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残り30日

秋が終わり。


冬が来た。


教室の窓から見える景色も、少しずつ色を失っていく。


俺の日常は変わらない。


朝、学校。


放課後、自習室。


帰宅。


勉強。


寝る。


また朝が来る。


その繰り返しだった。


『数学、本日の正答率九十八%。』


『英語長文、平均読解速度が二・三%向上しました。』


『古文単語、完全定着を確認。』


『世界史、一六七ページを復習してください。』


毎日。


毎日。


毎日。


「……疲れた。」


『あと三十分です。』


「鬼か。」


『AIです。』


思わず笑った。



時間だけが過ぎていく。


秋が終わる。


文化祭も。


体育祭も。


修学旅行の話題も。


全部。


俺には関係なかった。


少しだけ寂しい気持ちはある。


でも、不思議と後悔はなかった。


『相棒。』


「ん?」


『窓の外をご覧ください。』


俺は顔を上げた。


白いものが、ゆっくり空から落ちてくる。


「雪か。」


『今年の初雪です。』


しばらく二人で眺めていた。


「前の人生でも。」


「受験の頃、雪が降ってたな。」


『記録しています。』


「……あの頃は。」


「東大なんて。」


「夢のまた夢だった。」


AIは静かに答える。


『今回は違います。』


俺はうなずいた。


「ああ。」


「今回は違う。」



カレンダーを一枚めくる。


一月。


共通テストまで。


残り三十日。


俺はその数字を見つめる。


胸が少しだけ苦しくなる。


『緊張していますか。』


「してる。」


「めちゃくちゃ。」


『正常です。』


「お前は?」


『私は緊張しません。』


「いいな。」


『代わりに、相棒が二人分緊張してください。』


「何だそのシステム。」


『効率的です。』


「効率悪いわ。」


二人で笑う。


笑い終わると、俺は机に向き直った。


参考書を開く。


鉛筆を握る。


深呼吸。


「行くぞ。」


『はい、相棒。』


「ここからが本番だ。」


外では静かに雪が降り続いていた。

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