが」
ガルドさんは首を振る。
「新人の経験にならない」
「まずは自分で探せ」
「なるほど」
確かにそうだ。
何でも能力に頼っていては成長できない。
俺は周囲を見る。
薬草。
薬草。
薬草。
……。
「分からない」
全然分からない。
石なら多少見分けられるのに。
植物は専門外だった。
「……」
少し悔しい。
すると、
「焦るな」
ガルドさんが言った。
「最初は誰でもそうだ」
「見つけ方を覚えろ」
「はい」
その言葉で、少し気持ちが楽になる。
しばらく探していると。
「あ」
小さな緑色の草が目に入った。
「これ……ですか?」
ガルドさんが確認する。
「近い」
「葉の形を見ろ」
指差された部分を見る。
「ここのギザギザが特徴だ」
「なるほど……」
覚える。
こういう知識も冒険者には必要なのだ。
その後、
何度か間違えながらも、少しずつ薬草を集めていった。
そして、
「……」
俺の目が、ある場所で止まる。
「どうした?」
ガルドさんが聞く。
「いや……」
地面を見ると、
そこには、小さな石があった。
普通の冒険者ならば、気にも留めない石。
だが、俺には分かる。
「これは……」
拾い上げる。
「魔力が少し残っています」
「分かるのか?」
「はい」
《岩石刻印》
《好きこそものの上手なれ》
二つのスキル。
そして、石への知識。
それらが少しずつ繋がっている。
「すごいな」
ガルドさんが言った。
「薬草より石を先に見つけるとは」
「……」
反論できない。
その後も採取を続け、必要数の薬草を集めることができた。
「よし」
ガルドさんが頷く。
「初依頼、達成だな」
「ありがとうございます」
俺は集めた薬草を見る。
達成感があった。
大きな魔物を倒したわけではない。
特別な力を使ったわけでもない。
でも、初めて自分の力で報酬を得るための一歩を踏み出した。
「冒険者って……」
悪くないかもしれない。
帰り道、
ガルドさんが突然足を止めた。
「……」
周囲を見る。
「どうしました?」
「少し待て」
目を閉じる。
「《探知》」
しばらくして、
「近くに魔物がいる」
「……」
俺は身構える。
初めての魔物……
緊張する。
だが、ガルドさんは落ち着いていた。
「大丈夫だ」
「俺がいる」
その言葉に安心する。
初めての魔物、
それはどんな姿なのだろうか……
評価をお願いします!




