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異変

交流機能の公開から一か月。


競合会社。


月例役員会議。


マーケティング部の社員が慌てた様子で会議室へ入ってきた。


「社長。」


「今月の市場データです。」


社長は資料を受け取る。


そして眉をひそめた。


「……どういうことだ。」


会議室が静かになる。


競合サービス。


新規登録者数。


前月比。


減少。


記事投稿数。


減少。


コメント数。


減少。


一日あたりの訪問回数。


減少。


平均滞在時間。


減少。


役員の一人が首を傾げる。


「広告は先月より増やしましたよね。」


「はい。」


「芸能人の起用も追加しました。」


「それなのに……。」


社長は次の資料を開く。


ARCBOOK。


新規登録者数大幅増加。


一日あたりの訪問回数大幅増加。


平均滞在時間大幅増加。


記事投稿数。


コメント数。


すべて右肩上がりだった。


会議室の空気が少し変わる。


「原因は?」


分析担当が前へ出た。


「市場調査を行いました。」


スクリーンに利用者アンケートが映し出される。


『友達に誘われたから始めた。』


『学校のみんなが使っている。』


『メッセージが便利。』


『友達の日記を見るために毎日開く。』


『携帯メールより気軽。』


『気が付くと何度も開いている。』


役員の一人が腕を組む。


「交流機能か。」


分析担当は頷いた。


「はい。」


「ですが。」


「想像以上です。」


「交流機能を追加したことで利用者同士のやり取りが急増しています。」


「その結果、利用者が新しい利用者を連れてきています。」


会議室が静まり返る。


社長は資料を見つめたまま口を開く。


「つまり。」


分析担当。


「はい。」


「記事ではなく。」


「人が目的になり始めています。」


「利用者同士の交流がサービスそのものの価値になっています。」


役員の一人が思い出したように言う。


「一か月前。」


「友達機能なんて携帯があれば十分だ。」


「そう言っていましたね……。」


誰も何も言えなかった。


社長は静かに資料を閉じる。


「完全に見誤ったな。」


短い沈黙。


そして。


社長は立ち上がる。


「技術部。」


「はい。」


「この交流機能、最短で実装するとどれくらいかかる。」


技術責任者は少し考えた。


「最短。」


「一か月です。」


「もっと縮められないか。」


「難しいです。」


「人員を増やしても。」


「設計。」


「テスト。」


「負荷試験。」


「この工程だけは。」


「短縮できません。」


「品質を維持するなら一か月が限界です。」


社長は静かに頷いた。


「分かった。」


「今日から最優先プロジェクトにする。」


「他の開発は止めろ。」


「全員。」


「交流機能へ回せ。」


「必ず一か月で完成させる。」


「はい!」


役員たちが一斉に動き出す。


その頃。


ARC本社。


悠は報告書を閉じた。


(相棒。)


『競合が動き始めるでしょう。』


悠は小さく笑う。


「予定どおりだな。」


『はい。』


『約一か月後。』


『競合も交流機能を実装すると予測します。』


悠は静かに窓の外を見る。


「その前に。」


「次へ進もう。」


AIも静かに答えた。


『はい。』

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