未来を作る新たな組織
橘慎吾、佐伯健太、高橋義人の入社から一か月。
ARCは創業以来初めてとなる、大規模な組織再編を行った。
営業部。
開発部。
デザイン部。
財務部。
人事部。
法務部。
それぞれに責任者が配置され、役割が明確になる。
神谷悠が全てを抱えていた会社は終わった。
ここからは。
組織が組織として動く会社。
新しいARCが始まった。
◇
それから数か月。
朝九時。
ARC本社。
以前より社員は増え、社内には活気が満ちていた。
誰かに指示されるのを待つ社員はいない。
それぞれが自分の役割を理解し、自ら考え、動いている。
会社全体が、一つの生き物のように動き始めていた。
◇
営業部。
朝の定例会議。
西園寺がホワイトボードの前に立つ。
「それじゃあ。」
「先月の実績を報告します。」
プロジェクターに数字が映し出される。
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**ホームページ制作 126社受注**
**ネットショップ新規導入 1,284店舗**
**パートナー経由導入 1,937店舗**
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会議室がどよめいた。
新入社員の一人が思わず声を漏らす。
「毎月……こんな数字なんですか?」
先輩社員が笑う。
「いや。」
「先月は少し控えめだ。」
「今月はもっと伸びる。」
「えっ……。」
新人は言葉を失った。
西園寺は笑みを浮かべながら続ける。
「ホームページ制作は順調。」
「ネットショップはパートナー企業との連携も完全に軌道へ乗った。」
「SEOも毎月安定して増えている。」
「だが。」
「俺が一番嬉しかった数字はこれだ。」
画面が切り替わる。
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**継続率 98.4%**
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営業部から拍手が起こる。
西園寺は静かに頷いた。
「営業の仕事は売ること。」
「でも。」
「続けてもらうのは営業だけの仕事じゃない。」
「開発。」
「デザイン。」
「サポート。」
「法務。」
「人事。」
「財務。」
「会社全員で積み上げた結果が、この数字だ。」
社員たちの表情が引き締まる。
「胸を張れ。」
「これは営業部だけの成果じゃない。」
「ARC全員で勝ち取った数字だ。」
そして。
ホワイトボードに今月の目標が映し出される。
---
**ネットショップ導入 2,000店舗突破**
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西園寺は営業全員を見渡した。
「達成できるか?」
「できます!」
「必ず突破します!」
「よし。」
「営業は市場を広げる。」
「会社を強くするのは。」
営業全員が声を揃えた。
「会社全員!」
「正解だ。」
会議室は拍手と笑い声に包まれた。
◇
開発部。
九条は新人エンジニアのコードを見つめていた。
「ここ。」
「処理は動いてる。」
「でも。」
「三か月後。」
「自分でも読めなくなる。」
新人が苦笑する。
「はい……。」
九条は画面を操作しながら説明する。
「動けばいいじゃない。」
「誰が見ても理解できる。」
「十年後でも保守できる。」
「それが良いプログラムだ。」
新人たちは真剣にメモを取る。
以前なら。
九条一人で全てを書いていた。
しかし今は違う。
新人たちの技術は日を追うごとに伸び、開発速度も品質も大きく向上していた。
九条は小さく笑う。
「最近。」
「教える方が面白いな。」
◇
デザイン部。
白石は完成したホームページを見つめていた。
「かわいい。」
「かっこいい。」
「それだけじゃ売れない。」
若いデザイナーたちが真剣な表情で頷く。
白石は画面を指差した。
「このお客様は誰?」
「何を求めてる?」
「どこで迷う?」
「そこまで考えて。」
「初めてデザイン。」
新人が静かに頷く。
「デザインって。」
「絵を描くことじゃないんですね。」
白石は微笑んだ。
「人の気持ちを考えること。」
「それがデザイン。」
佐伯が始めた新人教育のおかげで、デザイナーたちは市場を理解しながら制作する習慣を身につけ始めていた。
完成するホームページの質は、以前とは比べものにならないほど向上していた。
◇
人事部。
会議室では新人研修が行われていた。
佐伯は穏やかな表情で話す。
「ARCでは。」
「挑戦してください。」
「失敗しても構いません。」
新人たちが顔を見合わせる。
佐伯は笑った。
「挑戦しない失敗より。」
「挑戦した失敗を評価します。」
「ただし。」
「同じ失敗は二回しない。」
会議室から笑い声が起こる。
「教育。」
「評価。」
「面談。」
「キャリア。」
「人は採用して終わりじゃありません。」
「そこからが人事の仕事です。」
ARCには少しずつ、人を育てる文化が根付き始めていた。
◇
財務部。
橘は月次資料を悠へ手渡した。
「利益率は過去最高です。」
「資金繰りにも余裕があります。」
「設備投資も予定通り進められます。」
悠は資料を見ながら笑う。
「頼もしいな。」
橘は照れくさそうに頭をかいた。
「数字だけは嘘をつきませんから。」
◇
法務部。
高橋の机には契約書が山積みになっていた。
赤ペンで何枚も修正を加えている。
営業担当が苦笑する。
「高橋部長。」
「そこまで細かく見なくても。」
高橋は首を振った。
「ここ。」
「三年後。」
「必ず揉めます。」
「今なら一行追加するだけで防げます。」
営業担当は思わず感心する。
「そこまで考えてるんですか。」
「法務は。」
「問題が起きてから動く仕事じゃありません。」
「問題を起こさない仕事です。」
利用規約。
秘密保持契約。
開発契約。
社員規程。
就業規則。
未来のIT社会を見据え、高橋は次々と社内のルールを整えていった。
◇
夕方。
社長室。
悠は窓から社内を眺めていた。
営業の笑い声。
開発室の議論。
会議室では新人研修。
どの部署も。
楽しそうだった。
以前は。
悠が動かなければ会社は止まっていた。
しかし今は違う。
誰もが自分の役割を理解し。
互いを支え合いながら前へ進んでいる。
会社全体の熱気は以前よりもさらに増し、誰もが安心して挑戦できる環境が生まれていた。
悠は静かに笑う。
「少し。」
「会社らしくなってきたな。」
AIが答える。
『訂正します。』
『会社ではありません。』
『組織です。』
悠は少し笑った。
「そうだな。」
しばらく社内を眺める。
そして静かに呟いた。
「相棒。」
「ここまでは予定通りだ。」
「そろそろ。」
「次のステップを考えよう。」
AIは即座に答える。
『はい。』
『現在の市場分析を開始します。』
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