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未来を作る新たな組織

橘慎吾、佐伯健太、高橋義人の入社から一か月。


ARCは創業以来初めてとなる、大規模な組織再編を行った。


営業部。


開発部。


デザイン部。


財務部。


人事部。


法務部。


それぞれに責任者が配置され、役割が明確になる。


神谷悠が全てを抱えていた会社は終わった。


ここからは。


組織が組織として動く会社。


新しいARCが始まった。



それから数か月。


朝九時。


ARC本社。


以前より社員は増え、社内には活気が満ちていた。


誰かに指示されるのを待つ社員はいない。


それぞれが自分の役割を理解し、自ら考え、動いている。


会社全体が、一つの生き物のように動き始めていた。



営業部。


朝の定例会議。


西園寺がホワイトボードの前に立つ。


「それじゃあ。」


「先月の実績を報告します。」


プロジェクターに数字が映し出される。


---


**ホームページ制作 126社受注**


**ネットショップ新規導入 1,284店舗**


**パートナー経由導入 1,937店舗**


---


会議室がどよめいた。


新入社員の一人が思わず声を漏らす。


「毎月……こんな数字なんですか?」


先輩社員が笑う。


「いや。」


「先月は少し控えめだ。」


「今月はもっと伸びる。」


「えっ……。」


新人は言葉を失った。


西園寺は笑みを浮かべながら続ける。


「ホームページ制作は順調。」


「ネットショップはパートナー企業との連携も完全に軌道へ乗った。」


「SEOも毎月安定して増えている。」


「だが。」


「俺が一番嬉しかった数字はこれだ。」


画面が切り替わる。


---


**継続率 98.4%**


---


営業部から拍手が起こる。


西園寺は静かに頷いた。


「営業の仕事は売ること。」


「でも。」


「続けてもらうのは営業だけの仕事じゃない。」


「開発。」


「デザイン。」


「サポート。」


「法務。」


「人事。」


「財務。」


「会社全員で積み上げた結果が、この数字だ。」


社員たちの表情が引き締まる。


「胸を張れ。」


「これは営業部だけの成果じゃない。」


「ARC全員で勝ち取った数字だ。」


そして。


ホワイトボードに今月の目標が映し出される。


---


**ネットショップ導入 2,000店舗突破**


---


西園寺は営業全員を見渡した。


「達成できるか?」


「できます!」


「必ず突破します!」


「よし。」


「営業は市場を広げる。」


「会社を強くするのは。」


営業全員が声を揃えた。


「会社全員!」


「正解だ。」


会議室は拍手と笑い声に包まれた。



開発部。


九条は新人エンジニアのコードを見つめていた。


「ここ。」


「処理は動いてる。」


「でも。」


「三か月後。」


「自分でも読めなくなる。」


新人が苦笑する。


「はい……。」


九条は画面を操作しながら説明する。


「動けばいいじゃない。」


「誰が見ても理解できる。」


「十年後でも保守できる。」


「それが良いプログラムだ。」


新人たちは真剣にメモを取る。


以前なら。


九条一人で全てを書いていた。


しかし今は違う。


新人たちの技術は日を追うごとに伸び、開発速度も品質も大きく向上していた。


九条は小さく笑う。


「最近。」


「教える方が面白いな。」



デザイン部。


白石は完成したホームページを見つめていた。


「かわいい。」


「かっこいい。」


「それだけじゃ売れない。」


若いデザイナーたちが真剣な表情で頷く。


白石は画面を指差した。


「このお客様は誰?」


「何を求めてる?」


「どこで迷う?」


「そこまで考えて。」


「初めてデザイン。」


新人が静かに頷く。


「デザインって。」


「絵を描くことじゃないんですね。」


白石は微笑んだ。


「人の気持ちを考えること。」


「それがデザイン。」


佐伯が始めた新人教育のおかげで、デザイナーたちは市場を理解しながら制作する習慣を身につけ始めていた。


完成するホームページの質は、以前とは比べものにならないほど向上していた。



人事部。


会議室では新人研修が行われていた。


佐伯は穏やかな表情で話す。


「ARCでは。」


「挑戦してください。」


「失敗しても構いません。」


新人たちが顔を見合わせる。


佐伯は笑った。


「挑戦しない失敗より。」


「挑戦した失敗を評価します。」


「ただし。」


「同じ失敗は二回しない。」


会議室から笑い声が起こる。


「教育。」


「評価。」


「面談。」


「キャリア。」


「人は採用して終わりじゃありません。」


「そこからが人事の仕事です。」


ARCには少しずつ、人を育てる文化が根付き始めていた。



財務部。


橘は月次資料を悠へ手渡した。


「利益率は過去最高です。」


「資金繰りにも余裕があります。」


「設備投資も予定通り進められます。」


悠は資料を見ながら笑う。


「頼もしいな。」


橘は照れくさそうに頭をかいた。


「数字だけは嘘をつきませんから。」



法務部。


高橋の机には契約書が山積みになっていた。


赤ペンで何枚も修正を加えている。


営業担当が苦笑する。


「高橋部長。」


「そこまで細かく見なくても。」


高橋は首を振った。


「ここ。」


「三年後。」


「必ず揉めます。」


「今なら一行追加するだけで防げます。」


営業担当は思わず感心する。


「そこまで考えてるんですか。」


「法務は。」


「問題が起きてから動く仕事じゃありません。」


「問題を起こさない仕事です。」


利用規約。


秘密保持契約。


開発契約。


社員規程。


就業規則。


未来のIT社会を見据え、高橋は次々と社内のルールを整えていった。



夕方。


社長室。


悠は窓から社内を眺めていた。


営業の笑い声。


開発室の議論。


会議室では新人研修。


どの部署も。


楽しそうだった。


以前は。


悠が動かなければ会社は止まっていた。


しかし今は違う。


誰もが自分の役割を理解し。


互いを支え合いながら前へ進んでいる。


会社全体の熱気は以前よりもさらに増し、誰もが安心して挑戦できる環境が生まれていた。


悠は静かに笑う。


「少し。」


「会社らしくなってきたな。」


AIが答える。


『訂正します。』


『会社ではありません。』


『組織です。』


悠は少し笑った。


「そうだな。」


しばらく社内を眺める。


そして静かに呟いた。


「相棒。」


「ここまでは予定通りだ。」


「そろそろ。」


「次のステップを考えよう。」


AIは即座に答える。


『はい。』


『現在の市場分析を開始します。』

読んでいただきありがとうございます!

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