第137話 空からの落下物
天野の空からの落下物によって、俺はカイジをあの場から連れ去ることに成功した。雲から落下し、地上へと着地しようとするがカイジの抵抗によって口での拘束が限界を迎え、俺はカイジを地面へと放り投げる。カイジは器用に着地し、周囲の状況を確認しながら言った。
「こりゃ、一杯食わされたな。ここ、エリアの外だろ。」
俺は人間態へと戻り、天野の近くへと移動する。
「そうだ。ここはエリア外サバイバルフォレストのド真ん中。機械なんてほぼ動かねえし、存在しない。お前にとって圧倒的に都合が悪い場所だ。お前が天野の悪口言ってる辺りから笑いが込み上げるのを我慢したぜ。どんな気分だ、自分が侮っていた相手に一杯食わされた気分は?」
「やるじゃん。としか言いようがないな。天野校長さんはここまでの射程距離の長さを持ち得ていなかった。こりゃ、比べる方が烏滸がましいってもんだ。謝罪させてほしいね。」
「だってよ天野。」
「謝罪は要りません。私達が欲しいのは勝利だけです。」
「そっか、受け取ってくれねえか。フラれちゃったな……じゃあ、やろうか!」
カイジはそのまま踏み込み、迷いなく俺達二人へ接近してきた。俺はカイジを天野との距離を遠ざけるように飛び蹴りを打ち込む。カイジはそれを難なく受け止めやがったが、隙を逃さずそのまま瞬間影移動でカイジの後ろ足元の影へと移動し、カイジを羽交い絞めにする。
「天野!」
「空へと祈れ・雷雲!」
俺とカイジを取り囲むようにバチバチと音を立てながら雷雲が円を作って現れる。そして、その円の中心にいる俺達に向かって雷が四方八方から放たれる。
「雷対策をしてないとでも思ったか!」
カイジは羽交い絞めの状態を諸共せず、足を動かし、そのまま高速で移動を始めた。雷雲はカイジを追従さえするものの、カイジのスピードに付いて行くことができず、一瞬にして雷雲の円から抜け出した。先手必勝の自爆作戦は失敗だ。だが、俺達には天野にはまだ空からの落下物がある。
「空へと祈れ・空からの落下物!」
再び、俺とカイジは共に雲の上へと送られる。カイジはすぐに俺を突き放すが、待機していた別の雷雲が雷をカイジへと撃ち込んだ。
「ぐっ……!が、まだ足りねえな!」
「なにっ!?」
「直撃一発で倒れるほど軟じゃねえぜ!」
カイジの、背中部分が観音扉のように開くとそこが翼のように変形、そして開いた箇所から現れたジェット機のブースターが点火。宙を舞い、天野の方へと飛んで行く。
「お前らの狙いは天野の雷で俺の体の動きを封じ込める算段なんだろうが、俺は生憎電子部品だけで体を構成してる訳じゃないんでね。雷自体が脅威であることに変わりはねえんだがな!」
カイジの左腕がぐるっと前回りで回転すると、複数の銃口が現れマシンガンへと変わり容赦なく天野に向けてマシンガンを連射する。
「天野!」
マズい。この距離に、目視できる影が、天野の近くに移動できる目視距離にある影が無い。俺とヤツの距離も上手く空中で体を制御しても届きようのない位置にいる。天野にできる自衛手段で、マシンガンの連射を受け止めることができる方法はない!
「空へと祈れ、私を守って!」
次の瞬間、天野の周囲を雲が覆い隠す。雲はまるで防護服のような形へと姿を変え、天野に向けて放たれたマシンガンの連射をいとも容易く受け止める。
「器用だねー!?そんなことできるのか!?ますます成長が楽しみ――だっ!」
カイジは一度は驚きながらも、空中から天野へと近づき殴り掛かる。
「させねえ!」
俺は着地した後、天野に割って入るように瞬間影移動で移動。カイジの右拳を掴んで受け止める。
「お前、マジで鬱陶しいな!」
「だが、これならお前は動けねえ。」
俺はカイジの右拳をがっちりと掴み、両足を瞬間影移動で影の中へと引きづり込む。影はそこに地面が抉れようとも、そこに影はあり続けるその性質がこの状況ではアンカーになる。その証拠にカイジは全身の推進力を使って離脱を試みているが、微動だにしない。
「こうなったら、右腕をパージして抜け出してやる!」
「そうはいかねえ!黒条流・四式「凝塊」!」
闇が俺の手から伝いカイジの右腕を覆う。四式は闇を編み込むことでそれを一つの形を作り出す、そしてこの「凝塊」は闇を凝固させ一つの塊として物質化させる。闇で覆えさえすればその個所を瞬時に固める。そして、その右腕を覆った闇は徐々に氷のように形を成して凝固していき、カイジの胴体と右腕をガッチリと固定する。
「この闇はまさか……なるほど、そういうことか。それに頃合いか。」
カイジが何かボソッと呟いた瞬間、ブースターが切れ、カイジの抵抗が消える
「今だ!天野!」
「空へと祈れ・雷雲!」
天野の纏っていた雲が一瞬で剥がれ、今度はカイジを包み込むように収束し、そのまま黒く染まって雷雲へと変質する、閉じ込められた内部で逃げ場を失ったカイジに対し、数十発の雷が容赦なく叩き込まれる、閃光が連続し、轟音が鼓膜を打ち、鉄が焼けた匂いが空気を満たす。
「負けたよ。降参だ。」
その一言と同時に、張り詰めていた力がふっと抜ける、だが俺は拘束を解かない、こいつの降参は信用できる類のものじゃないと、本能が告げている。
「……本気で言ってんのか?」
「言ってる言ってる、これ以上やったら機体の方が持たねえしな、さすがにこの環境でそのコンボ食らい続けるのは分が悪い、完敗だよ。」
軽い調子のままそう言うが、仮面の目の奥の光はまだ死んでいない、だから俺は影の拘束を一段深く沈める。
「天野、警戒は解くな。」
「はい。」
「そう警戒すんなって、向こうもシシドウが根を上げたみたいだからな。」
「シシドウさんがですか。」
「ってことは星谷達の方も上手くいったみたいだな。天野、お前の空からの落下物。すげえ、役立ったぜ。」
「ありがとうございます。黒条さん。」
天野が少しだけほっとしたように息を吐く。俺も同じだ。ようやく一息つける。俺はカイジを下ろし、拘束を解除する。そして背伸びでもしようとそう思った瞬間だった。
「いいねえ、青春してんねえ。そんなお前らに結構重要な情報を渡してやろう。」
カイジの声色が、ほんの少しだけ変わる。さっきまでの軽口の中に、妙に引っかかる真剣さが混じっていた。
「重要な情報……?」
「知りたそうな顔だな。最後の一般人を守るのは千の貌持つ化身じゃない。Dr.カウザー本人だ。」
その瞬間、俺の背筋に冷たいものが走った。こいつがわざわざここでそれを言うってことは、ただの世間話じゃねえ。エリアの最終局面に、カウザー本人が動く。つまり、火野先生並みの相手と戦うことが確定したってことだ。
「……で、最後の一人、そいつはどこにいる。」
「それを知りたけりゃ、次はお前ら自身で辿り着けってことだ。面白くなってきたじゃねえか、サバイバルフォレスト!」
なんかスランプ入りかけよーん、主にカードゲームのやつとapexが悪い




