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「あの、カレイド様!なんか、様子が、変、です……」

 歩いているカレイドの後ろでベルフェのような声が聞こえた。カレイドが足を止めて振り向くと、ベルフェが倒れ込んでいた。

「おい!だいじょうぶ、か……」

 カレイドが跪いてベルフェに声をかけたが、何か声の調子がおかしい。カレイドが倒れているベルフェの顔を見ると、皺だらけになっている。

「なんら、これふぁ!」

 カレイドが叫ぶと、その口から抜け落ちた歯が転がり落ちて来た。カレイドがその落ちた歯を拾おうとその手を伸ばす。その手は枯れ木のようにしなびていた。

 手だけではない、カレイドの全てが、枯れ落ちていく……

(なんで?どうして?)

 それがカレイドの最後の思考した言葉だった。カレイドは溶けるように、年老いて果てた。


「新生魔王軍の様子がおかしいです!これは……」

 アストライアが戦っていた魔物が急速に老化していく。魔物だけではない。他の魔族の兵士も同様に老化している。城壁にいた弓兵は矢をつがえている途中で老化して、垂れ落ちるように城壁からボトボトと落ちてくる。

「これはどういうことだ!?」

 アレクシオスが目の前の信じられない光景に、その剣を止めた。アレクシオスだけではない。突然溶けるように老化していく新生魔王軍をみて、帝国軍の皆が手を止めてざわついている。

 メンデルスがその光景を見て確信した。通信魔法で接続可能なすべての白魔法使いに接続して、大声で叫ぶ!

「これは、間違いありません。悪魔と黒魔法使いの新規契約の対価です!しかもこの規模……相当な高ランク契約です!」

 それを聞いたアレクシオスが一人で城に侵入したマリアのことを思い出した。アレクシオスがマリアへの通信魔法を発信する。

「マリア様!ご返事をお願いします。緊急事態です!早く、早く!」



 ガッシャーン!


 マリアの目の前でシャンデリアが落ちた。マリアは動じていない。天井で何かが切れる音が聞こえたので、一瞬だけ足を止めたが、目の前の男から一度たりとも目を離していない。

 そう、マリアは目を離していないはずだった。一瞬だけ横切ったシャンデリアで目線を切られたが、本当に一瞬だけだったはずだ。

 だが……

(何かが、おかしい……何か、雰囲気が変わった?)

 マリアに通信魔法が入っているが、マリアは出ない。それどころではないと直感している。

 目の前の男が勢いよく立ち始めた。そして両手を天井にかざす。

(何か分からないが、不味い!)

 不穏を感じ取ったマリアが、再びその鞭を振るう。一撃目で目の前の邪魔なシャンデリアを吹き飛ばし、二撃目で男の鳩尾に重い一撃を叩き込む。

 だが男はその痛みに耐え、その両手を振り下ろした。

 マリアの三、四撃目が男の顔面を叩き割る。顔面がはじけ飛び、男はうつ伏せに倒れた。

 マリアは倒れた男を見つめて叫ぶ。

「お前、一体何をした!」

 マリアが叫んだ瞬間だった。


 ゴゴゴゴゴゴゴ


 天井からシャンデリアが弾け飛んだ時の比ではない音がし始める。マリアも流石に天井を見上げた。見上げた先の天井が割れていく。その割れた天井に突然巨大な穴が空いた。

 男の倒れているところに、凄まじい速度で何かが落ちて来た。その衝撃波が辺りを薙ぎ払って行く。マリアも耐えきれずに吹き飛ばされた。

 吹き飛ばされたマリアが鞭を片手に体を起こす。何かが落ちた後に、クレーターが出来ていた。

 それを見たマリアが確信する。

「隕石だと!?これはまさか」

 

 星落


 コスト:

 寿命(20年くらい)


 効果:

 隕石を落下させる。


 かつて魔王が使ったと記録される、ランク6の高等魔法。燃費も範囲も指定しにくく、魔王ですらめったに使わなかった黒魔法有数の超火力魔法。

 

 マリアの見つめるクレーターの真ん中から、男が再び立ち上がり始めた。そして再び天空にその両手を掲げ始める。

 マリアの背筋が凍った。そして再び鞭を男に向けて千光を放ち始める。だがその切っ先が届く前に、男の両手が再び振り下ろされた。切っ先が男の両手の手の平を吹き飛ばす。だが距離があり過ぎて二撃目が間に合わない。

 再び隕石が降って来た。隕石は男とマリアの間に落ち、二人を吹き飛ばす。

 マリアがその衝撃をモロに喰らって転がり、壁に叩きつけられた。

「ガハッ!」

 吹き飛ばされたマリアが血を吐きながらその体を起こす。度重なる隕石の襲来で支えを失った天井から瓦礫が落ちてくる。

(アイツは、どこに!)

 マリアが土煙の向こうの人影を見つめる。その男は両手を掲げ、振り下ろしていた。


 何度も、何度も、何度も……

 

 ゴゴゴゴゴゴゴ

 ゴゴゴゴゴゴゴ

 ゴゴゴゴゴゴゴ


 いくつもの巨大な落下音が響き始めた。マリアは己の運命を悟る。

 防御障壁は張らない。それよりも通信魔法を優先する。可能な限りのすべての白魔法使いに通信を送る。

 そして叫ぶ!


 私はランク7のマリア。私の目の前に、先ほど伝えた死なない黒魔法使いがいる。

 一度目は鞭で全てを削り落としたけど復活。二度目は顔面を吹き飛ばしたけど、これも復活。生き返るまでには5~10秒程度の時間が必要な模様。生き返った姿は中背でやせ型の男。私では殺しきれないと確信。先ほどからこの男がランク6の黒魔法「星落」を連発している。

 私はこれから死ぬわ。ここからは遺言。

 この男は数多くの悲劇を生み出した、我々帝国の宿敵である黒魔法使い。必ずこの男を止めなさい!

 アレクシオス!これは特に貴方へのメッセージ。この男を封印したミリア様を継承する、貴方の仕事。貴方の運命!

 以上よ!あとは任せます。


 通信を終えたマリアが額から血を流しながら土煙の先の男を見つめる。土煙が晴れて来た。

 マリアの瞳にその男の顔が映る。

「本当に……冴えない面をした男ね」

 それがマリアの最後の言葉になった。


 複数の隕石が無慈悲に落ちてくる。

 隕石が、天井を、大広間を、階段を、マリアを、粉々に叩き潰していく。

 天井が崩れていく。城が、崩壊していく。

 その中で冴えない男が、ひたすらに両手を上げ下げしていた。



「全軍退避せよ!」

 帝国軍の将軍が叫ぶ。

「我々も下がりますよ!」

 メンデルスがアストライアとアレクシオスに言う。

 頷いたアストライアが、皆と一緒になって駆け足でその場から退避し始めた。

 アレクシオスはその目に焼き付けるかのように、目の前の光景を見つめる。

 いくつもの隕石が落下し、城を砕いていく。この世のものとは思えない光景を。


 アレを止めるのが、僕の運命なのか……

 

 アレクシオスが思わず生唾を飲み込んだ。

 そしてそのローブを翻して、彼もその場を後にした。


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