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隠されていた事実

「え!?脱出路?そんなものがあったの?」

 俺はまずその事実に驚いた。カレイドが目を伏せながらそれに答える。

「ええ。これは恐らくアクストリウス様もご存じなかった事でしょう。私も最近になって知ったことですから……」

 そして俺を見つめて続ける。

「場所は大広間の階段の裏側です。今すぐに向かってもらえないでしょうか?」

 それを聞いた俺は頷いて、すぐに駆けだした。


 大広間に付くと、中心にある階段の近くにいた魔族の兵士たちが倒れていた。その近くには背筋を伸ばして白魔法使いのローブを着た老女がいる。

 老女は俺に気がつくと、武装魔法を使い一瞬で鞭を作り出し、俺の足めがけて正確な一撃を放った。俺は面食らって思わずしゃがみ込む。

 俺が見つめる先の老女が口を開いた。

「本当に城に通じているのか不安だったから私一人で来たけれど、まさかの正解!しかも真っ正面に因縁の敵その二が居るなんて。私ったらツイてるわ!」

 因縁の敵と言われても、俺は目の前の老女に全く見覚えが無い。それが伝わったのか、老女はイライラした顔を隠さずにまくし立てた。


 アンタ、ドナルドでしょ?エメリア様を殺して逃げだした殺人犯。その後、王国に逃亡して舞踏会で爆破事件を起こしたテロリスト。この時の名前はファンズだったかしら?

 私はこの爆破事件の時にいた白魔法使いのマリアよ。あの時は最悪だったわ。幼馴染みのクルスをアクストリウスに殺されるし、アンタには適当なことを言われてぐちゃぐちゃにされるし。

 え!?何のこと?みたいな顔をしないでよ。アンタあの時言ったじゃないの。孤児院経営は生贄のためだとかなんとか……

 あたしはその後で調べたのよ。そしたら分かったわ。孤児院はちゃんと経営されていた。居なくなったと思っていた友達は、普通にちゃんとした家庭に貰われていたわ。エメリア様は黒魔法使いだったかもしれないけど、少なくとも孤児院はそれとは無関係だったのよ!

 それが分かった時の私の嬉しさと悔しさと言ったら、分かる!?

 アンタが適当なことを言ったから私は動揺したし、それでクルスはキレて死んでしまった。私がエメリア様のことをちゃんと知っていれば、それは避けられたのに、アンタが適当なことを言わなければ、それは避けられたのに……

 アンタさえ、アンタさえいなければ……


 老女の、マリアの話を聞いて、俺は舞踏会の夜を思い出した。俺はあの時、マリア達のことを「何も知らない奴ら」と内心で馬鹿にしていたが、俺だって何も知らなかったということを今になって突きつけらた。

「あ、モリガンがフリーズした」

 俺の中のドナルドが叫んだ。


 動きの止まった俺に、マリアの鞭が叩き込まれた。その一撃の重さに俺は怯む。

(そうだ、戦わないと!)

 俺はマリアに向けて右手をかざした。だが何かが煌めいたかと思うと、右手が重い一撃で砕かれ、指が飛び散った。

 俺は後ろに隠した左手で魔手を召喚してそれに倒れ込むように乗る。だが乗った瞬間、その魔手も目に見えない一撃で吹き飛ばされた。

 乗った魔手が吹き飛んでしまい、俺は体勢を崩してしゃがみ込む。そんな俺をマリアは冷たい目で見下ろしながら、蔑むように言う。

「アンタ、思った以上にポンコツね。まあ、いいわ」

 マリアの前に旋風が巻き起こった。シャンデリアの灯りに煌めく無数の何かが空中に現れる。

 冷酷な憎悪の炎に燃えた目で見据えるマリアが、俺に宣告をする。

「地獄へ、落ちろ!」

 

 次の瞬間、無数の鞭の切っ先が彼を襲った。それは皮膚を割き、肉を弾き、骨を砕く。彼は一瞬で血だるまになった。

 それでもマリアはその千光を止めない。血だるまから血が、赤い肉と黄色い脂肪が弾き飛ばされ、白い骨が見え始めた。

 終わりのない千光が、彼の居た場所にザクロのような花を咲かせていく。

 マリアがその鞭をその手に戻す。目の前にある、全てが弾け飛んだ遺体を見つめる。

「終わったわ……」

 マリアが鞭を片手に目を閉じて感傷に浸り始めた。彼女の50年に渡る因縁、その物語が今まさに完結する瞬間だった。

 だが、彼女は思わぬ物音に気がつき、その目を開いた。

 次の瞬間、目の前で大きな爆発が起きた。


(やったか?)

 生き返った俺は、すぐさま目の前のマリアに爆裂魔法を叩き込んだ。足元に魔手を召喚して乗り、マリアとの距離を縮める。

(生きているかもしれない。とどめを刺さないと……)

 俺は右手に青剣を作り出す。その右手をマリアに向ける。

 だが、足元の魔手が再び叩き割られた。俺はジャンプして何とかマリアへ近づこうとするが、空中に跳んだ俺をマリアの千光の鞭が再び弾き飛ばす。

 吹き飛ばされた俺は最初の位置まで転がってうつ伏せに倒れた。

(不味い。死んで生き返った瞬間の隙を逃した。もうチャンスが生まれない。それに……)

 俺は絶望に満ちた目でマリアを見上げる。

 驚いて息を切らせていたマリアは息を整えて、通信魔法を開始した。緊急で白魔法使いたちに連絡を入れる。

「緊急報告!ドナルドおよびファンズについての新しい情報がある」

 そう言ったマリアは、俺を化け物でも見るような目で見下ろしながら通信を続ける。

「この男は、死なない!死んでも生き返る!」

 

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