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王族-1

 アレクシオスが宮殿から書庫に戻った。書庫のドアを開けて部屋に入ってくるアレクシオスを見た案内役の少女が、少しだけ顔をしかめて言う。

「勝手に出歩かれては困ります。一体どちらへ?」

 アレクシオスは微笑を浮かべて答える。

「ちょっとトイレを探しに。しかしこの城は広いですね。迷ってしまいました」

 少女はアレクシオスを上から下までマジマジと見つめる。アストライアが助け船を出す。

「ちょっと!サボってるんじゃないわよ。ルーデルを手伝いなさい!」

 そう言われたアレクシオスがルーデルに顔を向ける。ルーデルはアストライアが取り出した大量の公文書を必死で元の場所に戻していた。

「あ、俺も手伝うよ!」

 そう言ってアレクシオスはルーデルの元に小走りで向かう。少女はその様子をじっと見つめていた。


「それじゃあ、王族とのコンタクトは取れたのね。次はどうするの?」

 アストライアが宿屋で背伸びをしながらアレクシオスに聞く。王国からは「城に寝室を用意した」と言われたのだが、彼女は断った。何が仕掛けられているかわからないからだ。

 アレクシオスが答える。

「夜中に城の近くの墓場にルーデルと一緒に来てくれと言われた」

 アストライアが顔をしかめながら言う。

「夜中に、墓場。聞いただけで碌な事にならなさそう。大丈夫?」

 心配になったアストライアがアレクシオスを見つめる。アレクシオスは表情を変えずに答える。

「それしか方法はないからね。アストライアは宿屋に残っていてくれ。マークされている君が動くわけにはいかないだろう」

 アストライアが首を傾けて壁を見つめる。彼女もそれは分かっている。

 アレクシオスがルーデルを真剣な目で見つめて言う。

「それじゃあ、今晩だ。大丈夫か?」

 ルーデルは髪と髭に埋まった目を閉じて頷く。それを見たアレクシオスが心配そうに続ける。

「君の任務とは何なんだ?本当に、大丈夫なのか?」

 そんなアレクシオスを見ながら、ルーデルは答える。

「大丈夫です。探知魔道具の修理には支障ありませんから」

 アレクシオスが嫌そうな顔をしながらルーデルに言う。

「そんなことを言っているんじゃない……」

 ルーデルが笑いながら答える。

「分かっていますよ。冗談です。貴方はいい人ですね。でも、本当に大丈夫なので、御心配なく」

 それを聞いたアレクシオスは、複雑そうな顔でルーデルを見る。

 アストライアはそんな二人をじっと見つめていた。


 真夜中になった。


 満月が夜空を照らす中、アレクシオスとルーデルが墓場へと向かう。

 月の光が照らす夜道を、二人は無言で歩いて行く。月光が墓場への道に、白魔法使いと黒魔法使いが並ぶ影を作り出していた。

 二人が墓場に着くと、人影が動き始めた。墓石に座ったその者を、月光が照らし出す。

「貴方でしたか」

 アレクシオスがその人影に声をかける。その者は三人を城に案内した、肩ほどの長さの黒髪を持つ少女だった。少女が墓石からそっと降りると、アレクシオスに近づいて少しだけ微笑みながら答える。

「最初から私に言ってくだされば、あんな真似をする必要はありませんでしたね。探知魔道具を見た時にお声をかけようかと思ったのですが、あの白魔法使いの監視が厳しくて出来ませんでした。申し訳ございません」

 そう言って少女は頭を下げた。

 頭を上げた少女が、アレクシオスとルーデルを交互に眺めながら続ける。

「私の名前はディアナ。ここからお二人をローレンス様の元へとご案内いたします。と、その前に……壊れた探知魔道具を預かりましょう」

 そう言われたアレクシオスが鞄から探知魔道具を取り出すと同時に、ルーデルも探知魔道具を差し出した。それを見たディアナが首をかしげる。

「二つもあったのですね。材料が足りずに今は一つしか直せません。どうしましょうか?」

 それを聞いたアレクシオスが探知魔道具を鞄にしまいながら言う。

「ルーデルの持っている探知魔道具を修理してもらってくれ」

 アレクシオスは直感的にそちらの方が良いと考えた。ルーデルは持っていた探知魔道具をディアナに渡した。

 ディアナは受け取った探知魔道具を持っていた鞄にしまいながら言う。

「では、私について来て下さい」

 そう言って先ほど座っていた墓石の隣に座り込み、墓石の付け根にあった窪みを素早くいくつかの順で押した。

 墓石が静かに動き始めた。彼らの目の前に、墓石の下から地下へと続く階段が現れた。


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