次の一手
『市場分析を開始します。』
悠の視界にいくつものグラフが浮かび上がる。
日本国内インターネット利用者数。
右肩上がり。
さらに。
ADSL契約数。
こちらも急激な伸びを見せていた。
悠は数字を眺め、小さく笑う。
「なるほど。」
「ブロードバンドか。」
AIが続ける。
『2002年。』
『ADSLの急速な普及により。』
『企業だけではありません。』
『個人ユーザーが爆発的に増加しています。』
悠は腕を組んだ。
「つまり。」
「次は個人向けサービスだな。」
『推奨します。』
AIは即答した。
しばらく沈黙が流れる。
悠はふと思いついたように口を開く。
「だったら。」
「SNSはどうだ。」
「mixとか。」
「Facenoteみたいな。」
AIは珍しく数秒考え込んだ。
『推奨しません。』
悠は苦笑する。
「やっぱり。」
「まだ早いか。」
『はい。』
『技術ではありません。』
『市場です。』
画面が切り替わる。
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**2002年現在**
ホームページ 普及中
掲示板 普及中
チャット 普及中
SNS 市場未成熟
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AIが静かに説明を続ける。
『現在。』
『インターネットは。』
『閲覧するものです。』
『まだ交流するものではありません。』
『いきなりSNSを提供しても。』
『利用者は何を書けばいいのか分かりません。』
悠はゆっくり頷く。
「確かにな。」
「SNSは。」
「人がいて初めて成立するサービスだ。」
『はい。』
『時期尚早です。』
悠は椅子にもたれた。
「じゃあ。」
「何から始めるのが丁度いいんだ。」
AIの画面が切り替わる。
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**推奨事業**
**ブログサービス**
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悠は少し驚いた。
「ブログ?」
AIは説明を始める。
『現在。』
『個人ホームページは急速に普及します。』
『しかし。』
『あまり更新されません。』
『理由はHTMLの知識が必要だからです。』
悠は思わず笑った。
「そうだったな。」
「更新が面倒で。」
「放置されたホームページが山ほどあった。」
『はい。』
『誰でも簡単に更新できる仕組み。』
『それがブログです。』
社長室に静かな時間が流れる。
悠はゆっくり考え込む。
「そうか。」
「いきなりSNSを作るんじゃない。」
「まず。」
「ブログか。」
『はい。』
『最も成功確率が高いと分析します。』
悠はさらに尋ねた。
「でも。」
「開発には結構時間がかかるんじゃないか。」
AIは即座に答えた。
『いいえ。』
『現在のARCには十分な技術基盤があります。』
悠は少し首を傾げる。
「技術基盤?」
画面が切り替わる。
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**現在のARC保有技術**
・SaaS基盤
・分散処理
・ユーザー管理
・画像管理
・アクセス負荷分散
・データベース管理
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AIが続ける。
『ネットショップシステム開発時に構築した技術です。』
『ブログサービスにも、そのまま応用できます。』
『ゼロから開発する必要はありません。』
『追加開発のみで対応可能です。』
悠は思わず笑った。
「そうか。」
「ホームページ。」
「ネットショップ。」
「SaaS。」
「全部。」
「無駄じゃなかったんだな。」
AIは静かに答えた。
『はい。』
『すべて。』
『次の事業のための土台です。』
悠は感心したように頷いた。
「九条なら。」
「喜んで作りそうだな。」
『可能性。』
『九十八・七%。』
「高すぎる。」
『新しい技術が好きです。』
「それは否定できない。」
二人は小さく笑った。
しばらくして。
悠が再び口を開く。
「ブログが普及したら。」
「コメント機能を追加する。」
『はい。』
「お気に入り。」
『はい。』
「コミュニティ。」
『はい。』
「友達。」
『はい。』
悠は静かに笑った。
「そうやって。」
「少しずつ交流機能を増やしていけば。」
「自然にSNSへ進化できる。」
AIは短く答える。
『推奨します。』
『ブログを進化させる形が。』
『最も成功率の高いルートです。』
悠は窓の外へ目を向けた。
ネオンに照らされた東京。
街には今も多くの人が行き交っている。
「焦る必要はない。」
「時代より。」
「半歩前を歩けばいい。」
AIは静かに答えた。
『はい。』
『それがARCです。』
悠は机の上の手帳を開いた。
予定欄へ一行だけ書き込む。
**役員会議**
悠は小さく笑う。
「よし。」
「明日。」
「みんなに話そう。」
「ARCの次の挑戦を。」
AIは静かに答えた。
『了解しました。』
新しい時代は。
静かに動き始めようとしていた。




