第140話 青蛙と女狐
「土蜘蛛の話やと、任務中って言うとったが、これがあんさんの任務かいな?」
「ちゃいます。あの閻魔っちゅうええ性格しとるお坊ちゃんが来てはってから。ウチ、モノノケの任務を少しお休みさせてもらってるんどす。」
「ワシの前でモノノケをバックレる発言かいな。まあ、正直あの環境に身を置くんはワシかて御免や。せやけど、どないして、狩北の生徒なんかやっとるんや?あんさんのZONEならどこでも行けるやろ?」
「青春を取り戻すっちゅうと気前がええけど、実際はウチの興味本位で狩北の生徒をしとる。あの神楽坂音色っちゅう人間は見てて飽きまへん。あの土蜘蛛んとこのカワイ子ちゃんと話す機会もあるし、ウチとしては結構充実してるさかい、卒業まで狩北の生徒の御先玉母として生きてみるつもりや。」
女狐が来ないなとこにおる理由としては妥当やな。嘘をついとる感じもあらへんし。ホンマに興味本位みたいや……となれば、こいつとワシは今やモノノケの仲間やあらへん。狩北生徒の御先玉母と狩高生徒の蟇野錯牢。他校の生徒同士。つまりはこのサバイバルフォレストにおいて敵対関係っちゅうことや。やったら、やる事は一つ。
「狩北の生徒を名乗った以上。狩高生徒のワイとしては、あんさんをこのまま易々と見逃すことはせえへん。そっちもその気みたいやし、ここは一局お相手してもらうで。女狐!」
「よく鳴いたな、青蛙!行きなさい狐火!」
20個ほどの火の玉が現れ、ワイの周囲を取り巻く。そしてそれら全ての形が女狐と同じ姿を取って体当たりしようと突進してくる。
「分身……いや、あんさんの能力による見た目の改竄かいな。」
量は多いが、当たり判定も変化もあらへんし、避けれんわけやないな。前までは対象が人間に限定されとったが、それ以外に適応できるようになっとるんか。
ワイは迫ってくる狐火を弾け飛ぶ衝撃:空気銃で一つづつ潰しながら数を減らそうと構える。
いや、そうせざるおえへん。いっぺんにまとめて潰そうとすれば、必然的に広範囲に攻撃をせなあかん。そうなると、この建物を倒壊させてまう可能性が出てくる。女狐は、戦闘能力だけで言ったらモノノケ最弱。ワイに勝たれへんことは想定しとるはずや。となると、女狐の目的はワイを別館に近づけさせんこと!
「弾け飛ぶ衝撃:空気銃!」
そして、目の前に来た狐火よりも先に空気を殴り、空気銃を発動させようとした次の瞬間。ワイの体は目の前の全ての狐火を消す威力の空気銃を放った。放たれた空気銃によって目の前の狐火は瞬時に消滅すると同時に直線上にあった柱の数本が真ん中から折れて崩れていく。
「えらい気張ってはりますなあ、青蛙。そないな威力出したら建物が保ちまへんで?」
「んなことわかっとるわ!弾け飛ぶ衝撃:二丁空気銃!」
両手を同時に前へと突き出す二丁空気銃を放ち、女狐を攻撃する。しかし、これも威力がとても大きく、その反動で女狐に直撃することなく横を掠めるが、建物にさらに大きなダメージを与える。
どないなっとるんやこれは!?ワシは倒壊を恐れて威力を弱めとるはずやのに、加減ができとらん。ワシはそないなヘマをするような鍛え方はしとらんはずや。
「くっ……」
「その苦悶に満ちた表情、ええどすなあ。その方があんさんにえらく似合っとるで。今まで殺した人間の数は知らずとも、こないな顔くらいは見たことあるんとちゃいます?」
「生憎やな、ワシは殺した人間の顔も数もいちいち覚えとく派や!」
ワイは女狐に向かって走る。ここで沈めるのは気が引けるが、しゃあない。ここで早く倒して先を急ぐ!
「ここでリタイアしてもらうで!」
右拳に力を込め、弾け飛ぶ衝撃:三重衝撃を打ち込もうと拳を突き出す。拳は女狐の右肩へと当たり、これで壁に打ち付けて終わりや……なっ!?
「ええ衝撃や、肩こりのマッサージにはちょうどええなあ。」
嘘や。受け止めやがったやと!?こないな強さこいつにはあらへんかったはずや。ワシは確かにこいつを沈めようとしたはず、なのにどないしてそんなにダメージを軽減できとるんや!?
咄嗟にその場を離れて女狐から距離を取る。
「あら、もう一発はくれへんの?胸が大きいさかい、両肩が凝るんどす。左肩にももう一発入れてくれると助かるねんけど。」
「女狐……強さまで今まで化かしとったんか……?」
「なにか誤解してへん?ウチは別に腕っぷしが良くなったわけやあらへんよ。」
「なんやと?」
「あんさんが跳躍強化から弾け飛ぶ衝撃へとZONEを進化させたように、ウチもZONEを進化させたんよ。ZONEの進化の方向性は様々あるけど、ウチの場合はウチの能力とは全く無関係のZONEを得た、それがあんさんを翻弄しとるものの正体どす。」
元の能力とは別口で、ワシの感覚そのものを狂わせる能力を得たんか。力加減がうまくいかへんのも、全部それか。見た目で惑わすだけやなく、力の通り道まで化かしてくる。厄介や、これは想像以上に厄介やで。
「あんさん、本当ならウチなんか沈めるんは気が引けるとか、そないなこと思ってるとちゃいますか?」
「だとしたらどうないするっちゅうねん?」
「そう最初に思った時点であんさんはウチを倒すことはできへん。」
「ほな、次は本気や!」
毒蛙魔槍・周防を取り出して女狐へと向け、三本の針が三叉槍の矛先から発射される。三本の針が女狐に命中し三回の弾け飛ぶ衝撃によって女狐の体は空中へと浮かせ、地面を蹴って懐に飛び込み、腹に一撃を入れる。
「弾け飛ぶ衝撃:三重衝撃!!!」
腹に入り込んだ一撃、その後に続く三回の衝撃で確実に気絶まで追い込む……はずだった。撃ち込まれた後の女狐は体を起こすと付いた汚れを払って余裕そうにワイを見る。
「その程度?本気言う割に大したことあらへんなあ。」
あかんな、一度そう思い込むとワシ自身、それに引っ張られとる感じがしとる。ワシが直接殴るからいかんのか?
試しに地面を叩き、崩れた床の瓦礫を空中へと舞わせ、それらと同じ高さまで弾け飛ぶ衝撃で駆け上がり、ワイは拳を振り下ろす。
「女狐がワイの行動を化かすんなら、ワイ以外の行動でぶつければええ話や!弾け飛ぶ衝撃:空気散弾銃!」
ワイの行動は制御や化かすことはできても、弾け飛ぶ衝撃で弾いた瓦礫の軌道全てを化かせるほどの能力はやつにはあらへんはず。それにワイは女狐を目標に据えて攻撃したわけやない、これなら恐らく女狐の能力に引っ掛かっとらんはずや!
弾丸の如き速さで弾かれた瓦礫が、逃げようとした女狐を包囲し、進路を塞ぐように拡散して着弾する。床材がはじけ、空気が裂け、煙が広がった。……が、煙の向こうに見えた女狐の輪郭は、さっきまでよりもずっと曖昧やった。狐火の集合体が、半歩だけずれてそこに立っている。
「デコイを置き先の煙に紛れて、奥に逃げたか。」
どないするつもりや、誘い込んどるんか……いや、正面切ってでも先を急がへんとあかん。他校が何人おるかもわからへん。罠やとしても押し通るまでや!
なんか、最近リアルが忙しすぎて執筆が




