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プリンセスタ☆ステラローグ -女児向けアニメ大好きな一八歳の私が変身ヒロインになった話-  作者: みづき木積
第七章 日香里のおともだち大作戦

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第一話 接近

 ここ最近の戦いでは、キャメルンに手伝ってもらうことが多かった。

 前々回は星の力の動きを観察してもらった。前回は買い物用カートを押しておとり役を務めてくれた。観察はいいとして、おとり役のほうには危険も伴った。

 もしプリンセスタが二人いたら、妖精でなくて彼女にお願いできたのでは。別に自分がやるのでもいいが。

 けっきょく、御法山さんからの返信は翌日に届いた。勉強をしていて気づかなかったそうだ。やっぱりね。

 翌週の月曜に、名古屋近隣の銀行支店が襲われたとのニュースがあった。監視カメラの映像によれば、犯人は単独だった。警察が派遣会社の殺人事件で追っていた男性だという。入店するなり行員二名をすぐに殺害、支店長らに金を出すように脅迫した。だからなのか、監視カメラの映像は公開されていない。最終的に彼は支店長と行員、客の合計して六名を殺した。警察の検証だと、手口は派遣会社事務所でのものと同一だった。その後、彼は現金二億五〇〇〇万円を奪い、駆けつけた警官のうち二人を加えて殺し、三人に重傷を負わせて逃走した。

 タブレットでそのニュースを見ながら、キャメルンがしゃべった。

「生き残った従業員は『犯人の男に見られた相手は、()()()()()のように襲われてやられた』と話しているそうキャル。おそろしいキャルね」

 銀行の支店がある市では、不安と緊張とが広がっているようだった。大学へ行くときに電車でそこを通るが、登校する小学生、中学生に親が付き添っているのが窓から見えた。

 昼休み、私はひさぎに相談した。事件のことではない。御法山さんのことだ。

 プリンセスタのことは秘密だし、かといって見ず知らずの高校生では変に思われるかもしれないから、親戚ということにした。その子と仲良くなるにはどうしたらいいかとの内容だ。

 ひさぎはミルクティーのペットボトルをテーブルにぽんと置いた。

「〝うわさの待ち受け〟とか? キミに褒められた髪型とか?」

「恋が叶うって噂の待ち受けのこと?」

「そう。正解」

 それは小さい頃にCMで流れていた曲だ。ラブソングだし。

 ひさぎは笑った。エメラルドブルーをベースにしたドロップネイルが涼しげに感じられる。

「まあこれは冗談だけどねーでも、もう日香里もわかってるんじゃない?」

「わかってるのかな」 

「わかってるよ。だって、今までも日香里には友達がいたんでしょ。だったらそれと同じじゃない?」

 思い返してみる。小学生のときは、『プラチナドリーミングス』が好きな子達と仲良しだった。アニメについて話したりカードを交換したり。自分の好きなキャラクターを選んで、学校の廊下でライブごっこをしたことも。中学、高校のときは自分と雰囲気の近い子達と一緒にいた。彼女達とは、宿題やテストの話以外だったら、流行っているアニメのことをよくしゃべった。そして今――中学、高校と似たような子達との付き合いだ。ひさぎを除いて。

 御法山さんは、これまで私があまり関わってこなかったようなタイプの子だ。まじめで、自身で何でもこなしていそうな。高校に話し相手がいるとは思うが、どんな会話をしているのだろう。勉強の話題はだめだ。私のほうがついていけないかもしれないし。お嬢様校に通っているし、乗馬とかバイオリンとかかな。和風な感じも似合いそうだから、茶道や弓道とかかも。私の中のお嬢様のイメージっていったい。自分がそうではないからわからない。

 仮にこれらのどれかが該当していたとしても――私は詳しくない。繰り返すが、お嬢様じゃないからね。

 『プラチナドリーミングス』の話ができたら大歓迎だが、期待はできなさそうだ。

 自分とタイプの違う子と親しくなるには。参考にするなら、やっぱりひさぎだろうな。彼女は明らかに私とは異なるタイプだ。向こうから話しかけられて、だんだん仲良くなった。

 前にキライーヤにされた三〇代の女性じゃないが、こっちから攻めることが大事なのかもしれない。恋ではなかったけれど。

 まずは御法山さんを知るところからだ。

 LINEで趣味をたずねてみた。返信はその日の夜、一九時過ぎに来ていた。


 御法山:趣味と呼べるかはわかりませんが(こう)です。この質問の意味ありますか?


 「香」とはお香のことを指していた。なかなかに奥深い趣味だ。

 その後もやり取りを続けた。ちなみに、「まみや」というのは私のアカウントだ。

 

 まみや:御法山さんのことを知りたくて! お香って火を焚くやつだよね?

 御法山:そうですが、火を使わないお香もあります。匂香(においこう)塗香(ずこう)など。練香(ねりこう)印香(いんこう)は間接的に熱する種類です。

 まみや:なるほど。オススメの香りってある?

 御法山:私が好きなのは伽羅(きゃら)桃山です。お勧めかはわかりかねます。


 会話としてはそんなに悪くないはず。あんまり長文だと無視されたりブロックされたりも考えられたので、短めに返信することを心がけた。

 私とひさぎとが親友と呼べる間柄になったのは、いつだろうか。二人の中でそれぞれ違うかもしれないが、私としては彼女の家に行ったときからだと思う。そこで『プラチナドリーミングス』のカードを交換したことが、やっぱり強く印象に残っている。

 カードの交換は無理でも、それに似たことができれば、御法山さんとの仲もいっそう深められる気がする。

 まだ、自宅に呼んだり呼ばれたりはハードルが高かった――どこかに出かけて一緒に楽しむのはどうだろう。おいしいものを食べるのもいい。彼女は高校生だし、自分にはバイト代もあるから支払いはこちら持ちでも構わない。

 さっそく御法山さんに連絡してみる。

 予定の空いている日をたずねたら、「塾や習い事、予習で忙しいのでない」と返信が来た。諦めずに何度も頼み込み、翌週の日曜ならとようやく答えてもらえた。彼女にとっては妥協だろうな。

 続けて、いきたい場所についても質問した。すると、「早く済むのならどこでも」とそっけない反応だった。

 ひさぎとだったらショッピングだろうけど。自分の唯一知っている御法山さんの趣味はお香だ。が、そういったものを取り扱っている店を知らない。他のところにしても、彼女は物欲が少なそうだし。これも私とは異なっている。

 どこが最適かな。ネットで色々と調べてみた末、動物園か水族館のどちらかに決めた。AIも、御法山さんのようなタイプは、華やかなテーマパークよりも知的な好奇心をくすぐるような施設が好みだとの回答をくれた。加えて、当日の天気をたしかめてみると、晴れだが昼以降から雨が降るかもしれないとのことだった。

 なので、水族館にした。ここなら屋内だし、天気は関係ない。彼女にも伝えておいた。

 木曜、御法山さんとのお出かけが三日後に迫っている。そろそろ、着ていく服を選んでおくか。自分だけ気合いを入れすぎると、御法山さんと並んだときに互いに変な感じになる。これは私の中でのイメージというか偏見にすぎないが、きっと彼女は華やかで派手めでなく、クールできれいめな格好をしている。だから、私もそこで目立ちすぎずに地味すぎないものを。ファッションは自己主張の手段だけれど、その場にふさわしく合わせることも大事。基本中の基本だ。

 相手のことを考えて――デートといえなくもないか。女の子向けの作品でも、たまに女子同士でのお出かけをデートと表現する場面がある。物語に恋愛要素が含まれていないものに限るが。恋愛要素のある作品だったら、観ている側も相手が誰なのか混乱してしまうからね。ところでこの表現、現実に使っているのは一度も聞いたことがなかった。

 自分のクローゼットをのぞいていると、キャメルンがつぶやいた。彼は私のベッドの上でタブレットを触っていた。

「また事件キャルね。今度は大阪と京都キャル」

 ネットニュースで既にそれらの事件は知っていた。大阪ではジュエリー店が、京都では家電量販店が襲われた。どちらも入店してすぐに店員一名を殺し、残りの従業員と客とを脅して現金および品物を奪う手法だった。警官が駆けつけたが、両方とも犯人の抵抗に遭い併せて五名が死亡、二名が重傷との悲惨な結果に終わった。どの目撃者も口々に、()()()()()のようなことが起こったのだとしゃべった。監視カメラに写っていた犯人は、これまでと同一の人物にほかならなかった。

 キャメルンがぱっと顔を上げた。私が質問する。

「今度は何?」

 自分でたずねておきながらだが、なんとなく勘づいていた。キャメルンの答えに声が重なる。

「キライーヤ」

「……キャル」

 女子大生のこの私、普通の大学生らしい暮らしはどこに。ふとそんなことを思いながら、御法山さんにLINEで連絡した。通話には出なかった。

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