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プリンセスタ☆ステラローグ -女児向けアニメ大好きな一八歳の私が変身ヒロインになった話-  作者: みづき木積
第六章 日香里と新たな強敵

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第五話 二対一

 完全にはガードできない遠距離の攻撃――プリンセスタにとっては圧倒的に不利な相手だ。

 空高くにジャンプ。キライーヤの頭上から接近してみる。光の弾が連射され、自分の背後で次々と爆発していく。

 最後に放たれた一個が私のほうへ。空中ではよけられない。直撃だ。目の前で爆発に巻き込まれて吹き飛ばされた。

 背中から地面に落下する。その先でも相手の攻撃が飛んできて、音とともに連続で発生した光に視界がさえぎられた。

 メイナの声が聞こえた。

「プリンセスタの戦闘パターン分析によれば、遠戦(えんせん)が苦手との結果だったが……試算以上の効果だ」

 ワニ人間と会話しているのだろうか。彼の声も耳に届いてきたが、すぐキライーヤの攻撃による爆発にかき消されてしまった。

 爆発はまぶしくて無理だったが、プリンセスタの動体視力では光の弾の動きを視認できる。

 背中をぐいっと大きく曲げて、跳ねるように立ち上がった。

 まず、なんとかして相手に近づかなければ。

 改めてまわりを見る。カート置き場にはワニ人間とメイナが。駐車場利用上の注意が書かれた看板の後ろには、キャメルンが隠れていた。

 カート置き場のほうへと走った。光の弾が続々と放たれ、追いかけるように飛んでくる。

 ワニ人間とメイナとの姿が瞬時に消えた。ワープするかのようだ。二人は駐車場の出入り口付近にまたすぐ現れた。

 私の後ろでカート置き場が爆発に巻き込まれていく。ワニ人間が叫ぶ。

「俺達を巻き添えにしようなんて卑怯だぜえ‼ だが、その手には乗らねえなあ」

 別にワニ人間達を巻き添えにしようと思ったのではない。彼らを倒したところで、キライーヤに負けてしまうことだってあるわけだし。

 身体の向きをくるりと変え、看板のところへと近づく。相手の攻撃は止まらない。そのすぐ手前、大声で呼んだ。

「キャメルン! 来て‼」

 キャメルンが看板の後ろから飛び出す。両手を伸ばしてキャッチ。ぎゅっと抱きかかえて走り続ける。

 当たり前だが、キャメルンを巻き添えにするつもりはない。走ってキライーヤの攻撃をかわしつつ、彼に話した。

「お願い。手伝ってほしい」

「キャル⁈」

 キャメルンに内容を伝える。さすがに妖精の彼に戦ってもらうのは厳しいと思う。頼んだのは他のことだ。

 跳躍してカート置き場へと向かう。先程と今回との攻撃でカート置き場も無惨に破壊されていた。ワニ人間の座っていた金属製のパイプはぐにゃりと曲がり、買い物用のカートも何台かが横転していた。

 光の弾が連射されて爆発が立て続けに起こる。キャメルンに協力してもらうのはここからだ。

「無理はしないでね」

「任せるキャル。いっちょやってやるキャル」

 キャメルンがまっすぐ地面と水平にすっと飛ぶ。光の弾が飛んでいって爆発。どうか上手にやれますように。

「これでも受けるキャル‼」

 爆発の音に混ざってキャメルンの声が聞こえた。雄叫びみたいなものかな。

 キライーヤの正面、数メートル先に何十発もの光の弾が集中。爆発が生じる。

 ワニ人間がしゃべった。

「やったか⁈」

 お約束ともいえるその台詞を、自分はジャンプしてからの空中で耳にした。爆発の後には黒焦げのカートがあった。カゴを載せる部分は上下ともひしゃげている。上のほうは耐えきれなかったのかぼとりと落ちた。

 私の真下にキライーヤが見える。思わず自分は叫んだ。

「とりゃあああ‼」

 これも雄叫びみたいな。カートに意識を向けていた相手がようやく気づいた。だが、もう遅い。

 渾身の跳び蹴りをキライーヤの右胸あたりに浴びせた。相手はよろめいて仰向けに倒れ込んだ。

 着地すると、さらに彼の右脚をつかんで持ち上げ、遠くに投げ飛ばす。キライーヤはアスファルトに激突した。

 今回の相手が放つ光の弾はひじょうに厄介だったが、命中の精度は大して高くない。速度も見切れないほどではなかった。相当に連発されたが、そのうちで自分に当たったのは三回だけ。最初は不意打ち、二回目はガードできるかの確認、最後は空中でだった。どうやらこの欠点をキライーヤは数でカバーしているような気がしたのだ。

 命中しにくいということは、要するに、相手は攻撃対象の位置をとらえるのが苦手なのだった。

 そこで、キャメルンに買い物用カートを思いっきり押してもらい、おとり役となってもらった。キライーヤがおとり役のほうを攻撃している隙に、私はジャンプして跳び蹴りを仕掛ける。

 実際に説明してみると、ごくごく単純なフェイントにすぎない。けれども、大成功だった。キャメルンの果たした役割も大きい。もしSNSだったら、「いいね!」だけでなくフォローしてもいいぐらいの活躍だ。

 キライーヤのほうから心の声が聞こえてくる。

「ドウシテ……マタ……レンラクガ……コナイ……マッテルノニ……」

 ようやくメイナがしゃべった。

「攻撃に悪い星の力を使いすぎたようだ。軽率に撃たせるべきではなかったか」

 キライーヤは起き上がってこない。私はそこに近づき、左手で横ピースをする。

「チカキラりんっ」

 両手の指先でダイヤの形を作った。

「ステラ・ブリリアント・シャワー‼」

 ベビーピンクの光が放たれる。それにキライーヤは吞まれて消えた。

 その場には、グレーのスリーブレスカットソーにレモンイエローのプリーツスカートを合わせた三〇代半ばの女性が残された。シューズはコーヒーブラウンをしたコーンヒールのストラップサンダルだ。種類はわからないが、ライトグリーンの石が付いたスタッドピアスを着用していた。

「連絡を待つだけじゃなくて、こっちからするわ。やっぱり恋は攻めなきゃね!」

 わりと気合いの入った格好からすると、彼氏に約束をすっぽかされたか合コンの後だろうか。まさかシンデレラのような舞踏会じゃないだろう。

 彼女は駐車場の出入り口に歩いていった。

 ワニ人間が慌てた様子でメイナに話す。

「どうするんだ。俺のせいじゃねえぜえ」

 メイナは冷静に返事をした。

「データは集められた。成果としてはまずまずだ。目的の達成率は四〇パーセント。いったん撤収だ」

 二人は立ち去った。

 カート置き場が戻り、買い物用カートもそちらに整列した。自分の格好も元通りだ。

 キャメルンが飛んでやって来る。

「キャメルンの頑張りは、どうだったキャルか?」

「よかったよ。最高。帰りに何かおいしいものでも買っていこうか?」

 早く帰ったほうがいいかもしれなかったが――コンビニに寄ってスイーツをおごってあげてもいいと思った。キャメルンがはしゃぐ。

「やったキャル。新作の桃タルトが食べたいキャル!」

 ふと思い出したようにキャメルンがたずねた。

「そういえば、凛子って人から返信はあったキャル?」

 繰り返しになるが、凛子とは御法山さんの名前だ。スマホを取り出す。返信はなかった。既読すら付いていない。

「もしかして、もう寝てるキャル?」

 時刻は二三時半を過ぎるところだ。寝ていてもおかしくはないが。

 しかし、自分が高校生の頃は零時過ぎまで起きていた。ゲームやらスマホやら、テスト前には勉強でも。まじめそうな子だし、ゲームやスマホはとにかく、夜遅くまで予習しているイメージはある。

「本当に寝ちゃったのかな」

 保育園の年少だった頃に観ていたアニメがある。『プラチナドリーミングス』が始まる前のことだ。マンガが原作で、こちらは自分が卒園するあたりまで続いた。異性からも同性からも好かれる高校生の女の子が主人公で、彼女が自身の恋に奮闘したり友人の恋を手伝ったりする。その主人公に近づけるという触れ込みでファッションやメイク、食事の作法などを解説した本を、当時買ってもらった。そこに主人公の一日のスケジュールが載せられているが――就寝時間が二二時となっている。昔は疑問に思わなかったが、高校生で二二時に寝る人はごく少数でないだろうか。しかも、学校の終わる時間も一五時半だった。中学生の頃の自分でも、こんなに早くは帰れなかったぞ。

 読者の対象を考えたら、当然のことだけど。

 既読スルーじゃないだけまだいいか。そうは思うが、なんとか御法山さんにプリンセスタに変身してほしい。

 キャメルンに急かされ、私達は近くのコンビニへと向かった。

【参考文献】

本話の執筆にあたっては以下の文献を参考にしました。

・にしむらともこ&ちゃお編集部

『ちゃおコミックススペシャル 極上‼めちゃモテ委員長 未海ちゃんになるための10の方法』小学館,2009年

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