新たな一歩
正式契約から数日。
黒崎誠司の会社では、早くも新しい動きが始まっていた。
営業部。
「ARCショップメーカー、本日より販売開始です!」
営業部長の声とともに、営業マンたちが一斉に立ち上がる。
電話をかける者。
資料を持って飛び出していく者。
会社全体が活気に包まれていた。
◇
その日の夕方。
営業部長が社長室へ駆け込んできた。
「社長!」
「一件目です!」
黒崎は静かに顔を上げる。
「もう決まったのか。」
「はい!」
「デモを見せた瞬間に、その場で契約でした。」
黒崎は小さく笑う。
「そうか。」
翌日。
「大阪、契約です!」
「名古屋も決まりました!」
「福岡も受注しました!」
報告が次々と入ってくる。
営業部長は思わず笑った。
「こんなに契約が決まるとは……。」
「営業人生で初めてです。」
黒崎は報告書へ目を落とす。
「商品がいい。」
「営業もしやすい。」
営業部長も深く頷いた。
「説明した瞬間、お客様の反応が違います。」
「価格も。」
「機能も。」
「自信を持って勧められます。」
黒崎は窓の外を見た。
「神谷社長。」
「やはり。」
「パートナーになった判断は正しかった。」
◇
販売開始から三週間。
契約企業は順調に増え続けていた。
黒崎は会議室へ入る。
営業部長と技術部長が待っている。
「販売は順調だ。」
黒崎が資料を閉じる。
「SEO事業部はどうだ。」
技術部長は迷わず答えた。
「準備は整いました。」
営業部長も頷く。
「営業資料も完成しています。」
「まずは既存のお客様を対象に、モニター企業を募集します。」
黒崎は静かに立ち上がる。
「よし。」
「始めよう。」
◇
営業部は、長年付き合いのある取引先へ連絡を始めた。
「お世話になっております。」
「実は、新しいサービスをご案内したくお電話しました。」
電話の向こうの社長が笑う。
「また面白いこと始めたの?」
営業部長も笑う。
「今回は売り込みではありません。」
「一緒に成功事例を作っていただきたいんです。」
「もちろん費用はいただきません。」
「効果を確認するモニターとして、ご協力いただけませんか。」
電話の向こうは少し考え、
すぐに答えた。
「それなら是非やってみたいですね。」
営業部長は受話器を置き、小さく拳を握った。
「決まりました。」
技術部長も立ち上がる。
「では。」
「分析を始めます。」
◇
それから数週間。
営業部と技術部は、モニター企業のホームページを何度も改善した。
商品名。
説明文。
写真。
ページ構成。
検索されそうな言葉。
何度も修正し。
何度も話し合った。
そして――。
ある日の朝。
技術部長がモニターを見つめたまま固まった。
「……増えてる。」
営業部長が駆け寄る。
「どうした。」
「アクセス数です。」
「昨日までの三倍になっています。」
営業部長は画面を見つめる。
「問い合わせも増えてる。」
「注文も入っています!」
その時、電話が鳴った。
営業部長が受話器を取る。
「はい。」
「……え?」
受話器の向こうから、嬉しそうな声が響く。
「注文が次々と入ってきますよ!」
「ホームページを変えただけで、本当に売上が伸びました!」
「ありがとうございます!」
営業部長は受話器を置き、ゆっくり黒崎を見る。
「社長。」
「成功です。」
黒崎は静かに報告書を閉じた。
そして、小さく笑った。
「違う。」
「始まりだ。」
営業部長と技術部長が顔を上げる。
黒崎はゆっくりと言った。
「商品を売る。」
「導入する。」
「個別開発をする。」
「そして。」
「お客様を成功させる。」
「これで初めて。」
「一つの事業になった。」
二人は力強く頷いた。
◇
その日の夕方。
一本の電話がARCへ入る。
「黒崎です。」
悠は受話器を取る。
「神谷社長。」
「SEO。」
「成功しました。」
悠は静かに微笑んだ。
「そうですか。」
「おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
黒崎は少し笑う。
「御社のおかげです。」
悠は首を横へ振った。
「違います。」
「黒崎さんたちが。」
「成功させた事業です。」
電話を切る。
AIが静かに話しかける。
『パートナー企業。』
『売上、利益ともに増加を確認。』
悠は窓の外を眺めながら笑った。
「だから言っただろ。」
「一人で強くなるより。」
「みんなで強くなった方がいい。」
AIは数秒沈黙した。
『……。』
『Win-Winという概念。』
『理解しました。』
悠は苦笑する。
「まだ半分だ。」
「人は。」
「数字だけじゃない。」
AIは静かに答えた。
『……引き続き学習します。』
悠は夜景を見つめながら、小さく頷いた。
また一つ。
ARCの仲間が増えた。
そして。
日本一への道も、また一歩近ついた。
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