表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神獣キメラの育成日記 ~転生時のお願いを、神様が誤解しているようです~  作者: ARATA


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/43

第24話 コロと聖獣

 ガチャリと頑丈な鉄の扉が開く。


 

 「おい! 飯を持ってきてやったぞ、少しはありがたく……」



 コロの世話を任されている男が、いつものように食事を運んできた。だが目の前の光景を見て血の気が引いていく。


 檻には穴が空き、捕らえていた“魔獣”はどこにもいない。



 「おいおいおい、嘘だろ!!」



 男は持ってきた(えさ)を盛大に放り投げ、慌てて(おり)をどかす。(ゆか)には穴が空いており、下の階まで貫通している。



 「た、大変だ!」



 男は部屋を飛び出し、廊下を走って上の階へと報告しに行く。逃げ出した魔獣が()()()に行ったことが、より事態を深刻にしていた。



 ◇◇◇



 「何かおかしいわ」



 僕たちの先頭を歩いていたパメラが、手を軽く上げて動きを止める。見ると警備の人や、お手伝いさんが慌ただしく駆け回っていた。



 「何だろう? 何かあったのかな」


 「分からないわ。でも、この状況良くない気がする」



 僕たちの後ろからも、人の声が聞こえてきた。



 「おい! 誰か倒れてるぞ。どうしたんだ?」


 「眠ってるみたいだ、全然起きない」



 パメラが眠らせた警備の人だ。僕はそう思い、パメラも(うなず)く。アルが「どうする?」と聞いてきたのでパメラは逡巡(しゅんじゅん)する。だが、すぐに答えを出した。



 「今回は諦めましょう、このままじゃ私たちも全員捕まるわ」



 コロを連れて帰れないのは残念だけど、二人をこれ以上危険な目に()わせる訳にはいかない。僕は(うなず)き、アルの変身を解く。


 警備の人たちは、こちらではなく別の場所に向かったようだ。


 何が起きているか分からなかったが、この(すき)に屋敷から出ることにした。ごめんね、コロ……。



 ◇◇◇



 コロは()()()()()と向き合う。嫌な感じは、まったくしなかった。暖かくて力強い光……でも、どこか弱々しさも感じる。


 大きな獣は、じっとコロを見つめ、その口を開く。



 『()が名はアグリロートス……神が付けた名だ。もっとも人間の中には、(われ)を”深緑の隠者”と呼ぶ者もいるが……』


 「プゥ?」



 コロはアグリロートスの言葉が理解できない。ただ相手に敵意がないことだけは理解していた。



 『人の言葉は分からぬか……だが、其方(そなた)からは不思議な“気”を感じる。魔獣でも聖獣でも、まして普通の動物でもない』



 アグリロートスは、しばし考え込む数百年生きた自分が知らない生き物。思い悩んだが一つの結論を導き出す。



 『生の終焉を迎えつつある(われ)の前に現れたのなら、其方(そなた)は神よりの御使(みつか)いと考えるべきか……()が力を継承する資格を持つ者……』


 「プープー」



 コロは、この大きい鹿に好意を持ち、遊んでもらおうと近づく。



 『フフフ……今は分からんだろう。だが(われ)の力が無くなれば世界の均衡が崩れ、混沌の時代が始まってしまう』



 鹿の足に頭をスリスリと(こす)り付け、コロはじゃれだした。



 『……元気な子だ。それに対し、(われ)の命は長くない』


 「プゥプー?」



 聖獣にはそれが「どうしてー?」っと言っているように聞こえた。あるいは気のせいだったのかもしれないが、コロに向かって話始める。



 『(われ)の力は日々弱まっている……人間が山を開き、森を伐採し、川を汚す。それは少しづつ(われ)の力を()いでいった』



 コロは、この大きな鹿が自分に何か伝えようとしているのだと感じ、その場にチョコンっと座り、鹿の顔を見上げる。


 アグリロートスもまた、コロを見つめ自分の最後の言葉を語りだす。



 『(われ)は人間の手によって、ここに連れてこられた。大地と切り離されては、生きていくことは出来ぬ』


 「プーププー?」



 コロは何となく大きな鹿の言いたいことを理解したため、「何とかならないの?」と聞いてみる。



 『フフフ、やはり其方(そなた)は面白いな。意思の疎通が出来るように感じる。長い時の中で(われ)と心を通わせたのは一部の人間だけだったが、最後に其方に出会えたのは、やはり神の導きか……』

 


 アグリロートスの体から漏れ出す淡い光が、細かい粒子となって、上へ上へと昇っていく。



 「プーー!?」


 『神の御使(みつか)いよ……最後に其方(そなた)に出会えたのは、我にとって僥倖(ぎょうこう)だった。其方に(われ)の思いを……力を託そう。さらばだ……』



 そう言い残し、聖獣アグリロートスは光の粒子となって消えていった。



 「プーー!」



 コロは無性に寂しくなり、力一杯の鳴き声を上げる。部屋は一気に暗くなり、コロはここが地下であることを思い出す。


 真暗な部屋を出ようと思った時、何か光る物があることに気づく。


 それは、さっきまで大きな鹿がいた場所で輝いている。


 コロは「何だろう?」と思い、淡く光っている物の所まで小走りで進む。そこにあったのは一つの“石”だ。


 以前食べたことのある黒い石のように、おいしそうに見える。だけどもっと大きくて、透き通った綺麗な色をしていた。


 コロは石に近づき、臭いを嗅いだり、なめたりして観察していたが、結局ガマンできずパクリと食べてしまう。


 ゴクンと飲み込むと、とても幸せな気持ちになった。


 「すごく、おいしい石!」コロは以前食べた黒い石より、遥かにおいしいことに驚いた。不思議なのは体の中に、あの鹿の淡い光を感じることだ。


 コロは嬉しくなり真暗な中、その場を駆けまわる。


 テンションが上がっていた時、扉の向こうから人の声が聞こえてきたので、コロは慌てて暗がりに隠れた。



 「おい! 扉が壊れてるぞ!!」


 「マジか!」



 数人の男たちがギィと鳴る扉を無理矢理開き、慌ただしく入ってくる。



 「何にも見えない、誰か(あか)りを持って来い!」



 男たちは大騒ぎで(あか)りを用意し、こぞって奥へと入っていく。


 コロはチャンスだと感じ、扉の外へ飛び出すと一目散(いちもくさん)に駆け出し、上の階に続く階段を昇っていった。

 


 ◇◇◇



 僕たちは屋敷の正門から外に抜け出すことが出来た。正門の鍵は外から掛けることが出来ないけど、今は逃げる方が先決だ。



 「誰も追って来ないわね、今のうちに帰りましょう」


 「うん」



 僕たちが屋敷から離れようとした時、何か行っちゃいけないような気がして足を止めた。僕は振り返って屋敷を見る。



 「どうしたの、ルウト?」


 「何かあるのか?」



 パメラとアルが心配して聞いてきた。だけど僕にもよく分からない。何かに呼ばれたような、不思議な感覚がある。


 僕は屋敷を囲う鉄柵に近づき、目を()らして中を見た。


 パメラとアルも僕の隣に立ち、同じように柵の中を(うかが)う。すると暗がりの向こうから何かが来る。



 「プーーッ!」


 「コロ!!」



 コロがこっちに向かって走って来る。逃げて来たんだ。



 「俺が正門から周り込んで連れて来る!」



 アルが駆けだそうとした時、パメラが止めた。



 「待って! 後ろから追いかけられてる!!」



 見ればコロの後ろに警備の人や、使用人の男性が全力で走って来ている。アルが正門から入れば、彼らに捕まってしまう。


 だけどこの鉄柵を乗り越えることも出来ない。



 「ど、どうすんだ! このままじゃコロが捕まるぞ!!」


 「ちょ、ちょっと待って、今考えるから!」



 パメラの魔法でもどうにもならないようだ……それなら、僕はガラスの板を取り出して、コロの画像を開いた。



 「どうする気なの? ルウト」


 「コロ自身に鉄柵を超えてもらうしかない!」



 僕はコロの画像の下にある【飛F】の文字を右上に移動させる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ