11. 石好き追放2日目……もう金欠です……
朝、
目が覚めた瞬間、俺は昨日のことを思い出した。
「……」
ゆっくりと視線を横へ向ける。
そこには昨日買った鉱石たちが並んでいた。
赤い鉱石、
青い魔石、
黒く光る石。
どれも美しい。
どれも素晴らしい。
「……」
数秒間、俺は黙って眺める。
そして、
「最高だ……」
思わず呟いた。
昨日の買い物。
後悔しているかと言われればしていない。
全く。
むしろ、人生で最高の買い物だったと思う。
だが、
問題は……
「……」
俺は机の上を見る。
その横の財布を見る。
恐る恐る開く。
「……」
静寂。
そして、
「……少な」
現実だった。
昨日まで、そこそこあったはずのお金。
それが今では宿代と食事代を考えると、長くは持たない。
父上からもらった大銀貨一枚どこへ行ってしまったのだろうか。
「……」
俺は椅子に座る。
冷静に考える。
追放された。
つまり、今までのような貴族生活はない。
食事が用意されることもない。
住む場所が保証されるわけでもない。
自分で稼ぐ必要がある。
「完全に忘れていた……」
石のことしか考えていなかった。
いや、正確には、
石のことを考えていたら、他のことが頭から消えていた。
「昔から変わらないな……」
前世でもそうだった。
仕事で疲れて帰ってきた日、本当なら寝るべきなのに、買ったばかりの石を眺めていた。
休日、休むべきなのに、鉱物店へ向かっていた。
好きなものを見ると、時間を忘れる。
それが俺だった。
「……でも」
俺は机の上の鉱石を見る。
「好きなものを諦めるつもりはない」
これは絶対だ。
だからこそ、
「まずは、お金を稼ぐ」
宿を出ると、街は昨日と変わらず、活気に満ちていた。
商人、冒険者、職人、とたくさんの人が歩いている。
その中で俺だけが、
「何をすればいいのか分からない……」
言うなれば完全な世間知らずだった。
考えてみれば当然だ。
俺は今まで屋敷の中で生活していた。
家庭教師から知識を学ぶ。
魔術を練習する。
石を研究する。
それだけだった。
仕事を探した経験なんてない。
「……」
歩きながら周囲を見る。
すると、一つの建物が目に入った。
大きな看板。
剣と盾のマーク。
その下に書かれた文字。
『冒険者ギルド』
「冒険者……」
聞いたことがある。
魔物討伐、護衛、素材採取……
様々な依頼を受けて報酬を得る人たち。
「俺にもできるのか?」
少し不安になる。
だが、今の俺に選択肢は多くない。
それに、
「未知の場所へ行ける」
その言葉に、少し心が動いた。
冒険者なら遠くへ行ける。
まだ見ぬ土地へ行ける。
そこにはまだ見ぬ石があるかもしれない。
「……」
気づけば俺は冒険者ギルドの前に立っていた。
扉を見る。
中から聞こえる声。
笑い声。
武器の音。
依頼を話す声。
「よし」
決める。
「冒険者をやってみよう」
俺は扉へ手を伸ばす。
その瞬間、腹が鳴った。
「……」
思わず苦笑する。
「まずは、本当に稼がないとな」
こうして、石好きの転生者バサルト=ガリソディアの
初めての仕事探しが始まることになった。
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