新しい扉
競合会社。
役員会議。
大型モニターにはブログ市場の最新データが映っていた。
ARCBOOK。
そして。
競合サービス。
二つだけが大きく伸びている。
役員の一人が笑った。
「ようやくここまで来ましたね。」
別の役員も頷く。
「新規登録者数では先月初めてARCBOOKを超えました。」
社長は静かに資料を見る。
「まだ勝ってはいない。」
「ですが追いつきました。」
会議室には少しだけ安堵した空気が流れた。
市場調査の資料には利用者の声も並んでいた。
『最近はどっちも使いやすい。』
『機能はあまり変わらない。』
『好きな方を使えばいいかな。』
『もう二強だね。』
雑誌にも同じ言葉が並んでいる。
**ブログ二強時代。**
社長はその見出しを見て小さく笑った。
「ここからだ。」
「ARCBOOKを追い抜こう。」
全員が力強く頷いた。
◇
二週間後。
土曜日。
午後八時ARC本社。
会議室。
九条が画面を見る。
「準備。」
「完了。」
悠。
「サーバー。」
「問題なし。」
「負荷。」
「余裕。」
橘も資料を見る。
「設備も問題ありません。」
悠は静かに頷く。
「公開しよう。」
九条はキーボードへ手を置く。
数秒。
静かにキーを押した。
「公開。」
その瞬間。
ARCBOOKに新しい機能が追加された。
**つながり**
**更新一覧**
**メッセージ**
利用者たちは突然現れた新機能に少し戸惑った。
『つながり?』
『何これ?』
『お気に入りと違うの?』
『メッセージ送れる?』
最初は誰もよく分からなかった。
◇
高校生の女の子学校から帰宅しいつものようにARCBOOKを開く。
画面に新しいボタン。
**つながり申請**
「何これ?」
何気なく友達へ送る。
数分後。
返事が届く。
**○○さんとつながりました。**
「え?」
その直後画面の更新一覧へ友達の日記が表示された。
『今日の部活疲れたー。』
「もう書いてる。」
思わず笑う。
さらにメッセージ。
『明日の宿題やった?』
『まだ(笑)』
少しだけやり取りする。
携帯電話を手に取ることもなくARCBOOKを閉じることもなく。
そのまま二人は話し続けた。
◇
競合会社。
翌週。
担当者が報告する。
「ARCBOOK。」
「新機能を公開しました。」
社長。
「知ってる。」
「交流機能ですね。」
役員が笑う。
「友達機能ですか。」
「ブログに必要ですかね。」
別の役員。
「携帯がありますし。」
「メールもあります。」
社長も軽く頷く。
「様子を見よう。」
「数字が動いてからでも遅くない。」
「機能を追加しすぎて潰れた会社もある。」
誰も焦ってはいなかった。
◇
ARC本社。
公開から数時間。
西園寺が最新データを見る。
思わず目を見開いた。
「社長。」
悠。
「どうだ?」
西園寺は画面を見たまま。
答える。
「増えています。」
悠。
「想定内だ。」
西園寺は首を振った。
「いえ。」
「想定以上です。」
「社内テストより。」
「伸びています。」
白石も画面を覗き込む。
「そんなに?」
西園寺。
「はい。」
「つながり申請。」
「メッセージ。」
「訪問回数。」
「全部。」
「予測を上回っています。」
悠は静かに笑う。
(相棒。)
『はい。』
『実際の利用者同士の関係性は社内モニターより遥かに複雑です。』
『予測モデルを上回っています。』
悠。
「面白くなってきたな。」
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