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魔の森-3

 アレクシオスがエルフの召喚体の前から、アストライアに顔を向けて頼むように言う。

「アストライア、この女性について調査をしてくれないか?」

 アストライアは顔をしかめながら、無表情の召喚体の顔の横にその両手をかざした。その両手の手のひらから探知魔法を細やかな振動で放ち、その造形を詳細に読み取る。

 暫くの間その作業を続けたアストライアはその両手を戻すと、今度は左手を左耳に当てて通信魔法を使い始めた。

「あ、ジェラルド?これから行方不明者の人相情報を送るから、過去の記録と照合してくれない?行くわね。ウ・ア・イ・エ・ア・ウ・ウ……」

 アストライアが高速で符丁をひたすら送り続ける。それを見たルーデルがアレクシオスに尋ねる。

「彼女は何をしているんですか?」

 アレクシオスが答える。

「人相情報を符丁に変換して帝都の白魔法使いに伝えているんだよ。向こうは符丁から人相を復元して、そこから過去の情報と照らし合わせるんだ」

 それを聞いたルーデルが驚いたような顔をして言う。

「白魔法使いはそんなことも出来るんですね!」

 それを聞いたアレクシオスが少し笑いながら答える。

「誰でもってわけではないけどね。この仕組みを作り出したのは彼女だ。今のところは彼女とそのグループの者しか使えない。僕にも無理だ」

 暫くの間アストライアは符丁を送り続け、その後で伝言のやり取りをしてから通信を終えた。アストライアはアレクシオスの方に向きなおして調査の結果を伝える。

「70年前に行方不明になったエルフの女性みたい。ランク10の白魔法使いで、名前はフレイヤ。帝暦128年頃に亡くなったとされている」

 アストライアが怒りを隠さず、叫ぶように続ける。

「彼女がここで集落を取りまとめて行き場のない人たちの面倒を見ていた。その彼女が杖にされている。魔人は魔の森の20年でランクが8になった。もう明らかね。魔人はフレイヤを殺して彼女に成り代わり、集落を自分の物にして、彼らを生贄にして契約した!」

 アレクシオスの顔も険しくなった。アストライアが召喚体となったフレイヤの美しい顔立ちを見つめながら早口で続ける。

「帝都でエメリアを召喚したことに味を占めたんでしょうね。フレイヤも美人だから。本当に嫌!本当に最悪!黒魔法使いとか全員いなくなればいいのに!」

 アストライアの激怒を目の当たりにして、黒魔法使いであるルーデルが引くように後ろに下がる。それを見たアレクシオスも何かを言おうかと考えたが、それでも言うべき言葉が浮かんでこない。彼女の怒りは正当なものだからだ。


 魔人によるエメリア殺害事件は、世の中に様々な影響を与えた。その最も大きなものは、人の遺体を使って召喚するという手口が知れ渡ったことだ。

 美女の遺体を召喚して様々な形で利用する。その魅力に取りつかれた者たちによって、最初は墓荒らしが流行った。美女の墓を荒らして、その脊柱を利用するのだ。この時点ではまだ問題は小さかった。

 だが問題はどんどん大きくなっていく。需要があれば必ず儲け話に変える者が出始める。今度は美女の脊柱が裏で取引されるようになった。そしてとうとう、墓荒らしでなく生きている美女を狙う者が現われたのだ。帝都で被害者が出たことで大きな社会問題になることが避けられなくなった。

 その事件以降、帝国では法律で遺体は火葬と定められ、黒魔法の禁止が徹底されることになった。帝国の支配下に置かれた国でも、それは厳格に適用された。

 そう言った背景があるため、帝国の、特に女性からの黒魔法への忌避感はとても大きい。アストライアの怒りは彼女が特に感情的だからとかでなく、帝国女性の一般的な意見に過ぎない。

 

 調査を終えたアストライアがその手を召喚体にかざした。アストライアが召喚体に解呪を撃つ前に、ルーデルは召喚を解除した。

 フレイヤが杖に戻っていく。杖がその場にコトンという音を立てて落ちた。

 ルーデルが気まずそうに目を逸らす。アストライアは何も言わない。

 アレクシオスは腰をかがめると、その場に落ちた杖をゆっくりとその手で拾った。

 

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