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魔人の行方-2

 神鳥に乗っている二人の目に、広大な帝都の全景が広がり始めた。アレクシオスが手元の探知魔道具の針の先を確認して言う。

「間違いない。探知魔道具の針は帝都を指し示している。魔人は帝都にいる!」

 アレクシオスの言葉を耳にして、アストライアの抱きついている腕の力が少しだけ強くなった。アレクシオスが神鳥を帝都の中心にある白亜の塔に向けた。


 塔の頂上にゆっくりと神鳥が着陸していく。最初にアストライアが飛び降り、続いてアレクシオスも飛び降りた。長距離を飛行して光の粒子が欠け落ちていた神鳥は、二人が降りて暫くすると自然消滅するようにちりぢりの光の粒になって消えていった。

 アレクシオスが手のひらに置いた探知魔道具を凝視し、アストライアも横からその針の指し示す先を見つめる。探知魔道具の針は塔の下を指し示していた。

「城下町の辺りを指しているみたいね。私たちの本拠地に潜り込むなんて、大胆なのか何なのか?」

 アストライアが呆れたように呟いた。帝都にはアレクシオスを始めとした高ランクの白魔法使いが多数集まっている。いかに魔人がランク6の黒魔法使いであったとしても、見つかったらただでは済まない。アレクシオスが探知魔道具を握りしめながら言う。

「とは言え、城下町で魔人との戦闘になったらとてつもない被害が出る。他の高ランク白魔法使いを集めて、素早く取り押さえるんだ」

 そう言うとアレクシオスは急いで塔の階段へ向かう。アストライアもその後に続いた。


「ただの集合住宅に見えるわね。本当にこんなところに魔人が?」

 アストライアがアレクシオスの持つ探知魔道具を見つめながら呟く。探知魔道具の針はピンと強く目の前の古びた木造の集合住宅を指している。アレクシオスも少し不思議に思いながらも、アストライアに指示を出す。

「魔人が変身している可能性もある。アストライアは探知魔法の準備をしてくれ」

 アレクシオスが他の白魔法使いにも指示を出しているところに、不安そうな顔をした老女が近づいて来た。

「あのう……ウチに何かあったのでしょうか?」

 老女はこの集合住宅の持ち主だった。アレクシオスが優しい表情をしながら老女に尋ねる。

「突然お呼び立てして申し訳ありません。この部屋に手配犯が潜んでいる可能性があります。誰がこの部屋を借りているのかを教えて頂けないでしょうか?」

 アレクシオスの表情に安心した家主の老女が、手元に手帳を開きながら説明を始めた。

「この部屋は数年前から男の人に貸していますね。大陸の外から来た人なので最初は貸すのをためらったのですが、豪商の方が身元保証人となって下さったのでお貸ししました。名前はなんだったっけ……」

 老女は崩れた自分の文字を読み解きながら、その名前を答える。

「ルーデルという方ですね」


 アレクシオスが部屋の扉を蹴破って部屋の中に入っていく。蹴破った部屋の中から汚物の臭いが立ち込めて、アレクシオスの鼻を襲った。アレクシオスは構わずに剣を片手に部屋の奥に進んでいく。

 後ろではアストライアが探知魔法で細かく魔力の波紋を作り出して、素早く正確に部屋の中を調べていく。

(中に居るのは一人。魔力の痕跡があるけど……これは、もしかして)

 アレクシオスが部屋の最奥に辿り着いた、そこには一人の男がいた。小柄な男で髭も髪の毛も無い、のっぺりとした顔をしている。その頭には包帯がグルグルに巻かれていた。アレクシオスが剣を向けるが、その男は虚ろな表情で何の反応も示さない。アレクシオスが剣を片手に探知魔道具を取り出して、その針の指し示す先を確認する。

「探知魔道具は確かにこの男を指している。この男が魔人なのか?」

 アレクシオスは男に声をかけるが、男は聞こえているのかいないのか、相変わらず虚ろな表情で何も答えない。アレクシオスが剣を鞘に納めて男の手を取って部屋から連れ出そうとする。男は抵抗をしたが、アレクシオスが構わず引っ張っていく。アレクシオスが部屋の出口から外に出て、男を引きずり出したその時だった。

「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 男はアレクシオスの手を振り払うと、頭を押さえて部屋に戻り頭を抱えてうずくまった。アレクシオスがその光景を呆然と見つめる。

 アストライアが青ざめた表情で部屋に入り、男に向けて探知魔法を使った。探知魔法を使い終えたアストライアがアレクシオスに顔を向ける。その顔は青ざめて、何かを乞うかのような表情をしていた。

 アレクシオスは彼女のこの表情を知っている。何か大きな失敗をしたと確信した時の表情だ。アレクシオスがゆっくりと、優しくアストライアに尋ねる。

「一体、何が起きているんだ?」

 アストライアがその口を動かして、辛うじて答える。

「この男は、ルーデル。多分、本物のルーデル。私、気がつけたはずなのに……ごめんなさい。ごめんなさい……」

 アストライアがその豊かな金髪を掻きむしるように両手で抱えながら、膝から床に崩れ落ちた。

 アレクシオスは震えるアストライアから、部屋の奥で同じ格好をしてうずくまっている男、ルーデルを見つめる。

 状況を理解しつつあるアレクシオスが、部屋の外にいる別の白魔法使いに指示を出す。

「ガロを呼んできてくれ。至急だ!ヤツに聞かなければならないことがある!」

 

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