Ep6「ルシファー先生の特訓」
学院の授業を終えて、アレイは自由戦闘訓練場にやってきていた。
資料館の件については、まだ詳しい事を話してもらえなかったが
宮廷魔法協会が動き出したという事はなんとなく察しがついた。
『まず次の目標を伝える。 その為に、アレイの魔法特訓をやっていく。』
天使武器かな
『そう 天使武器が1つ 堕天使「アスモデウス」を奪取する。』
アスモデウス...何故 何より先にその天使武器を奪取したいんだい?
『良い質問だ。それは「アスモデウス」の固有術式にある。
アレイ 魔法を行使するうえで必要不可欠なものはなんだ?』
それは...魔力と術式 かな。
『正解だ。 特に魔力というエネルギーが無ければ何も出力できない。
攻撃はおろか防御もままならないことになる。
そして問題なのは、天使と人間では魔力量に格差がありすぎることだ。
そこを「アスモデウス」の術式で埋める。』
つまり、僕ら人間では 昨日のルシファーのような戦闘は 物理的に出来ない。
しかし、「アスモデウス」を手に入れれば 魔力に困らなくなり、僕は研鑽次第で
ルシファーと同等の戦闘が出来るようになると。
『そうだね。 「アスモデウス」の固有術式 「完全運命奪取」が役に立つはずだ。』
それで、その天使武器「アスモデウス」はどこにあるの?
『エクセビア ルナ・ビーカ宮殿の地下施設だ。 ちょうど、このラビアメール学院はエクセビアに位置するから 国をまたぐ必要も無い。』
ルナ・ビーカ宮殿 か... 宮廷魔法協会に比べればまだ警備は弱いだろうけど...。
絶対 奇界騎士団と出くわすよ。
あんな国の重要施設に 守衛がいない訳は無いだろうから。
※奇界騎士団
エクセビア国に常駐する騎士団 宮廷魔法協会と連携し、魔族の討伐や施設の護衛
国の重要なイベントを取り仕切っている。
『だから、今から最低限の魔力で 奇界騎士団に対抗する術を身に着けてもらう。
私たちの目標は「アスモデウス」であって、奇界騎士の討伐ではない。
アレイは怪盗を演じるだけだ。』
『前にも話したが、魔法とは「想像」の世界だ。例えば アレイは全ての属性術式を扱って戦闘する姿を想像できるか?」
この世界では 1つの属性魔法を極める事が普通。
複数の属性魔法を扱うというのは 想像しにくいかな。
『しかし、私は全属性の魔法術式を 自分の術式に編み込むことで戦闘を行うだろう。 何故なら、この世界の属性という概念は 人間が思う以上にポテンシャルを秘めているからだ。』
でも、現状 概念系の魔法術式が流行りだよね
フリージア様の「伽藍の魔法」 や アレグレット様の「盤外の魔法」
は 属性魔法から派生した概念系魔法な訳だし。
『昔の星狩人は皆 属性魔法の使い手だった。 何かしらの流行がその流れを打ち切ったのだろう。 色々説明が難しいから とりあえず 特訓だ特訓。』
ルシファーはこんがらがってきたので とりあえず特訓する事にした。
決して作者が面倒くさがったからではない。
『アレイが魔法を上手く扱えないのは 多分魔力の流れを理解できていないからだ。』
そんなの 学校で習って無いんだけど
『この世界の人間は 赤子から成人するまでの間で自然に魔力の流れを理解していく。 転生者であれば、いわゆるギフトによってその感覚は刻まれる。
でもアレイはギフトを得られなかったから その感覚を理解出来ていないんだ。』
普通の人や 普通の転生者が持っている感覚 を僕は理解できていない。
それって、この世界に来た時から詰んでたんじゃ。
アレイは苦笑いとともに 今までの努力が無駄だったことを自覚した。
『まぁ 少なくとも今は詰んでいない。私が教える。』
『時間が惜しいから 私たちにしか出来ない裏技で一気に習得する。』
裏技? そんなのあったっけ
『資料館で魔族と戦った時、 私はアレイの体を完全に使用した。あれを「全降臨」
といって 言い方はあれだがアレイの体を完全に乗っ取っている状態だ。
そして今から利用するのは「半身半臨」 1つの体を2人で共有するもの。
少しクラッとするかもしれないが、耐えて。』
瞬間、アレイの視線はぼやけ 軽い眩暈の症状が出た後
1つの体は アレイとルシファーで共有している状態となった。
左目だけが 紫色の瞳に変化している。
『自分の意思に反して体が動いてしまうから 最初は慣れないと思うけど。
私が教えたいことは魔力の感覚を掴んでもらうことだから アレイはリラックスしていれば大丈夫。』
分かった
『じゃあまずは体内に流れる魔力の流れを感じ取って貰おう。』
ルシファーは胸に手をあてて 静かに目を瞑った。
体内が少しづつ暖かくなっている
『さぁ もう見えるはずだ。』
ルシファーがそう言い放った瞬間 目を瞑った暗い世界に金色の粒子が大量に
舞い始めた。
最初は様々に飛んでいた粒子は やがて血液のように規則性を持って流れ
手を当てた胸のあたりで渦巻いて やがてまた送り出される。
これが 魔力?
まるで 血液のように体内を循環してる。 そして、少しづつその流れが速くなってる気がする。
手をあてている場所で渦巻く粒子も、次第に多くなっているような。
『そうこれが魔力であって これが魔力を練るという感覚だ。』
魔力を練る?
『体内の魔力を循環させることで 魔力は増幅する。 私は今、手を当てている場所
を起点に魔力を練っている。 だから、少しづつ流れは速くなり 多くの魔力が渦巻いている訳だ。』
なるほど 魔力の流れを知覚できていれば 確かに自然と出来そうな気はする。
『そう これは皆が当たり前のように行える行為だ。 次にこの練った魔力を
出力段階に移行する。』
ルシファーはゆっくりと目を開き 魔力を練ったいた手の平を
前へと突き出した。
「火属性初級魔法 火球」
掌には1つの魔法陣が出現し 火の球が高速で打ち放たれた。
大きな岩の壁にあたった 火の球は轟音とともに岩を貫き、内側で爆発し
岩は粉々になった。
ルシファー 今のは初級魔法だよね。 僕の知っている初級魔法は、あの岩を砕けないんだけど。
『魔力を練る練習を繰り返し 至高の魔力充填を極めれば、初級魔法でもこの威力が出る。 アレイが魔法をろくに扱えなかったのは術式の知識が足りていなかった訳じゃない エネルギーの装填が十分じゃなかっただけだ。』
魔力を練るか 僕も試してみても良い?
『もちろん』
次はルシファーがリラックスモードに入った。
アレイは自分の胸に手を当てて 魔力の流れを意識した。
しかし、中々先ほどの 体の中で魔力の渦が出来る感覚が生まれない。
難しい まるで魔力が全身に拡散して 上手く流れてくれないみたい。
『落ち着いて、力まず脱力 魔力は血液だ。体を循環して 君の胸へと帰って来る。』
アレイは少し力を抜き、血液の循環を意識した。
体は少しづつ暖かくなってきた 先ほど金の粒子が全身を巡った感覚が蘇って来る。
粒子は見えないけど、確かに覚えている感覚と一致していた。
『よし、とりあえず出力してみるといい。』
アレイは前を向き 掌を前へと突き出した。
「火属性初級魔法 火球」
魔法陣から生成された火の玉は 勢いを上げて岩へと突進し その表面で爆発した。
木っ端みじんとは到底いかないが 岩の一部が崩れ落ちた。
アレイは不意に笑顔を見せた。
4年間扱えなかった魔法を たった今初めてまともに扱えたからだ。
『筋がいいな。あとは反復練習を..』
「4学年の生徒は至急 学院メインホールに集まってください。」
けたたましく 学院放送が鳴り響いた。
ルシファー 教員 何か焦ってない?
『あぁ 何か嫌な予感がする。 少し調べてみよう、この魔法は魔力をあまり使わないから安心して。』
紫色の瞳が 少し明るく光った気がする。
『これは これは...。』
どうしたの ルシファー?
学院メインホール
「ったく なんで俺がこんな役を引き受けなきゃならねーんだ。
本当にいるんだろうな この学院に 死神が。」
「アレグレット様 エルメナスを劣りにして死神をあぶりだせ 本気で演技しろ
というのが、エリクサンド様からの伝言でございます。」
「言われなくてもやるっての。」




