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調査

「この報告書を読んで、どう思う?」

 椅子に腰かけた銀髪の美青年が、手に持った書類を眺めながら声をかけた。彼の名前はアレクシオス。

「どう思うも何も、その報告書を書いたのは私なんですけど。どう思うって、何が?」

 辛辣な言葉を返すのは、近くの書架で本を探している豊かな金髪を持つ長身で豊満な美女。彼女の名前はアストライア。

 彼らが居るのは帝都の中心部近くにある宮殿の資料室。過去の様々な事件の記録が保管されている書物庫。皇帝直々に魔人討伐を命じられたアレクシオスは、魔人の情報を集めるために、この部屋にある魔人の過去の資料を探索していた。

 アレクシオスが頭を掻きながらアストライアに答える。

「いや、そうなんだけどさ。報告書は客観的に書かれていて分かりやすかった。でも、いまいち魔人の人物像が分からないんだよね」

 それを聞いたアストライアがイラついたように持っていた本を机に叩きつけるように置いた。その音に思わずアレクシオスがびくっとする。

「人物像?そんなの、分かるわけないでしょ!碌に情報も無いのに。でもやったことを考えたら極悪人でしょ!それ以外の人物像とか、必要!?」

 アストライアがアレクシオスにキレたように叫んだ。マリアの弟子であった彼女は、マリアの死に嘆き悲しんでいた一人だった。その彼女にとって魔人は敵でしかない。

 アレクシオスもまたマリアの弟子であった。彼もマリアの死は悲しんでいるが、とはいえ彼には責務がある。悲しんでばかりもいられない。

 アレクシオスがイライラしているアストライアに冷静に答える。

「魔人は旧魔王城で暴れた後に行方不明となってしまった。その後の足取りがつかめない。人物像があれば何か考察が出来るかなと思ったんだよ」

 それを聞いてアストライアが無言になる。彼女もそれは分かっている。

「……ごめんなさい。少し八つ当たり気味になってた」

 アストライアが素直に謝った。それを聞いたアレクシオスが少し笑いながらアストライアを見て言う。

「イラつくのは分かるよ。手がかりが無さ過ぎるからね」

 そう言ってアレクシオスが机の上にある、2つの壊れた方位磁石のような物を見つめる。崩壊した旧魔王城から回収された魔人の探知魔道具の残骸だ。

「やはりこれが唯一残された手がかりかな。1つはメンデルスさんが奪われた物。もう1つは恐らく新生魔王軍の者が使っていた物。どちらも壊れてしまって動かないけど……」

 アストライアがそれを見ながら呟く。

「この探知魔道具ってどうやって作ったのかしら?」

 探知魔道具は白魔法使いの知らない技術で作られている。なので残骸があっても修理して使うようなことが出来ない。アレクシオスが立ち上がり、書架から別の事件簿を手に取る。帝国の英雄であり彼の祖母でもあったミリアが、魔人を封印した時の記録だ。

 その本をパラパラとめくりながら、アレクシオスが呟くように答える。

「当時の記録によれば、何者かが探知魔道具を手紙と共に冒険者ギルドに送り付けてきたらしい。メンデルスさんが使っていたのがそれだ。その後の調査で、探知魔道具の送り主はダズという元闇ギルドの構成員だったということが分かっている」

 アレクシオスは本をパタンと閉じると、書架にその本を差し戻した。アレクシオスが続ける。

「恐らくは、黒魔法がらみの技術なのだと思う。だから探知魔道具を修理するためには、黒魔法に、闇ギルドの者たちに接近する必要があるだろう……」

 それを聞いて、アストライアが露骨に眉をひそめた。帝国で禁止されている黒魔法使いを擁する闇ギルドは、白魔法使いたちにとっては目障りな存在と言っていい。

「本当にやるの?」

 アストライアが念を押すようにアレクシオスに尋ねる。アレクシオスがローブを翻しながら答える。

「蛇の道は蛇だ。それしか方法がないなら、行くしかない」

 アレクシオスが壁に立てかけてあった剣を腰に吊るした。帝国のもう一人の英雄であるアレクスの剣は、彼に引き継がれている。

 そう言ってアレクシオスが部屋の出口に向かって行く。アストライアもため息をつきながら、アレクシオスの後を追って出口に向かっていった。

 

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