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魔人の行方-3

 突然呼び出されたガロは、不満を口にブツブツ言いながらやって来た。だが見知った建物を見て、その顔から不満が消えていく。ガロがアレクシオスの立っている部屋の前までやって来て、その口を開いた。

「なんだ?ルーデルの家で何かがあったのか?」

 アレクシオスが無言で部屋の中を顎で指す。その先には震えながら体を縮こませている小柄な男がいた。ガロがその男に近づいて男を確認した後で、呟くように言う。

「ルーデルだ。髭も髪の毛も剃られているが、間違いない。これはどういうことだ?」

 アストライアが立ち上がり、失敗の衝撃を押し込めながらなんとかアレクシオスに説明を始める。

「ルーデルには行動制御魔法が掛かっている。アレクシオス、解呪を試してみて貰えない?」

 それを聞いたアレクシオスがルーデルに近づき、無言で手のひらをかざして解呪を放つ。解呪はルーデルに当たったが、当たった後で何かに弾かれたようにそれは通り抜けた。アレクシオスは続いて探知魔法でルーデルの魔力を確認する。その波動を確認したアレクシオスが答える。

「一部の魔法は解除できたみたいだが、まだ何かの魔法が掛かっている。恐らく意思疎通魔法は解けたのだが、行動制御魔法が解けていないのだろう。そういう事か……」

 アレクシオスが状況を理解し始めた。

「僕とアストライアがカフェの奥でガロと話している時に出会ったルーデル。最初のルーデルは本物のルーデルだった。だが二回目に会って僕たちと旅をしたルーデル。このルーデルは本物ではなかった。恐らく魔人に入れ替わっていた。そういう事か?」

 アレクシオスがアストライアに尋ねた。アストライアは頷きながら補足する。

「そう。魔人はルーデルをここに閉じ込めて、整形魔法を使ってルーデルに成り代わった。もしも私が最初にルーデルへやったように、ちゃんと確認していれば、もっと早く気がつけたはず。ごめんなさい……」

 アストライアが後悔を口にする。実際そうだろう。アストライアが気づくことは可能だった。だが、彼女はそれをしなかった。出来なかった。

 最初にアストライアが執拗にルーデルを詰めた時、彼が見せた慌てふためいたその姿。それがアストライアの良心に刺さってしまった。ルーデルという弱者をいたぶるような自分の姿に、自分が耐えられなかったのだ。

 そのことを理解しているアレクシオスがはっきりと答える。

「いや、僕が明確に君に指示をするべきだった。僕の落ち度だ。君の失敗じゃない」

 そう言うと、アレクシオスが今度はガロに尋ねる。

「最初に僕たちがルーデルに会った後で、再び会うまでの間に魔人と入れ替わっていたはずだ。ガロは何か気がつかなかったのか?」

 アレクシオスの質問に、ガロは額に指を当て思い出しながら答える。

「暫くの間休んでいたことがあったが、その後はすぐに仕事に戻って来た。その休んでいる間に入れ替わったのかもしれんが、俺は全然気がつかなかった」

 ガロがうずくまっているルーデルを見ながら続ける。

「だが、整形魔法で姿形を変えたところで完全に成り代わるのは難しいはずだ。俺はルーデルとは数年一緒に仕事をしていた。その俺が気がつかないとは……そんなことが」

 それを聞いたアレクシオスが、ルーデルの頭に巻かれた血が点々とついている包帯を見つめる。アレクシオスの頭におぞましい光景が浮かんだが、まだ確証は無い。

 アレクシオスが探知魔道具を取り出し、ガロに見せながら尋ねる。

「本拠地で修理した探知魔道具はルーデルを指している。これはどういうことだ?」

 ガロが突きつけられた探知魔道具を見つめた後で、思いついたことを答える。

「探知魔道具には髪や爪などの追跡相手の一部が必要だ。恐らく探知魔道具の中に仕込まれた髪を、アイツがルーデルの物に入れ替えたのだろう」

 それを聞いたアレクシオスは、自分の持っていた壊れたままの探知魔道具を取り出した。

「この探知魔道具は僕が肌身離さず持っていた物だ。この中の髪の毛は魔人の物だ。中身を入れ替えてくれ」

 そう言って壊れた探知魔道具をガロに渡す。ガロはそれを受け取ると、探知魔道具の裏ぶたを開けて、その場で中身を入れ替え始めた。アレクシオスがその作業をじっと見つめている。

 作業を終えたガロが探知魔道具の針の指し示す先を確認する。その針はルーデルではなく別の方角を指していた。

 その方角を見たアレクシオスが悔しそうに呟く。

「恐らく王国の本拠地を指しているのだろう。僕たちはまんまと魔人の手のひらで踊らされた!」

 アレクシオスは悔しさのあまり、思わずその手で壁を殴りつけた。

 

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