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闇ギルドのガロ-2

 アレクシオスとアストライアの二人はカフェの奥に案内された。豪華な扉の奥には賓客用の客室が用意されている。アストライアが一歩先に部屋へ入ると、振り返って後ろのガロに聞く。

「部屋を確認しても?」

 疑問形ではあるが、有無を言わせる気のない口調だ。ガロは若干顔をしかめつつ答える。

「この部屋には何も仕掛けてはいませんよ。ですのでお好きなだけどうぞ」

 それを聞いたアストライアが部屋の中心部に移動すると、手をかざして魔力探知を使い始めた。その手から緩やかな魔力の波動が鼓動を打つように静かに広がっていく。部屋の中の物体に当たった波動は反射するように再びアストライアに向かって戻って行く。その波はガロとアレクシオスにもぶつかり、その反射の波が返っていく。ガロがむず痒そうな顔をして呟く。

「やれやれ、何度やられてもこの魔法には慣れませんな……」

 アストライアが振り向いてアレクシオスの方を向いた。

「この部屋には魔力の痕跡はないようです」

 それを聞いたガロがほっとしたようにため息をつく。アレクシオスはアストライアに礼を言って部屋の中に入っていった。


 アレクシオスとアストライアが豪華な椅子に座っている。目の前のテーブルを挟んだ先には、ガロが同じ椅子に座っている。テーブルにはお茶の注がれたティーカップが並んでいる。今回は二人の分も用意されているようだ。

 お茶を運んできたウェイトレスが頭を下げて部屋から出て行くのを確認すると、ガロが会話を切り出した。

「最初に言っておきますが、私たちで探知魔道具を直すことは出来ません」

 それを聞いたアレクシオスが当然の疑問を口にする。

「なぜですか?この探知魔道具は闇ギルドから流出した物。闇ギルドであれば修理できると考えるのが自然では?」

 その疑問にガロが答える。

「この探知魔道具は裏切り者が出た時に闇ギルドの本拠地から送られてくる物。製法は本拠地の者しか知りません。なので帝都の我々では修理が出来ないのです」

 アレクシオスが探知魔道具を取り出してテーブルの上に置いた。こちらは魔族が使っていた物の方だ。

「ではこちらの魔道具の流出元はどこでしょう?これは先日反乱軍を結成した魔族が持っていた物だと思われます。その彼も闇ギルドと関わりがあったのでしょうか?」

 アレクシオスがガロの顔を見つめる。ガロの心臓が跳ね上がったが、顔には出さない。ガロもアレクシオスを見つめて返して答える。

「それは分かりません。私は帝都の事であれば分かりますが、魔族の国であるヴォルガルドでどうなっているのかの事情は分かりませんので」

 ガロはテーブルの探知魔道具を見つめる。ペンダントを盗み出したあの朧月夜で最後に見た、魔族のカレイドの後ろ姿を思い出した。

「少なくとも、これは我々から流出した物ではありません」

 ガロはそう言うと、ため息をついた。


 アレクシオスがティーカップを口に着けて一息入れている。腕組みをして指を口に当てて考えていたアストライアが、その指を離してガロを見つめ、疑問を口にする。

「先ほど裏切り者と言う単語が出たけど、そうなると魔人は闇ギルドに属していたということよね?闇ギルドに魔人の情報は残っていないの?」

 アストライアの指摘を受けて、ティーカップに向かっていたガロの指が止まった。アレクシオスがお茶を飲みながら、その止まった指を見つめる。

「70年前の情報です。私は、知らない」

 そう言ったガロがティーカップを手に取り、口へ近づける。アレクシオスがティーカップをテーブルに置いて話に割り込む。

「本当に知らないのですか?」

 ガロが口に近づけていたティーカップを置いて、ため息と共に答える。

「知りません!」

 アレクシオスが呟くように言う。

「ではなぜ70年前、なのですか?」

 それを聞いたガロの動きが止まった。アレクシオスが続ける。

「70年前にその人物は闇ギルドに所属していたのですね。貴方はそれをご存じのようだ。魔人のことを詳しく教えて頂けないでしょうか?」

 ガロはテーブルに視線を落としながら、絞り出すように答える。

「ただの私の勘違いですよ。私は……知らない……」

 アレクシオスは追及の手を緩めない。

「70年前のフローレンス邸襲撃事件。これは有名ですね。被害者はエメリア、裏の名前はモリガン。」

 ガロは動きを止めたまま、テーブルを見つめ続けている。アレクシオスがもう一つの探知魔道具を取り出し、事実を突きつけていく。

「この探知魔道具は50年前に冒険者ギルドへ送られてきた物です。送り主は……ダズ!」

 そう言ってアレクシオスがガロを見つめる。ガロは自身の左膝を手で握りしめていた。アレクシオスは無表情にガロに言葉を落とす。

「モリガンとダズの亡き後、貴方は闇ギルドのリーダーとして君臨した。貴方は魔人を手を組んで、邪魔者を皆殺しにしたのではないですか?」

 ガロは耐えられなかった。テーブルを拳で叩きつけた。

「俺じゃない!俺は関係ない!アイツが、アイツが全部やったんだ!俺のせいじゃない!アイツを誘ったのはダズの兄貴だ!俺じゃない!俺のせいじゃない!」

 その口を大きく開けて叫んだガロは、頭を抱えてブルブルと震え始めた。

 

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