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神獣キメラの育成日記 ~転生時のお願いを、神様が誤解しているようです~  作者: ARATA


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第31話 襲撃と迎撃

 アルは向かって来た鬼クワガタをギリギリで()け、飛んで行こうとする足を両手で(つか)んだ。ガクッと高度を下げたクワガタだったが、アルを引きずりそのまま飛ぼうとする。


 

 「今だ! ルウト、コロ!!」


 「うん!」


 「プーーッ!」



 コロは低空飛行している鬼クワガタに向かって大きく跳躍し、足に噛みついた。さすがにコロとアルをぶら下げて飛べないため、地面に落ちてくる。


 コロが足の一本を喰いちぎって離れ、アルも手を離すと散々な目にあった鬼クワガタは夜の空へと消えていった。



 「やった……」



 アルが疲れたと言って、その場に座り込む。



 「取り合えず全部追い払えたようね、学院まで急ぎましょう!」


 「おいおい、何か言うことないのかよ?」


 「ハイハイ、あんたのおかげで追い払えました。ありがとう。これでいい?」


 「何か棒読みに聞こえるが……まあ、いいか」



 アルが、(ひざ)の泥を払いながら立ち上がる。その横でコロがボリボリと、お菓子を食べるように鬼クワガタの足を食べていた。



 「さあ、行きましょうか」


 「うん、学院まで、もう一頑張りだね」



 僕たちがその場を立ち去ろうとした時、草むらが(かす)かに揺れた。アルとコロが反応する。



 「何かいるぞ!」


 「プーッ!!」



 緊張感が一気に高まり、全員の視線が揺れている草むらに注がれる。静かに、そしてゆっくりとその獣たちは姿を現す。



 「ダイアウルフ!!」



 パメラが大きな声で叫ぶ。それは正真正銘の“魔獣”だった。



 ◇◇◇



 クレティアス学院、校門の前には次々と集まってくる避難者を受け入れる学院長のスノウと、生物学担当のアモンズ、そして数人の職員の姿があった。



 「おお、よくぞ無事で、さぁさぁ、学院の中は安全じゃ。心配せず、ゆっくり休みなさい」



 スノウは疲れた様子で避難してくる住民一人一人に声をかけていた。


 犠牲者が出なければいいが、と考えたスノウの隣で、大きな体をそわそわと動かしているアモンズがいた。



 「先生、この街どうなるんだが? オラ心配で仕方がね」


 「大丈夫じゃ、トリーヤたち騎士団が魔獣の討伐に出たからのう。朝まで持ちこたえることが出来れば何とかなるじゃろう」



 その言葉は単なる楽観ではなく、トリーヤに対する信頼の(あらわ)れだった。そんな中、住宅街を抜ける道から一人の女性が走ってくるのが見える。



 「もう大丈夫じゃ、そんなに慌てんでも、ここまで走れば魔獣は追ってこんよ」



 息も絶え絶えでやって来た女性は、校門の前で息を整える。



 「ハァ…せ……ハァ…先生……ハァ、息子が…子供たちが……」


 「落ち着きなさい、どうしたんじゃ?」


 「市街地の入り口……開けた林道で……魔獣に襲われたんです。子供たちが(おとり)になって、私たちを逃がしてくれたんです……すぐに助けを……」



 ルウトの母は言葉を絞り出すように説明した。彼女にとって幸運だったのは、助けを求めたのがスノウ、その人だったことだ。



 「分かった。後はワシ等に任せて、あなたは中へ入りなさい」



 スノウは女性を職員に預け、すぐ近くにいたアモンズに声を掛ける。



 「聞いておったなアモンズ、すぐに出るぞ!」


 「はい、学院長、任せでけ」



 アモンズは校舎に向かって指笛を吹く。遠くまで聞こえるような、よく響く口笛だ。すると(わず)かに地面が揺れ始める。


 ドタドタと音が聞こえ、その音はどんどん大きくなった。


 スノウたちがいる校門前に現れたのは二体の魔獣、馬よりも巨大で前足は短く、後ろ足が発達し、ワニに似た尻尾がある恐竜のような姿。


 スノウとアモンズは二体の魔獣に(またが)った。



 「こいづらの方が馬より速ぇはんでね!」


 「行くぞ!」



 二人は二足歩行の魔獣カルノタウルスに乗って、子供たちのいる郊外の林道へと爆走した。



 ◇◇◇



 「トリーヤ様! 想像以上の数です。このままでは戦線が持ちません。一旦引きますか?」


 「ダメだ! 我々が引けば、この魔獣たちが街に雪崩れ込んでしまう。何としても食い止めるんだ!!」



 トリーヤやライカたち聖十字騎士団は、街の外から回り込んだ部隊と、街を突っ切って東に出た部隊が合流し、総勢五千の兵力で魔獣を迎え撃っていた。


 鎧を纏った屈強な騎士たちが前線で熊や狼の魔獣を薙ぎ払い、後ろで待機していた“魔導士”が炎や氷の魔法で援護する。


 傷を負った兵士には“法術士”が回復魔法をかけ、遠距離からは弓兵が何十何百と矢を放つ。


 しかし辺りは暗くなり視界が悪い上、襲ってくる魔獣も百や二百ではない。


 国王軍に匹敵すると言われる聖十字騎士団であったが、ガリアの森の奥からやって来た強力な魔獣を相手に怪我人が続出していた。



 「ダメです! 多くの魔獣が街に入ったようです。止められません」


 「くっ!」



 騎士団長のライカの言葉に、トリーヤは苦悶の表情を浮かべる。



 「これ以上の侵入を許せば、街は大混乱になる。何とか押し返すんだ!」


 「しかし、このままでは……」



 トリーヤが危惧していたのは、目の前にいる多くの魔獣だけではない。森の奥、一際(ひときわ)おぞましい気配を放つ()()()()()



 「あれは……まさか――」



 ◇◇◇



 「ちょっと待って、いっぱい出て来るよ!」



 目の前には、ダイアウルフ、血舐め熊、一角ウサギなどガイアの森にいる魔獣が居並んでいた。僕は恐怖のあまり一歩後ろに下がる。



 「こんなに街に入って来るなんて」



 いつも強気なパメラでさえ、腰が引け後ずさっていた。



 「おい! 上にも何かいるぞ!」



 アルに言われて見上げてると、暗い空に何かが(うごめ)いている。パメラが杖を(かか)げ光を向けると、一瞬その姿を捉えた。



 「ガーゴイル!?」



 灰色の体、鋭利な爪、何より目を引く大きな翼。


 ガイアの森の奥“深淵の谷”にいると言われている魔獣……そんなものが、こんな所にまで……。



 「コレはさすがにヤバいんじゃないか!? 早く逃げようぜ!」


 「逃げるって、どこに逃げるのよ!?」



 僕たちは、すでに魔獣に囲まれていた。突破しなければ、どこにも逃げることは出来ない。



 「僕とコロが前に出るよ」


 「ルウト! 大丈夫なのか!?」



 心配してくれるアルに「任せて」と伝え、僕はガラスの板を出現させる。画面には、鬼クワガタの能力表示があった。


 さっきコロが足を食べたことで、能力を獲得したんだ。



 「鬼クワガタの能力は【飛E】と【速E】か……」



 ぶっつけ本番だけど、使ってみるしかない。


 僕は今まで使っていた【火F】と【速F】を画面の左下に戻し、新しく【刃D】【硬E】【飛E】【速E】【力E】の五つの能力を画面の右上へと移動させた。


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