↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/50

13. 強面の男

 冒険者になった翌日俺は朝早くからギルドへ向かっていた。

 理由は簡単、

 初依頼を受けるためだ。

 え?

 昨日受けた薬草採取を今日かって?

 全く装備がなかったからだ。

 なけなしの金をはたいて買った装備で俺は今日こそ、と向かっているのだ。

 財布の中は大銅貨6枚……

 60メルクルだけだ。

 ちなみに、昼食代は、大鉄貨1枚で1000メルクル。

 つまり、後が無いってことだ。

 俺はギルドの前に着いた。

 だが、

 初めての冒険者としての仕事、少しだけ緊張していた。

「……」

 ギルドの扉を開く。

 昨日と同じように、冒険者たちの声が聞こえる。

 でも、

 昨日とは少し違って見えた。

 昨日はただの観光客のような気分だった。

 でも今は、

 俺も、この場所に所属している。

 そう思うと少しだけ胸が熱くなった。

「さて……」

 依頼へ行こう。

 そう思った時だった。

「おい」

 後ろから声がした。

「……俺?」

 振り返る。

 そこにいたのは、大きな男だった。

 身長は俺より頭二つ分ほど高い。

 分厚い腕。

 傷の入った顔。

 背中には大きな荷物。

 第一印象は⋯⋯

「怖い……」

 正直に言うと、そう思った。

 冒険者というより、歴戦の戦士。

 近づくだけで威圧感がある。

「新人か?」

「あ、はい」

 思わず背筋が伸びる。

「昨日登録したばかりです」

「そうか」

 男は俺を見る。

 じっと、何かを確認するように。

「その装備で森へ行く気か?」

「……」

 俺は自分を見る。

 普通の服。

 その上には、鉄のチェストプレート。

 これは、最低限の防具だ。(なけなしの金だから、最低ランクの装備……)

 そして腰には、何もない。

 つまり、武器すら持っていないのだ。

 理由は明白、買えるだけのお金がないからだ。

「……問題ありますか?」

 聞いてみる。

 すると、

「ある」

 即答だった。

「新人が一人で森へ行くのは危険だ」

「でも、薬草採取だけなら……」

「その考えが危ない」

 男はため息をつく。

「薬草採取でも魔物は出る」

「森は、お前が思っているほど優しくない」

「……」

 正論だった。

 何も言い返せない。

「すみません」

 謝る。

 すると、

「別に怒っているわけじゃない」

 男は言った。

「新人が死ぬのを見たくないだけだ」

「え?」

 怖そうな見た目からは想像できない言葉だった。

「俺はガルド」

 男は名乗った。

「ガルド=ヴァルディア」

「バサルト=ガリソディアです」

「ガリソディア?」

 一瞬、ガルドの眉が動く。

「あのガリソディア家か?」

「……一応」

「貴族だったのか」

「今は違います」

 俺は苦笑する。

 詳しい説明はしない。

 するとガルドは少し考えた後、

「そうか」

 それだけだった。

 貴族だから態度を変えることもないし、詮索してくることもない。

 俺は、少し安心した。

「ところで」

 ガルドが聞く。

「お前、スキルは?」

「《岩石刻印》です」

「……」

 一瞬沈黙。

 やっぱり珍しいのだろうか。

「それと、《好きこそものの上手なれ》」

「二つ持ちか」

「はい」

 ガルドは腕を組む。

「珍しいな」

「でも、戦闘向きではないです」

 そう言うと。

「そうか?」

 意外な返事が返ってきた。

「使い方次第だろ」

「……」

 まただ。

 父上とは違う。

 この世界では、スキル名だけで判断しない人もいる。

「ちなみに」

 ガルドが荷物を下ろす。

「俺のスキルも二つある」

「二つ?」

「ああ」

 ガルドは糸を取り出した。

 そして、腰にかけてある破れた袋を手に取る。

「《裁縫》」

 魔力が流れる。

 すると、糸がひとりでに動き始める。

 破れた部分が、綺麗に修復されていく。

「すごい……」

 思わず声が出る。

 だが、

「戦闘スキルではないですよね?」

 聞く。

 するとガルドは笑った。

「だろう?」

 次に、

 目を閉じる。

「《探知》」

 瞬間、ガルドの表情が変わった。

「半径10m」

「人間32人」

「……」

 驚いた。

「《探知》は便利だろ」

「はい」

「《裁縫》も便利だ」

「はい」

 ガルドは笑う。

「使い方次第だ」

 その言葉が妙に心に残った。

「お前」

 ガルドが言う。

「薬草採取に行くんだろ」

「はい」

「なら」

 少し間を置く。

「俺も同行してやる」

「え?」

「新人を一人で森に行かせるわけにはいかん」

「でも……」

「報酬はいらん」

「え?」

「ただの新人指導だ」

 怖そうな顔、低い声。

 でも、

 言っていることは優しい。

「ありがとうございます」

 頭を下げる。

「よろしくお願いします」

「おう」

 ガルドは頷いた。

「じゃあ行くぞ」

「初依頼だろ」

「気を抜くなよ」

 こうして、俺は初めての冒険へ向かうことになった。

 そして、この出会いが後に俺の旅を大きく変えることになるとは、

 この時の俺は、まだ知らなかった。

評価をお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。