第133話 仕事
「くっ、いってえ……あの野郎。前に戦った時よりもパワーが段違いだ……それにスピードも!」
俺は立ち上がり、背中のビームライフルを左腕で構え、そして、左腰から機械剣を引き抜き、右腰の機械剣に連結させ双刃剣モードにして取り出す。飛ばされた方向を見れば、既にカイジが俺の側へと近づいている。
「あん時の決着を付けようぜ、キリコ中毒者!」
俺は機械剣の凹凸でカイジの剣を絡め取る。そして、絡め取っていない一方の機械剣の連結を解除。柄の先端部分を右足で蹴り、機械剣をやつの膝へと突き刺そうとするが機械の体のせいか突き刺さることなく弾かれる。
「左がお留守だぜ!」
カイジは俺の左半身を、機械剣で絡め取られた右手の剣から手を離して殴って来た。重く、そして痛いが我慢できないほどじゃなかった。俺はその右手を左手で掴み、右腕のマンティスガントレットを一時合体。蟷螂モードにして右手の機械剣に電気を流す。
「パージボルト5%小雷激震!」
機械の体に電気を浴びさせれば、当然やつの体は誤作動を起こす。そう考えていたが現実は違った。やつは何かしたかと言うような表情を見せ、俺の前から姿を消す。そして次の瞬間には複数の斬撃が俺の体を襲っていた。
「はやっ……!」
ビームライフルで牽制しながら距離を取ろうとするが、それよりも先に接近したカイジにビームライフルを蹴り上げられ、手元から離れる。
「しまっ……!?」
やつのブレードが俺の首元に迫る
「終わりだ。女たらし」
「させねえ!」
俺の足元から影からガロウが飛び出し、ブレードを弾いて割り込む。俺はその隙にバックステップで距離を取りつつ機械剣とライフルを回収。背中に戻し、剣相手に拳で鍔迫り合いしているガロウに感謝する。
「サンキュー、ガロウ!助かった!」
「それよりも星谷!何だコイツのパワーは!?人間のそれを完全に超えてやがる重機並のパワーだぞ!」
「当たり前だ黒条の坊ちゃん!俺の体は機械でできてる、それも仕事用のボディだ!重機なんて生易しいもんじゃねえからなあ!」
その言葉と共にぬるっとした動きでガロウの背後に回り込み、そのまま剣で背中を切り裂いた。
「ぐっ……!甘いのはテメエだァ!!!」
しかし、その刃はガロウの肉を断ち切る直前に止まっていた。ガロウの背中は闇で覆われ、オオカミ、いやフェンリルの時のような硬い鎧に変質していた。
「なっ、こいつ闇で覆って受け止めやがった!」
「その程度の得物で俺が斬られるか!」
ガロウは振り返りつつ、カイジの腹に拳をねじ込み、上へと突き上げ、カイジの体を空中へと持ち上げた。そしてガロウは、左手で右拳を押さえ闇を込めた構えの姿勢を取ってすぐに、突き上げたカイジと同じかそれ以上の高さまで跳躍し
「星谷!追撃行くぞ!」
追撃の合図を出した。
「了解!」
ガロウの呼びかけに、俺は咄嗟に機械剣を構えてガロウ達の方を見据える。空中にいるガロウは右手に凝縮した闇を標準がブレないようにじっと構え、カイジが防御行動を取るよりも先に闇を解き放つ。
「黒条流・一式「撃砕」ッ!!!」
初めて見たガロウの「破壊」以外の一式は、カイジの体を凄まじい速度で吹き飛ばす。そして正確に俺の下へとカイジを運んでいた。カイジは機械剣を構える俺を見たのか、さっきの呼びかけを聞いていたのか、防御姿勢を解かず体を丸め込んでいた。だが、俺は機械剣をしまい込み、代わりに尻尾を生やす。そして、バッティングセンターで放たれた球をバットを打ち込むように体をねじ込んで尻尾を大きくスイングした。
「ぶっ飛べやあ!!」
ヒットしたカイジは近くの遊具へと叩きつけられながら地面を滑り転がる。仕事モードと言う割には俺達の相手じゃなかったというか、妙な手応えだけがこぶ……尻尾に残っていた。ガロウの方に一度目をやるとガロウも同じ感覚のようで、余裕の表情というよりもまだ戦いは終わっていない。まだ気が抜けねえ。そんな感じの表情で砂煙が立つカイジの着地点を見ていた。
「マジか、コイツ……」
そうガロウが言ったのを聞いて、俺もカイジの方を見ると、カイジが服に着いた汚れを払いながら立ち上がっている。
「いやー、まさかこんなにいいコンビネーションプレイをするとは思ってもいなかったなあ。以外と効いたぜ、さっきの攻撃。」
「タフすぎんだろ。」
「タフ?当たり前だ。言ったろ仕事着だって。あの程度の攻撃で、ガタが来るような設計なら自然界で、ここ七区周辺以外のマッド・フォレストじゃハンターなんて勤まりはしねえ!」
カイジが一瞬にして視界から消えたかと思うと、やつは俺達の背後にいた。
「ガキがハンターの夢見るのは結構だが、ここ七区は、一番安全なだけあってちとナマすぎる。理想と現実の差が激しい。お前らがオルキスさんを半分まで削れたのは、オルキスさんの人情有ってだ……ッ!」
ガロウがカイジへと殴りかかる。だが、ガロウのパンチは寸分のところで回避される。
「テメエ……俺達が弱いって言いたいのか!」
ガロウはそのままラッシュを仕掛けるが、これもまた全て避けながらカイジはガロウへと言葉を返す。
「その通りだ。愛する生徒さん相手に本気なんか出せるかよ。死なない程度に加減することすら難しいだろうに……いや、それができての規格外ってやつか。ブラックリスト入りのやつらを始末するなら、秒もかからず塵も残らず一瞬で屠るだろうさッ!」
カイジの重い剣撃がガロウの体を空中へと押し上げそのまま蹴りを放ち、俺の方へと吹き飛ばす。俺は尻尾でガロウを掬い取るようにキャッチする。
「確かにそうかもな。だが、俺達だって負けてねえ……そうだろ星谷!」
「ああ、そうだなガロウ。こいつを捻じ伏せて急いで馬場達と合流する!」
「ほう、なら一度ここらで心を折ってやる。そして、これは俺からの細やかな警告だ。絶望に打ちひしがれたまま敗走することを推奨するッ!」
地響きがする。それも、四方八方から侵攻するように駆動音と共に響いている。
「何の音だ……?まさか、漁夫の利を狙った他校の……!」
「不正解だ。言ったろクソガキ。これは仕事着、他にも仕事着はあんだよ。――「伽藍洞に我が灯火を」!」
俺とガロウを囲むように現れたのは機械だった。それも多種多様なよりどり緑。ショベルカーにロードローラー、ブルドーザーにハーベスターまで。まさに、働く車の勢揃いって感じだった。しかも、見た感じ中に人が乗っていない無人機だ。
「体の倍速化は副次的な能力でしかない。俺のZONEの本質はこれだ。機械を自在に操る能力!キリコちゃんお気にの働く車さん達でお前らをぐちゃぐちゃにしてやる!さあ、掛かれ!」
その合図と共に動いたロードローラーが俺達を押しつぶそうと迫ってくる。俺とガロウは逃げようと反対方向に走るが、そこからはブルドーザーが迫って来ている。
「こいつら、俺達を押しつぶす気か。」
「見てわかること言うじゃねえ!いいか、頭数を減らすためにも、極限まで惹き付けて衝突させるぞ!」
そうは言ってもこのまま惹き付けたところで、横からハーベスターとショベルカーが迫って来ている。となると、俺の役目は……こいつを使うか!
「アーマーシステムコール:イェーガー!着装!」
『ビルドアップ!』
「ガロウ!タイミングはお前に任せるからな!」
「わかった……今だ!」
ガロウの合図と共にイェーガーのブースターを起動。体をアームが届かないぐらいの高さへと持ち上げる。ガロウは遠方の木陰に瞬間影移動で脱出。そして、目標を見失った働く車らは一斉に衝突。ショベルカーとハーベスターは、二台の圧力でぐにゃりと曲がりってペシャンコになっていた。あの中に残っていたと思うと末恐ろしい。
「俺らを押しつぶすつもりだったみたいだが、どうやら、お前の目論見は外れたようだなカイジ!」
安全圏で俺達のことを見ていたカイジに向かって言い放つ。
「誰が、お前らを押しつぶすと言った。これは前座だ。その程度避けてもらわないと、せっかく連れてきたコイツらの出番が無くなっちまうだろ……?」
そう言ってカイジが指を鳴らせば、奥からさらに二台の車……いや、戦車が這い出てきた。そいつらは、カイジの左右に並ぶとその砲台をこちらに向けてきた。完全にこっちを狙っている。
「テーッ!!」
一度でも当たれば体が吹っ飛ぶかもしれない砲撃が空中にいる俺を襲う。だが、ガイアのサポートがあってか、避けること自体はできている。それでも、劣勢な事には変わりない。地上に降り立とうとすれば、残ったロードローラーとブルドーザーが襲い掛かってきて、行きつく暇さえ与えてこない。
「ちっ、コイツら何度打ち込んでも止まりゃしねえ!」
ガロウが二台に何度も拳を打ち込んで、その外装を破壊し内部が露出させているにも関わらず、二台は止まらない。空中からレーザーを打ち込んでも見たが、それでも止まらずガロウを追い掛け回している。
ここでこいつらを惹き付けないと、馬場達の方にも被害が出る。かと言って、現状の俺達ではあいつを突破する手段が見えてこない。考えれば考えるほどこの状況が積みに近いということだけが頭の中を巡っていく。
「どうする星谷。このままだとジリ貧だ。いっそのこと、馬場達と合流し一般人を外に出すか?」
『私からも、それを推奨しよう。君達二人では現状の突破は困難だ。一度立て直す必要がある。』
「ガロウ、こいつのことは一旦無視だ!馬場達との合流を優先する……!」
カイジ君の必殺技「伽藍洞に我が灯火を」は、機械を無理やり動かしているので壊れていても動きます。あと、機械を操る能力なら鎧亜アーマー・イェーガーのブースターもいじれてしまうのでは?と考えるだろうが、チクタクマンは原典でも自ら製作した機械は依り代として扱えないため、いじることはできません。
カイジ君の働く車を参考にキリコちゃんはカラクリ変形を行っているので、カイジ君は実質キリコちゃんの師匠です。カイジがキリコちゃんカワイイイヨ!!!!!してるのにはそれとは別の理由があります。




