↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
4/6

Ep3「此岸を切り裂いて」


ルシファーは手を差し出し 半ば地面を指さすようにして自身の術式を展開した。

視線ははっきりと魔族を捕らえている。



「空間超越支配《グラン・ユニバース》」



魔法という名が付属しない 魔法術式。



「浸食の魔法(エレオルシオン)」

魔族の足元から 赤黒い地面がどんどん広がっていく。

大地を呑み込むように、資料館のガーデンは血みどろの大地へと変貌した。

空には灰色の雲が渦巻いている。



魔法属性領域の展開 でも、広すぎる

魔法により生成される固有の領域は魔法属性領域と呼ばれるけど せいぜい半径10m程度のエリアで優位に立ち回れるようになる効果しかない。


そのうえ 魔力の使用量は半端ないから、もう今では術式として組み込む人なんていない。


それを生前と...。 この広いガーデン全てを


『戦いのコツは 決して油断しないこと。 まずは、相手の魔法にどのような効果 攻撃手段があるのかをしっかり見極める。 そして、想像し続ける。』



いつの間にか、先ほどルシファーが切り落とした魔族の足はすっかり元通りになっている。 




突如、ルシファーの口からゆっくりと血が流れて来た。

アレイに共有されているのは視覚と聴覚のみであり、鉄分を含んだ生暖かい血の

味を感じ取ってはいない。



ルシファーは 笑っていた。



魔族は 液体のように溶けて 姿を消した。

どこから現れるかの恐怖 これは人間であれば避けて通れない恐怖




静まり返った空間の中で突如 魔族は地面から姿を出し、勢いをそのままに

ルシファーの腕をかすめた

瞬間に 傷口には赤い花が咲き 瞬間に炸裂し、左腕は地面にボトッという音を

立てて落ちた。




「ようやく見えた」

宙に浮いた魔族は 今まで感じた事も無い魔力による重圧と威圧を感じる前に


勢いよく地面に叩きつけられた

感知する暇もない 動作に前触れもない 何が起こったのか理解は出来ない。



魔族が体制を立て直そうとした時 ようやく見えた

血を吐き 左手を失ってなお平然と立つ学生は 自分を指さし その指を右へと素早く振った。


瞬間 勢いよく右へ吹き飛ばされたかと思えば、地面に叩きつけられている。





この一連の動作は ルシファーの視点を覗くアレイにも捉え切れていない。



「さぁ 来い魔族。 もっと楽しもう。 適応しろ。」



さっきあの炎の魔法使いを斬った時、何か黒い影に吸い込まれたかと思えば 自分の足が切れていた。 カウンター? いや違う

ワープホールのようなものか 私をあの影に飛ばして、地面に向かって出口を設定している。 であれば



ルシファーは 再び指を右に振った

瞬間魔族は右に飛ばされたが、飛ばされる事を反射的に予測し 自分の四方に液体状の壁をせりあがらせ 影に吸い込まれる前に魔法属性領域に溶ける




もう一度あの 花が炸裂する攻撃が来るんじゃ


『いや 恐らくそれはない。』



魔族が再び現れたのは、ルシファーの背後10m

花の攻撃の 使用範囲からは外れている。


ルシファーが振り返った瞬間 その体は勢いよく後ろへと吹き飛ばされた。

たった今まで自分が使っていた魔法に似ている。


その先には 大きな棘上の物体がせり上がっていた。





ルシファーは冷静に 背中に影を出現させ棘ごと呑み込み 

呑み込まれた棘の出口を魔族の腹部へと開通させ 魔族の腹を貫いた。

判断が1秒遅れれば ルシファーの体は原型を留めてはいないだろう。



『アレイ 私の魔法の最大の特徴を教える。 それは、攻撃パターンの圧倒的な多様性だ。』

ルシファーは自分の手前に影を生成し 自分自身を影へと吹き飛ばした。


さらに魔族の背後を取り 思いっきり魔族を蹴とばす。



敵を飛ばすだけでなく 自分の体も自ら飛ばす事が出来る

そしてあのワープホールは攻撃を呑み込む最強の防御魔法であり、敵の自由を奪う最恐の攻撃手段でもある...

私の手の内を晒しているのに 奴は吹き飛ばしとワープホールの攻防だけでそれをいなしてくる。なんて格差だ



30mは吹き飛ばされたが、魔族も再び一気に距離を詰め

単純に速度と思考の速さが試される攻防へと化した。



魔族は茨上の鎖を地面から生成し 時折ルシファーの行動を制限するが

ルシファーが指を振るうだけで いとも簡単に崩れ落ちる。


アレイの視点は 完全に混乱していた。 まるでずっとボケた映像を見せられているように被写体の様子がまるで見えない。


映し出される血しぶきが 自分のものか魔族のものかなどは分からないが

1つだけ分かった事があった。

魔族の「浸食の魔法」 は魔法属性領域内で自由に物体を生成したり、傷口に花を咲かせて内側から炸裂させたりと万能で強い魔法だ。

ありとあらゆる攻撃手法を用いて 僕の体を確かに削っている


吐血は止まらず 左腕は欠損 このまま浸食が進めば、体の内から壊れていくのだろう。

しかし、天津さえルシファーは 指を振るう吹き飛ばしと影を用いたワープポイントの結合という その攻撃手段しか用いていない。






「ルシファー お前の体はもう崩壊するぞ。」


「そのようだな。なら、少し出力をあげようか?」

当たり前のように空に浮いているルシファーは 地上の魔族を愉悦するように

言った。




ルシファーはエルメナスの所に瞬間的に移動した。


ここまでの攻防を現実のものと思わず 夢でも見ているかのように立ち尽くしていた

エルメナスは、ルシファーの言葉で正気に返った。


「飛炎の魔法使い 君に良いものを見せてやろう。 火属性魔法のなんたるかを。」



極限まで顔を近づいてささやいているが、認識阻害のローブにより

エルメナスはアレイと認識できていない。



「深淵を貫く残火」


超短文詠唱... エルメナスは目を見開いた。


通常つらつら言葉を並べる詠唱とは違い、僅か一言で術式の威力を底上げする詠唱。

それは 王が静粛にと言うだけで 民が1人残らず従う様子から「王の号令」などと呼ばれる。




『さっきまで私が使っていた あの敵を吹き飛ばす攻撃。 あれに火属性魔法のエッセンスを加えて さらに詠唱で術式の威力を上げればどうなると思う。』


答えは1つだろうに


やばいことになる。



『正解』



魔族は嫌な気配を感じ取り、後ろに逃げ出した。

しかし ルシファーのワープホールに捕まり ガーデン中央の空中へと投げ出された。



投げ出された後 微かにルシファーと目が合った そして死を確信した。


ルシファーは指を差し出し 上から下へと振り下ろす。

その瞬間 上空には20を超える火属性の魔法陣が重複展開され、空から勢いよく

炎の光線のような物が降り注いだ。


炎は赤色を超え 白色に発光している。


光がある程度落ち着いた後、 ガーデンはマグマの海となり

資料館も大半は溶け落ちていた。


魔族の魔法属性領域も、もはや灰色の雲しか残っていない。





エルメナスは その光景をはっきりと目にした。



その後突如 灰黒い雲が弾け、暖かい日差しが降り注いだ。


『魔族が死んだようだ。 にしても少し暴れすぎたな。 魔法官とやらが、もうそこまで来ている。』


これどうするの 資料館もう無いも同然だよ


『お片付けの時間だ。』


ルシファーは指をパチッと鳴らした。

ガーデンには心地よい音が響き渡る。




突如 空間に亀裂が入り始めた、 そして完全に崩壊した。


そこにあったのは元通りの資料館とガーデン。

アレイの体ももとの状態に戻っており、エルメナスやその友達は静かに眠っていた。




魔法属性領域「乖離世界」

現実空間に仮想空間を重ね合わせる ルシファーの魔法属性領域。

何を仮想化し、何を仮想化しないかを設定出来る。


今回の場合 魔族と魔物以外は全て仮想化されていたため 術式終了後の現実化で元の状態に戻ったのである。

逆に現実のまま戦っていた魔族は、殺されればそこで終わり。


仮想化された術式使用者が死んだ場合は 乖離世界は崩壊し全てが現実化される。

つまり、完全な死を1度だけ無かったことに出来る万能領域。


その他にも効果はあるんだとか...





『トロイメライが この時の為に残してくれた魔力を使い切った。 最後に怪しまれないようにアレイを皆の所に送り届ける。 もうすぐに魔法官が来るからな。


私は 少し休む。』



お疲れ様。


まったく、天使ってのは 本当に規格外だ。

晴れ渡った資料館を眺めながら アレイはルシファーの強さにおののいた。


そして、調子に乗って「習得する」なんて抜かした自分を大変恥ずかしく思いましたとさ。




アレイは学院の皆が避難したエリアにひっそりと送り届けられた。


この後魔法官は無事資料館に駆け付けた。

しかし、そこには魔族の姿なんてどこにも無かった。


眠った少年が2人 割れた魔族の核が1つ そして魔人戦争が1つ起こったと言われてもおかしくない密度の魔力の残滓だけが、そこには残されていた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。