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「あーあ、本物のルーデルがアレクシオス達にバレちゃったか……」

 魔人が片目を瞑って、視界共有で得たルーデルの視界を見ながら呟いた。狼狽えるガロ、悔しさに身を震わせるアストライア、怒りを抑えた表情をしたアレクシオスがそこにいた。

 魔人はセレナが座っていた豪華な椅子の上で、頭を抱えながら天を仰ぐ。

「そりゃあ、怒るよなあ……」

 

 魔人がアレクシオスと一緒に旅をすることになったのは、ただの偶然だった。

 魔人は帝都の闇ギルドに潜り込むため、たまたま見つけた末端の構成員のルーデルに目をつけた。ルーデルの家に忍び込み、彼を麻痺魔法で捕らえた。捕らえた彼からあらゆる方法で情報を取り出し、完全に彼へ成り代わることに成功した。魔人は人の脳の構造に詳しかったからだ。

 そしてルーデルとしての闇ギルドの仕事の流れで、たまたまアレクシオス達に同行することとなった。


 魔人がアレクシオス達との旅を思い出す。彼は別にアレクシオス達が嫌いではなかった。むしろ黒魔法使いであるにも関わらず、何かと気をかけてくれる彼らに好意を持っていた。魔の森での夜にアレクシオスと会話した内容は、魔人が思っていたことをほぼそのまま話していた。

 

 魔人も、最初に会ったのがフレイヤだったら、別の生き方をしていたのかもしれないね。


 魔の森でアレクシオスがルーデルに成り代わっていた魔人に掛けた言葉。その言葉を思い出した魔人が、部屋の中で一人呟く。

「最初に会ったのがアレクシオスとかだったら、今とは違う形だったのかな……」

 異世界からこの世界にきた魔人は、来て早々にキマイラの餌食になり、オズロ兄弟の玩具にされ、アルガスの実験動物として扱われた。そんな彼は流れるまま黒魔法に手を染めて、多くの人を犠牲にしながらここまでやって来た。

 魔人がこの世界に来た時のことを思い出す。

 

 この世界へ来るときに、死にたくないと願わなければ、こんなことにはならなかったのに……

 俺もアレクスみたいに、英雄になりたいと願えば、こんなことにはならなかったのに……

 

 魔人が再び片目を瞑り、ルーデルの視界を覗き込む。そこでは裏蓋の開いた探知魔道具を持つガロと、探知魔道具の針の先を確認しているアレクシオスの姿があった。

「探知魔道具の仕掛けもバレちゃったか。こうなったら戦うしかないのか……」

 魔人は後悔しているが、かといって白魔法使いたちにやられるつもりもない。捕まったら何をされるのか分からないし、終わりのない虚無に封印されるのも嫌だった。

 魔人が椅子から立ち上がり、魔法陣に向かって歩いて行く。魔人が魔法陣に手をかざし、悪魔召喚を始めた。

 魔法陣から出て来た巻物が広がり、片眼鏡をかけた執事のような老人が、ランク4の悪魔が現われる。

 悪魔が魔人に丁寧なお辞儀をする。魔人が悪魔に問いかける。

「ランク4の契約をしたい。その対価はどれぐらい?」

 悪魔が顔に着けていた片眼鏡を取り外す。片眼鏡には眼球がくっついたままになっており、取り外した後には空洞になった眼窩が残された。悪魔の周りに落ちていた巻物が生きているかのように空中に飛び上がり、輪になって回転し始めた。

 暫くの間、回転していた巻物が急に動きを止めたかと、勢いよく悪魔の空洞になった眼窩へ飛び込んでいく。すべての巻物がその眼窩に収まると、眼窩からゲップをするような音が聞こえた。悪魔は持っていた片眼鏡を再び眼窩に埋め込み、魔人に向かって答える。

「貴方の闇ギルドを構成しているモノ。全てを生贄に捧げれば可能です」

 それを聞いた魔人が顔をしかめて悪魔に言う。

「君たちって、いつもピッタリ換算で全員の寿命を持っていくけど、それって本当にピッタリなの?」

 悪魔は表情を変えずに答える。

「でしたら、契約をお止めになりますか?」

 魔人は大きなため息をついた。そしていつものように選択する。

「それでいいよ。やってくれ」

 

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