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似てる

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西園寺恒一がARCへ入社してから、一か月。


会社の景色は確実に変わり始めていた。


営業先へ向かう車の助手席。


悠は商談を静かに見守っていた。


西園寺は慌てない。


急がない。


まず相手の話を聞く。


困っていること。


理想。


予算。


導入後のイメージ。


十分に話を聞いてから、初めてARCショップメーカーを紹介する。


「なるほど。」


「それなら、ちょうどいいかもしれませんね。」


担当者は自然と頷いていた。


商談を終え、会社へ戻る。


契約書を机へ置いた西園寺が笑う。


「また一件です。」


悠も笑った。


「ありがとうございます。」


西園寺は首を振る。


「社長。」


「もう私一人では回りません。」


「営業を増やしましょう。」


悠は迷わず頷いた。


「分かりました。」



それから数週間。


営業経験者を数名採用した。


西園寺は自ら教育係になった。


「商品を売らないでください。」


新人たちは首を傾げる。


「営業は商品を売る仕事ではありません。」


「相手の困りごとを見つける仕事です。」


ある新人が落ち込んで戻ってきた。


「契約が取れませんでした。」


西園寺は怒らない。


「何に困っていました?」


「え……。」


「それを聞きましたか?」


新人は黙った。


西園寺は穏やかに笑う。


「次は、そこから始めましょう。」


営業部は少しずつ育っていった。



営業を完全に西園寺へ任せるようになり、悠はようやく社内へ腰を据えられるようになった。


新機能の企画。


お客様からの要望整理。


ホームページ制作チームとの打ち合わせ。


アルバイトたちへの指示。


事務所では数人の学生アルバイトが忙しそうに作業している。


誰も遊んでいない。


会社全体が動いていた。


悠は静かに周囲を見渡す。


(ようやく……。)


(会社らしくなってきた。)


その時だった。


AIが静かに告げる。


『分析を開始します。』


悠は心の中で微笑く。


(頼む。)


『営業部門。』


『開発部門。』


『デザイン部門。』


『ホームページ制作部門。』


『各部門の稼働を確認。』


数秒後。


『組織構築率五十二%。』


(まだ半分か。)


『ですが。』


『成長速度は予測を上回っています。』


『現在のチームであれば、更なる高みを目指せます。』


悠は静かに頷いた。


(ありがとう、相棒。)



契約は順調に増えていった。


一件。


また一件。


電話は鳴り続ける。


ホームページ制作の依頼も減らない。


ARCショップメーカー。


ホームページ制作。


二本柱は確実に会社を成長させていた。


銀行口座の残高も、目に見えて増えていく。


白石が嬉しそうに言う。


「会社っぽくなってきたね。」


九条も珍しく笑う。


「忙しいけど。」


「悪くない。」


悠も笑った。


「まだ始まったばかりだ。」



その日の夕方。


九条が一枚のパンフレットを持ってきた。


「悠。」


「これ。」


悠は受け取る。


ホームページ作成ソフト。


価格。


九万八千円。


悠はページをめくる。


商品管理。


注文管理。


会員管理。


デザイン変更。


どこか見覚えのある機能が並んでいた。


白石の表情が固まる。


「……似てる。」


九条は静かに言う。


「かなり。」


悠は最後のページを見る。


販売会社。


日本でも名の知れたソフトウェア企業だった。


社員数は数百人。


資本金は、ARCとは比べものにならない。


事務所に静かな空気が流れる。


西園寺はパンフレットを閉じた。


「社長。」


「市場を作れば。」


「必ず大きな会社が入ってきます。」


「これは成功した証拠です。」


悠は静かに頷く。


「つまり。」


西園寺も頷いた。


「ここからが、本当の勝負です。」


AIが静かに分析を終える。


『競争フェーズへ移行します。』


『競合企業を確認。』


『資金力。』


『営業力。』


『知名度。』


『すべてARCを上回っています。』


『現時点での勝率。』


『二十二・四%。』


部屋が静まり返る。


悠はパンフレットを机へ置いた。


そして、静かに笑う。


「面白くなってきた。」


誰もまだ知らない。


ARC最大の試練が。


すぐそこまで迫っていることを。

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