第139話 奪取ダッシュ猛烈ダッシュ
「マデゴラァ!!!」
「待てと言われて待つ人がどこにいる!」
ドスの効いた怒号を上げながらワシらの前を通過していったのは、ピンク色の髪に星型のハイライトが入った青色の目とネコ口が特徴的で、ぱっと見非常に可愛らしい見た目でいつも神楽坂の横にいるで有名な菅野音々が、まるで黒い象の鼻が渦巻いたかのような仮面を付け、黒いスーツの上に研究服を着たおそらく千の貌持つ化身の戦闘員を、スピード感のある盛大な音楽と鬼の形相と共に凄まじい速度で追い掛け回すという、ワイらの思考を停止させるようなインパクトのある光景やった。
「今のなんや!?」
「千の貌持つ化身と狩北の菅野花音じゃなかったか?」
「んなことわかっとるわ!せやけど、どないしてこんな状況になっとるんか聞きたいんや!」
「そんなこと俺に聞かれても。」
「後追ってみよー!」
「賛成や!行くで!」
弾け飛ぶ衝撃を発動し、地面を蹴り空気を蹴って天井に当たらないように二人の方へと向かう。そうやって逃走劇を続けていると、分かれ道となる階段が現れる。そして追われている千の貌持つ化身が突如として身長が半分ほどのもう一人の千の貌持つ化身を作って二人に分かれ、片方が階段を登り、片方が階段を下る。
「テメエ!また分身しやがったな!どっちが本体だ!ゴッチがァァ!!!」
そうして、音々は階段を登って行った千の貌持つ化身を追って階段を駆け上がっていく。ワシは仕方がなく階段を降りた千の貌持つ化身を追って速度を落とさぬように階段の壁や空気を蹴り千の貌持つ化身を追うと、不意に廊下の真ん中で千の貌持つ化身が立ち止まる。
「ぜぇぜぇ……ガマ、お前早すぎるって」
「もう疲れたよー!」
「トロくて体力があられへんあんさんらが悪い。」
遅れてきた二人に軽口を叩く。もう一言ぐらい言ったろうかと思っていると、立ち止まった千の貌持つ化身がワイらの方へと振り向くと会釈をして話しかけてきおった。
「新しい挑戦者の方々ですか。確か君たちは、狩人高校3年A組の泡美愛水さん、蟇野錯牢さん、霧島昇也さんですね。私の名前は、魚角怪人。千の貌持つ化身の戦闘員です。」
「えらく丁寧やな、ウオスミ。あんさんが、戦闘員ちゅうことはワイらの敵ってことや。あんさんをボコして一般人を救出させてもらうわ。」
「少々誤解があるようで、ここでは皆さんと一緒にゲームをしていただきたい。」
「ゲームだと……?」
「あなた方も見たでしょう。必死になってもう一人の私を追いかけている狩北生徒の姿が。ここでは、私を捕まえる鬼ごっこをしていただきます。」
正直な話、こいつをここでぶっ殺してさっさと一般人を救出したいんやが、狩北の連中とこいつらがおる中でそないなことしたら、ワシの居場所がなくなりかねへん……それだけは避けたい。ここは穏便にこのウオスミのルールに従って一般人を救出するんが最善や。
「ええで、その話乗ったわ。あんさんらは、それでええか?」
「まあ、追いかけてタッチすればいいんだろ?俺のミストボディなら楽勝だね。」
「泡美は走るのは専門外ー!でも、罠とか張っちゃってもいいなら弾けて混ざる泡でどうにかなるから任せて―!」
「これで決まりや、ほな早速、そっちのルールとやらを手短に教えてもらうかいな。」
「随分と強気ですね。では、ルールの説明をしましょう。鬼ごっこの範囲はこのあいち健康プラザの屋外10m以内の敷地を含めた中で行われます。私を捕まえる方法はタッチではなく身柄の拘束、または私が降参し投降した場合に捕まえた状態とみなします無論、私は全力で抵抗します。それと万が一牢屋から強制的に一般人を救出する場合は、強制的に戦闘を仕掛けさせてもらいます。ルールは以上です。」
ウオスミが説明を終えると、ウオスミからまた身長が半分で見た目が瓜二つの分身が現れ
「「「では、初め。」」」
と言ったと同時に一人はワシらの横をサッと通過しさっきの階段を駆け上がり、他の二人は廊下のさらに奥へと走り去っていく。ワシは一番背がデカい階段を上がって行ったやつを追う。
「急いで追うで!ワイは一番背がデカいやつを追う。あとの二人はあんさんらに任せたで!」
分身を作る時、その分身が半分の身長になるってのは二度見ればわかること、やつらに分身を追わせ、ワシが毒を打ち込んで拘束したる!そうすればワシの勝ちや!
地下一階から二階へと上がり、部屋全体を一周するように作られた吹き抜けのランニングコースへと入って行ったウオスミの後ろを追いかけようとすると、ウオスミはワシとの距離を半周分取りながら逃げ続ける。逆方向に切り返して追いかけてもすぐに対応され、だんだんとウザったらしくなってきおった。せやから、ワシは、毒蛙魔槍・周防を取り出し、空中へと投げ、ウオスミに向けて殴り付ける。
「弾け飛ぶ衝撃:三重衝撃!」
一つ目の衝撃で速度を上げ、二つ目の衝撃で角度を調整、三つ目の衝撃で突き刺さった瞬間の貫通力を高めた毒蛙魔槍・周防が吹き抜けを挟んだ反対側を走るウオスミの右肩を穿いて体を浮かせ、槍と共に壁へと押さえつける。
「ようやく捕まえたでぇ、ウオスミはん。鬼ごっこはおしまいや。一般人を解放してもらおうか?」
そう言って壁に打ち付けられたウオスミに近づくとウオスミは不敵な笑みを浮かべた直後、黒い霧となって霧散し消えていった。
「……なっ!?消えおった!?」
まさか、ワシが追っとったんは、分身やったんか!?確かにあいつが作り出した分身には一つ特徴があった。それは作った分身の身長が半分になるっちゅうことや。せやから、あの背が大きいやつを……しまった、アホこいた!階段で分かれたあん時に既に追っとったのが分身やった!
「クソがっ……!」
今ワシがおる場所は二階、音々らが上がって行ったのは二階や。既にここにおらんちゅうことは、一階、もしくは健康宿泊館の方へと移動しとるはずや。あの時の会話が時間稼ぎやとしてもワシの最高速度でぶち抜けばまだ追える距離におるはずや!
小刻みに弾け飛ぶ衝撃を発動し、加速しながら階段を下ると分身だと気付いたであろう二人と合流する。
「俺らが追ってたの分身だよな!?」
「その通りや、二階も見て回ったがもうやつらおらんかった。既に別館に移動しとるはずや。」
「えーまた走るのー!?」
そして一階の廊下を通り抜け別館となる健康宿泊館の前へと移動すると、ワシの進路を妨害するかのように一人の女が立ち塞がり追った。
「ここから先は通さへんよ。」
なんや、こいつ胸がデカい!やなくて……この三年間で一度も見たことがあらへんぞ。制服は狩北のもんやが、ちょいと改造されとるな。黒い着物袖学ランと言った具合や、それにあの髪色は金と言うよりも狐色に近い珍しい色や、転校生か……あるいは……
「あんさん見ない顔やな……」
「ウチは、春に三区にある狩人育成高校から転校した。御先玉母と申します。以後お見知りおきを、ガマはん。」
ワシはその声色にピンと来た。
「あんさんら先を急げ、ここはワシが食い止める。」
「そう簡単に通させへんよ。」
動こうとする女狐にワシは弾け飛ぶ衝撃:空気銃を叩き込み動きを封じ、二人の背後に回ると弾け飛ぶ衝撃で別館の入り口へと吹き飛ばす。
「ガマ!?」
「ガマ君!?」
「早よ行けや。ワシなら大丈夫や。鬼ごっこの方は頼んだで。」
ワシの言葉に頷き、二人はすぐに立て直して別館の中へと走って行く。その後ろ姿を見届けた後、女狐は扇を取り出して扇ぎながら話しかける。
「えらいお優しい性格してるんどすなぁ?」
「隠す気ないやんけ……いや、隠す気はあるんやろうな。流石の変装術や。一発であんさんやと判別できんかった。せやけど、その隠しきれへん妖艶さ、ワシの目には誤魔化せられへんで?」
「結構ウチ頑張ったんやさかい、世辞でもええから、もうちっとばかし褒めてくれてもええんやない?」
そう言いながら、御先玉母は、ただでさえ大きい胸を強調するかのように胸元を開けた花模様の華やかな着物袖学ランへと服を変え、狐耳と九つの尻尾を生やす。
「改めて自己紹介させてもらうやで。ウチの名前は九尾もとい、尾裂狐玉藻。よろしゅうお頼申します。」
まーた分身持ちが増えたよ。なんで????というか正確に言うと分身じゃないんだよ。
この世界大阪と京都が合体!してるので方言がごちゃごちゃしてるんですよ。その理由?大阪と京都が合体して三区になってるからだよーん。




