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王族-2

 ランタンを持ったディアナを先頭に、三人が長い下り坂を行く地下通路を歩いて行く。

「どこまで続くのでしょうか?」

 ルーデルが震えるような声で言った。アレクシオスは無言で考えている。

(帝都でガロと会話した時、探知魔道具の修理は本拠地でないと無理だと言っていた。この少女の行く先に本拠地があるはずだ……)

 アレクシオスの今回の目的は、探知魔道具の修理と闇ギルドの本拠地の確認だ。

 ディアナが歩きながら警告する。

「この秘密の地下通路は迷路のように張り巡らされております。道を間違えると戻って来られなくなるかもしれません。私から離れないで下さいね」

 アレクシオスがランタンの光で影になっているディアナに向かって尋ねる。

「とても古い通路に見えます。一体いつ頃から存在しているのでしょうか?」

 ディアナが少しだけ笑うような顔をして答える。

「現在のグレンフォート王国の前に存在した、アステリア王国の頃の遺跡だそうです。現在の城はかつてあった城と町の上に築かれたものだそうですよ」

 それを聞いたアレクシオスが思い出した。

「アステリア王国と言えば、伝説の女王セレナによって悪魔への生贄にされたという王国でしたね。本当に生贄にされたのでしょうか?」

 ディアナがクスリと笑って答える。

「それは分かりません。ですが女王セレナは実在したのですよ。この地下通路には女王の間があり、そこには女王の肖像画もあります」

 ルーデルが呟くように言う。

「女王、冥府の女王……」

 ルーデルの呟きを聞いたディアナが答える。

「ええ、そうです。我々闇ギルドの創始者である冥府の女王とは、女王セレナを指すのですよ」

 アレクシオスの頭の中で点が繋がり始めた。

(300年前の女王が闇ギルドの創始者。現王国と闇ギルドの繋がり。つまり、そう言うことか……)

 アレクシオスがディアナの後ろ姿を見ながら確信する。

(王国と闇ギルドに関係があるとかではない。王国が闇ギルドそのものだったんだ!)

 

 枝分かれした長い通路の先に、大きく豪華な扉が現らわれた。ディアナがその扉の前で振り返ると、ルーデルを見つめて言う。

「この先にローレンス様を始めとした王族の方々が待っています。貴方の役目は、分かっていますね?」

 ルーデルが無言で頷く。アレクシオスはルーデルの役割というものが分かり始めていた。

 アレクシオスがディアナに無表情で尋ねる。

「ローレンス様は、何百年ほど生きられておられるのですか?」

 ディアナが微笑を浮かべながら答える。

「さあ?でも多分、300年よりは短いと思いますよ」

 アレクシオスがルーデルにその顔を向けて尋ねる。

「君はランク12だったはずだ。だが、使えるのか?」

 ルーデルは赤い毛むくじゃらの顔でゆっくりと頷いて肯定し、呟くように答える。

「はい。ガロ様から紹介された悪魔と契約すると、使えるようになるのです」


 生命転移

 

 コスト:

  魔法陣

  寿命(任意)

 

 効果:

  対象に寿命を渡す。


 本来であればランク12では使えない、ランク7の高等魔法。だが悪魔の中には時折、高レベルの黒魔法が使えるようになる個体も存在する。

 ディアナがアレクシオスの顔を見つめて言う。

「かつては王国の宮廷魔法使いの仕事でしたが、帝国の支配によって表立った黒魔法使いは居なくなりました。それで現在ではこのような手段を取っています。貴方はご存じなかったのですか?」

 アレクシオスは少し驚いた顔をしながら答える。

「ええ、互いの任務内容は伝えられていませんでしたので。私の任務は探知魔道具の受け取りです」

 ディアナが豪華な扉に手をかけながら、アレクシオスに尋ねる。

「貴方はどうしますか?ルーデルと一緒に中へ入りますか?それとも、扉の外で待ちますか?」

 アレクシオスは悩んだ。彼は任務のためにディアナを追跡しなければならない。だが……

 アレクシオスがルーデルを悲しい目で見つめる。そんな視線に気がついたルーデルが笑って答える。

「大丈夫です。全寿命を渡すわけではありません。気にしないで下さい」

 アレクシオスがディアナに見えない方の拳を握りしめる。そんなアレクシオスを見て、ルーデルが続ける。

「貴方は本当に良い人ですね。本当に気にしないで下さい。私は貴方とここまで旅が出来て本当に楽しかった。アストライア様にも申し訳なかったとお伝えください」

 そう言ってルーデルはアレクシオスが握りしめていない方の手を取って、最後の別れの握手をした。アレクシオスは握りしめていた手を開いて、ルーデルの手を取って両手で強く握り返す。

 別れの挨拶を済ませたルーデルが大きく豪華な扉に向かって行く。ディアナがその扉を軽く開くと、ルーデルはその中に飲み込まれていく。


 カシャリ


 アレクシオスの目の前で、その扉は軽い音を立てて閉じた。

 

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