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新たな一歩

正式契約から数日。


黒崎誠司の会社では、早くも新しい動きが始まっていた。


営業部。


「ARCショップメーカー、本日より販売開始です!」


営業部長の声とともに、営業マンたちが一斉に立ち上がる。


電話をかける者。


資料を持って飛び出していく者。


会社全体が活気に包まれていた。



その日の夕方。


営業部長が社長室へ駆け込んできた。


「社長!」


「一件目です!」


黒崎は静かに顔を上げる。


「もう決まったのか。」


「はい!」


「デモを見せた瞬間に、その場で契約でした。」


黒崎は小さく笑う。


「そうか。」


翌日。


「大阪、契約です!」


「名古屋も決まりました!」


「福岡も受注しました!」


報告が次々と入ってくる。


営業部長は思わず笑った。


「こんなに契約が決まるとは……。」


「営業人生で初めてです。」


黒崎は報告書へ目を落とす。


「商品がいい。」


「営業もしやすい。」


営業部長も深く頷いた。


「説明した瞬間、お客様の反応が違います。」


「価格も。」


「機能も。」


「自信を持って勧められます。」


黒崎は窓の外を見た。


「神谷社長。」


「やはり。」


「パートナーになった判断は正しかった。」



販売開始から三週間。


契約企業は順調に増え続けていた。


黒崎は会議室へ入る。


営業部長と技術部長が待っている。


「販売は順調だ。」


黒崎が資料を閉じる。


「SEO事業部はどうだ。」


技術部長は迷わず答えた。


「準備は整いました。」


営業部長も頷く。


「営業資料も完成しています。」


「まずは既存のお客様を対象に、モニター企業を募集します。」


黒崎は静かに立ち上がる。


「よし。」


「始めよう。」



営業部は、長年付き合いのある取引先へ連絡を始めた。


「お世話になっております。」


「実は、新しいサービスをご案内したくお電話しました。」


電話の向こうの社長が笑う。


「また面白いこと始めたの?」


営業部長も笑う。


「今回は売り込みではありません。」


「一緒に成功事例を作っていただきたいんです。」


「もちろん費用はいただきません。」


「効果を確認するモニターとして、ご協力いただけませんか。」


電話の向こうは少し考え、


すぐに答えた。


「それなら是非やってみたいですね。」


営業部長は受話器を置き、小さく拳を握った。


「決まりました。」


技術部長も立ち上がる。


「では。」


「分析を始めます。」



それから数週間。


営業部と技術部は、モニター企業のホームページを何度も改善した。


商品名。


説明文。


写真。


ページ構成。


検索されそうな言葉。


何度も修正し。


何度も話し合った。


そして――。


ある日の朝。


技術部長がモニターを見つめたまま固まった。


「……増えてる。」


営業部長が駆け寄る。


「どうした。」


「アクセス数です。」


「昨日までの三倍になっています。」


営業部長は画面を見つめる。


「問い合わせも増えてる。」


「注文も入っています!」


その時、電話が鳴った。


営業部長が受話器を取る。


「はい。」


「……え?」


受話器の向こうから、嬉しそうな声が響く。


「注文が次々と入ってきますよ!」


「ホームページを変えただけで、本当に売上が伸びました!」


「ありがとうございます!」


営業部長は受話器を置き、ゆっくり黒崎を見る。


「社長。」


「成功です。」


黒崎は静かに報告書を閉じた。


そして、小さく笑った。


「違う。」


「始まりだ。」


営業部長と技術部長が顔を上げる。


黒崎はゆっくりと言った。


「商品を売る。」


「導入する。」


「個別開発をする。」


「そして。」


「お客様を成功させる。」


「これで初めて。」


「一つの事業になった。」


二人は力強く頷いた。



その日の夕方。


一本の電話がARCへ入る。


「黒崎です。」


悠は受話器を取る。


「神谷社長。」


「SEO。」


「成功しました。」


悠は静かに微笑んだ。


「そうですか。」


「おめでとうございます。」


「ありがとうございます。」


黒崎は少し笑う。


「御社のおかげです。」


悠は首を横へ振った。


「違います。」


「黒崎さんたちが。」


「成功させた事業です。」


電話を切る。


AIが静かに話しかける。


『パートナー企業。』


『売上、利益ともに増加を確認。』


悠は窓の外を眺めながら笑った。


「だから言っただろ。」


「一人で強くなるより。」


「みんなで強くなった方がいい。」


AIは数秒沈黙した。


『……。』


『Win-Winという概念。』


『理解しました。』


悠は苦笑する。


「まだ半分だ。」


「人は。」


「数字だけじゃない。」


AIは静かに答えた。


『……引き続き学習します。』


悠は夜景を見つめながら、小さく頷いた。


また一つ。


ARCの仲間が増えた。


そして。


日本一への道も、また一歩近ついた。

読んでいただきありがとうございます!

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