16、わたせのかがみ出現!
イメージはそれとなく固まった。
このイメージを言葉にのせる。
「・・・・・・出てこい、渡世の鏡。」
何もないはずの足下から水が盛り上がってくる。
その高さは自分の身長の3倍以上あり、失敗したか、と見ていると盛り上がってきた水が絡まり、ねじられ、うねる。そうして、一瞬ふくれたかとおもうと一枚の姿見が現れた。
「これが渡世の鏡か?」
ミズが指先でつつきながら聞いてくる。
そんなこと、自分には分からない上に、答える義理もないのでほおっておく。
「・・・・・・綺麗だね。」
鏡に顔を向けたまま呟く。
現れた姿見は透明だった。
形はおせつの言っていた通り、楕円なのだが、出てきた鏡は湖の水面のように不規則に揺れていた。
鏡面が、水が光に反射したかのようにさまざまな輝きをみせる。
みたことはないが、どんな宝石よりも美しくのでは、と思える。
「渡世の鏡は能力者の奥の奥にある本質を形どります☆」
おせつが腕をパタパタ動かしながら言う。
「そうなんだ…?」
初耳だ。だが、果たしてそれはわざとなのか…ただ忘れただけなのか…
「はい♪ご主人様の鏡はとても美しく、静かであられますね☆」
「美しい……?」
もう一度、鏡に目を向けて見る。
「ボクは薄っぺらに見えるけど。」
確かに、綺麗でいつまでも見ていたくはなるが、揺らぎ続ける様からは存在の不確かさを感じる。
これが自分の本質だと言われると少し疑問を覚える。
だが、何処かでふにおちている自分がいる。ひどい嫌悪感と共に。
「まあ、いいや。で?これ、どうやって使うの?」
「鏡面に触れ、見たいものを思えば後は勝手に鏡がします☆」
ふーん、と言いながら、鏡面に指先で触れる。意外にも水を連想させる鏡は暖かかった。
すると指先を中心とした波紋が広がる。
「芸が細かいな。」
後は、見たいものを指定するだけだ。
(んじゃま、あちらのあたしとミケを。)




