6、母親のありがたみを知れ
ミケの泣き声が遠くで聞こえ、意識が覚醒する。
「・・・・・・くそぅ。・・・寝た、ばっかなのにぃ…、どうした?乳か?」
ミケを抱き上げながら座り込む。
どれほど寝たのか分からない。
思ったより深く寝ていたようだ。
少しずつ頭が起きてくる。寝不足の頭は起動に時間がかかり過ぎる。
「あー、うんちか?起きてすぐにご苦労なこって。」
微かに匂う。赤ん坊なのでまだ臭いと言うほどでもないが。
「オムツ、どこにしまってたかなぁ…ベッドの下?だっけ?」
まわりを見渡すと白い世界が広がっている。
「あー、そうだった。めんどくせぇな、おい。・・・・・・えと、オムツセットプリーズです…よっと。」
地面らしきところに手を突っ込み、探る。ビニールの感覚に手を伸ばし、掴み引っ張り出す。小さなビニール袋の中にはオムツとお尻拭きようのウェットティッシュ、お尻の下にひくシートが入っている。
「これは慣れたなぁ〜。他のは練習もまだなのに。」
なにせ、1時間に1回は何かしらを取り出す必要があるので、嫌が応にも上達していく。
今では意識しなくとも使えるまでになった。便利だが悲しい。
「ぅうーかぁああぁあぁ…」
「わぁ、お化け屋敷でバイトしてきたら?素晴らしい声よ?」
後ろからミズが話し掛けるがそれどころではない。
娘のお尻をしっかり拭くのに精一杯だ。
「はい、完成。・・・えぇ、寝るんですか。マジですか。お母さん、眠たいなか起きたんですが。・・・あー!はい!寝るんですね!?おやすみなさい!」
大きな欠伸をしたかと思うと胸に目元を擦り付けるように頭を振る。自分で目を掻けないからなのだろうが、服に鼻水がつく。
もう慣れたなぁと思いながら背中を軽く叩き、寝かしつける。
だんだんと腕が下がっていき、力が抜ける。だが、ここで気を抜いてはいけない。深い眠りにおちるのを待つ。
そのうち、すぴーすぴーとかわいらしい寝息が聞こえてくる。
(よし、今日も勝った!)
心の中でガッツポーズをしながら何枚か重ねたバスタオルの上にミケをよこたわらせる。
寝顔を確認してから、肩の力を抜く。
寝かしつけるだけでもひどく緊張し、疲れる。
「もう1回寝ていいよね…」
後ろに倒れ横向きに転がる。
何もしなくても寝れそうだ。
「あー、ウカ?あらかた、まとめ終わったんだが?」
「後で見る。おやすみ。」
静かに時は流れていく。




