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Ep5「宮廷は狼狽した」

「ライズリーヴィス クルセビナまで君の術式が持つだろうか?」


「あまり私を舐めるなよ。 でも、それの放つ魔力が強すぎる あと何十日とは持たないだろう。 もういっそここで手放してくれるとありがたいんだが。」


ライズリーヴィスは呆れたように苦笑いした。


「それでは意味がなくなってしまうよ。 もう少し頑張ってくれ。」





アレイはゆっくりと目覚めた。

今日の夢は解像度が高かったように感じたが、アレイの記憶にあのような様子は

存在しない。


『どうした アレイ? あまり顔色が良くないように見える。』


変な夢を見てね ライズリーヴィスという女性の声が聞こえた。


『なるほど。 それは私の記憶の断片だ 魂を受け入れる事で夢が共有されるとは、私も知らない情報だな。 そんな事を試せる人間は、この世界にはいないだろうけど。』




ルシファーの 記憶か...。




そういえば、あの事件はどうやって処理されるんだろう。

昨日 あんなことがあって、学院から何の説明も無い訳は無いと思うんだけど。


『恐らく、宮廷魔法協会で大きな議題となっているはずだ。 会議の内容次第では、学院に何かしらの目を付けられるかもしれない。』


バレないよね...


『まぁ 多分』

ルシファーからはやりすぎてしまった という感じの雰囲気が溢れている。


それじゃ困るよ! エルメナスは絶対詳しく話すだろうしな.. バレませんように。








宮廷魔法協会本部 大会議堂


「星狩人《アストロ・ノヴァ》の皆さま 本日はお越しいただき誠にありがとうございます。」


お城のように立派な建物の開けた空間には、長い机が置かれ

4つの立派な椅子が並べられ 4人の魔法使いが腰かけていた。

シャンデリアは部屋を照らし 会場は重く苦しい雰囲気に包まれている。


実に15年ぶりの 宮廷四冠魔法使い 星狩人の緊急招集である。

人間界で最強の魔法使いと言われる4人 椅子にただ座っているだけでも、魔法官が少し怯む程の存在感である。



「前置きは良い グレーテル。 さっそく本題に入ってくれ。 詳細な調査は、もう済ませてあるんだろう?」


彼岸の魔法使い エリクサンド・ハイデルベーレンは真剣な眼差しを向けて

調査魔法官に要求した。

少しの上目使いが、余計なストレスを生む。



「かしこまりましたエリクサンド様。 では本件の説明を致します。


場所はクルセビナ魔学術資料館です。 この日、ラビアメール魔法学院の生徒の皆様が見学にいらっしゃっておりました。

見学開始から約1時間後 レベル6を超す魔力量の転送陣の発生を検知しました。


我々魔法官が事態を聞きつけ、急行したところ

眠った少年が2名 破壊済みの魔族の核 そして恐ろしい魔力の残滓だけが残されていました。」



「難解な ミステリーみたい。」

伽藍の魔法使い フリージア・アルメナシスはボソッと呟いた。



「それで その魔族の核の調査は終わってんだろ? いったいどれほどの魔族だったんだ?」

虚勢を張るように議題に入ってきたのは 盤外の魔法使い アレグレット・イーシュエン。


「アレグレット ちょっと静かにしてくれないかな?」

フリージアは可愛らしい声で アレグレットをいなした。


アレグレットはあまり気にしていない様だったが、一応席に着いた。



「はい 魔族の核を解析したところ、該当の魔族は650年は生きていたことが判明致しました。」



議会の雰囲気は一気に重くなった。



「650年!? おいそりゃ本当なのか?  魔王の側近として常駐しているような

連中だぞ それは。」

アレグレットの威勢は大きくなった。


「落ち着けアレグレット。 とはいえ650年となると、もうただ事では済まされないな。」

次にアレグレットをいなしたのはエリクサンドだった。


「その等級の魔族を人界に送るとなれば 単純計算でも消耗する魔力量は計り知れない。魔王はそのデメリットを差し置いてまで、その魔族を転送させた。」

千世界の魔法使い シリカ・ヴェルソートは冷静に事を分析していた。



「それより不可解な事がある。 650年も生きた魔族が死んだという点だ。

しかも、我々星影人はおろか その場所には魔法官も到着していなかった。

魔族が自殺などありえない。 一体何が起こっていたんだ。」

魔法協会で最も頭がキレると噂される エリクサンドもあまり状況を掴めていない。



「グレーテル そこには2人の少年がいたんですよね。 じゃあその2人の話を聞かせてもらえませんか?」


フリージアは落ち着いて質問した。

650年生きた魔族に衝撃を受けた一同は、すっかり その他のヒントを忘れていた。




「はいフリージア様。 眠っていた少年はラビアメール学院の生徒

エルメナス・オリシウスさんと ヴェレア・アルノーバさんです。


何でも、レベル6等級であれば自分達でも太刀打ちできるものと思い。

避難をしなかったようです。」



「嫌いじゃないぜ そいつら。」


アレグレットの発言に 水をさすようにエリクサンドは コホンと咳払いした。


「オリシウス...飛火の魔法を継ぐ家系か。 にしても、調子に乗りすぎだ。」




「実際に魔族と共に転移した 魔獣1体はエルメナスさんが討伐したそうですが、

その後に現れた魔族には手も足も出ず ヴェレアさんの死を目の前で見届けたようです。」



「そのヴェレアは 最後眠った状態で発見されているはず。じゃあ 何故エルメナスは死を見届けたと言っているの?」


「シリカ様 それは、本人でも良く分かっていないそうなのです。

謎の人物と魔族が戦いを繰り広げ 謎の人物の大規模術式で視界が遮られてからの

記憶が無い とのことです。

しかし、確かに魔族がヴェレアさんの頭をもぎ取っている様子を見たと。」



謎の人物 これは一体 何者か


「グレーテル その謎の人物について、エルメナスは何か覚えていないのか?」

650年も生きた魔族の討伐 死んだはずの人間の復活 おかしい話ばかりだ。


「はい、男性のような気がする とだけで。 本人については何も認識出来ていませんでした。」




「認識阻害」 フリージアはまたもボソッと呟いた。


このバトンは確かにエリクサンドに渡された。 どうやら閃いた様子だ。



「認識阻害のローブ 古代文明の神秘道具《ユニークアイテム》だ。 確かあの資料館に封印保存されていただろう グレーテル。」


「直ぐに確認させます。 可能性を考慮出来ておらず申し訳ございません。」




少しして 資料館に駆け付けた魔法官から知らせが届いた。


「認識阻害のローブが、資料館から消失しています。 しかも、封印結界は解かれていません。」



「これで決まった。 本件は最重要手配事項に記録する。

この世に大魔女ニーレンベルギアの結界封印魔法を破らずに突破する者などそういない。

650年生きた魔族の突然の転送と討伐 死者の奇妙な復活と合わせても見過ごせる内容ではない。」



「千世界の魔法使い シリカ それを承認する。」


「伽藍の魔法使い フリージア それを承認しましょう。」


「盤外の魔法使い アレグレット 承認する。」


「彼岸の魔法使い エリクサンドの元に締結する。 各国への報告を頼むリーヴィアス。 資料館は封鎖だ、我々も直に調査する。

魔王は今回の転送で魔力を大半消費したはずだ、この機に本件の調査に乗り込む。」



「その謎の人物に 名前がいるんじゃねぇか?」


「そうだな... では 死神《オルクス》とでもしておこう。」









ラビアメール学院



『アレイ...』


どうした。


『あの 漫画やアニメとはいったいなんだ。 めちゃくちゃ面白いじゃないか。』


僕の記憶から見てるの?

面白いでしょ 僕の世界の娯楽の最たる例は 漫画とアニメとゲームだからね。


気に入ったのはあった?



『この「転生したらビーフシチューだった件」とか「センブリ茶・フロンティア」とかが好き。』


あはは ルシファーはファンタジーが好きなんだ。


『ファンタジー?』


僕の世界では考えられない 人の創造の中で作られた仮想的な世界を舞台にした

物語だよ。 

まぁ、僕はこうやって転生してくるまで 本当にあるとは思っていなかったけど。


『まぁ、こちらからすれば この作品の設定は確かに現実世界に近いな。』


この世界には 前の世界のような娯楽が少ないからね。

僕も、自分の記憶を見返したいものだよ。 



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