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17、みたくないものしりたいこと
鏡面の揺らぎが収まっていく。薄い氷がはっていくように、鏡面が滑らかに固まっていく。
色、形、少しずつ鮮明に何かを写し始める。
写ったのは娘と戯れている自分だ。
楽しそうにしているのを見ると会話が気になる。
(なんて話しているんだろう…)
その思いに反応したかのように少しずつ声が聞こえてくる。
なんてことはない、日常の会話だった。いや、娘はまだ生まれてしばらくしかたっていないので一方的に話し掛けているだけだが。
それだけなのに幸せそうに見えるのだから不思議だ。
何がそんなにたのしいのだか。
「・・・・・・もういい。」
もう一度、鏡面に触れながら言うと、固まっていた鏡面が揺らめき始め、元の状態へと戻る。
「他のご家族を見られなくてよろしいのですか?」
おせつが首を傾げながらたずねるが答えない。いや、答えられない。
頭の上に何かが乗る。おそらくは、ミズの手だろう。
「おせつ。」
「はいな♪」
「少し、放っておいてやってくれ。」
「・・・・・・・・・?・・・・・・了解いたしました。御前から失礼させていただきます。お呼びになられればすぐに戻りますゆえ。」
「ありがとな。」
ミズとおせつの会話が聞こえるが、何の反応を返すことも出来なかった。




