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魔の森-5

 アレクシオスとアストライアが朽ちた屋敷にあった祭壇で祈りを捧げている。祈りを捧げながら、アレクシオスは今までの魔人の軌跡を思い返していた。

(黒魔法使いの実験体、闇ギルドへの入隊と裏切り、魔の森での生贄。少しだけ引っかかるな……)

 祈りを終えたアレクシオスがアストライアに尋ねる。

「確かフレイヤが亡くなったとされるのは70年前だったけ?」

 アストライアが懐から手帳を取り出してページをめくり、フレイヤについての記述の時系列を確認する。

「帝暦128年頃みたいね。ああ、なるほど。魔人がエメリアを殺害したのが帝暦129年だから時系列が合わない、と」

 アレクシオスが頷いて続ける。

「それに魔人はその後20年も魔の森にいた。フレイヤを殺害して集落を生贄にしてから、20年も何をしていたんだろう?」

 アストライアが少しだけ考える素振りを見せると、手帳を閉じて懐にしまいながら答える。

「それは分からない。でも状況から考えると魔人がこの集落を生贄に契約をしたことは恐らく事実。それ以外に必要な情報がある?」

 アレクシオスが頭を軽く掻きながらため息をついて答える。

「違和感がある。それだけだね」

 そう言ってアレクシオスが静かに部屋から出ていく。

(恐らくここでこれ以上調査をしても答えは出ない。それは確かだろうな……)


 外に出た二人は火葬が終わり土を盛ってこしらえた墓に立ち、集落の者たちの冥福を祈る。ルーデルはその後ろ姿をじっと見つめると、ペコリと軽く頭を下げた。

 

 三人は集落を後にして魔の森を抜けるルートに戻って行く。今度はアストライアが先導し、アレクシオスとルーデルが並んで後ろについて行く。

 アレクシオスが歩きながら隣のルーデルに尋ねる。

「君は王国でどういった用事があるんだい?」

 アレクシオスはルーデルが王国で何をするのかは、ガロから聞いていない。ルーデルが申し訳なさそうに答える。

「それは貴方であっても話せません。我々のギルド内部に関係する話ですので。ご安心ください。探知魔道具の修理に影響はありません」

 アレクシオスは「そうか」とだけ答えると、無言になった。

(ルーデルは闇ギルドにいることを後悔しているようだ。だが逃げられないのだろう)

 闇ギルドから抜けるという事は、すなわちギルドに対する裏切りを意味する。今度はルーデルが魔人のように探知魔道具による追跡対象となるのだ。

 アレクシオスは無意識に手を握りしめていた。ルーデルは横目でチラリとその手を見つめた。


「止まって!」

 先導していたアストライアが立ち止まった。それを聞いてアレクシオスが前に出る。アストライアがアレクシオスに伝える。

「今度のは大きいわ。キマイラの比じゃない!それに長い。これは……」

「ワームだね。この森の主かな?」

 そう言いながらアレクシオスが腰の剣を抜いた。そのアレクシオスの見つめる森の奥に、白く蠢く何かがチラつく。それは徐々に大きくなる轟音と共に、木をなぎ倒しながらアレクシオスの目の前に現れた。

 

 森の主

 この代の魔の森の食物連鎖の頂点。白くて太くて長い蛇のような、巨大なワーム。

 その顔のある辺りには巨大な口があり、口にはこれまた巨大な乱杭歯が生えている。それに対して、目はとても小さい。

 

 それを見たルーデルが口をあんぐりと開けて呟く。

「嘘ですよね……」

 アストライアがつまらなさそうにアレクシオスに言う。

「急いでいるんだから、さっさと片づけてよ!」

 それを聞いたルーデルが思わずアストライアを見上げる。

 アレクシオスが振り返らず、アストライアに答える。

「はいはい、分かってるよ。だからルーデルを連れて後ろに下がっていてくれない?」

 ルーデルが今度はアレクシオスの後ろ姿を見上げる。アストライアはそんなルーデルの襟を掴むと、強化魔法で跳躍して距離を取った。


 その間にもワームは身を縮めて、とぐろを巻き始める。それを見たアレクシオスは、ワームの攻撃準備が整う前に自ら突っ込んでいった。

 虚を突かれたワームが口を開いてアレクシオスを迎え撃つ。その様子を見て足を止めたアレクシオスは、瞬時に武装魔法で槍を作り、開かれたワームの口に投げ込んだ。ワームの口に投げ込まれた槍は、つっかえ棒のようにその口を押し広げる。アレクシオスは剣を両手で持って跳躍し、閉じないワームの口の中に駆け込んでいった。

 アレクシオスはワームの内側から剣を水平に突き立てると、回転しながらワームの胴体を輪切りにしていく。頭と胴体をバネのように輪切りにされたワームが、とぐろを巻いたまま崩れ落ちた。

 アレクシオスが輪切りになった隙間から跳躍して外に飛び出す。


 一瞬の決着。

 

「え!?凄い!もう終わり?」

 あっけに取られたルーデルが、剣についた血を払っているアレクシオスを眺めている。アストライアが少し自慢げに呟く。

「竜を何体も倒したアイツが、ワーム如きに遅れを取るわけがないでしょ!」

 アレクシオスを高名にした逸話。それは竜退治。

 アレクシオスが祖父から受け継いだ伝説の剣、エクスクルスを鞘に納めて後ろを振り向く。

「さあ、行こうか!王国はもうすぐだ」

 

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