残り30日
秋が終わり。
冬が来た。
教室の窓から見える景色も、少しずつ色を失っていく。
俺の日常は変わらない。
朝、学校。
放課後、自習室。
帰宅。
勉強。
寝る。
また朝が来る。
その繰り返しだった。
『数学、本日の正答率九十八%。』
『英語長文、平均読解速度が二・三%向上しました。』
『古文単語、完全定着を確認。』
『世界史、一六七ページを復習してください。』
毎日。
毎日。
毎日。
「……疲れた。」
『あと三十分です。』
「鬼か。」
『AIです。』
思わず笑った。
◇
時間だけが過ぎていく。
秋が終わる。
文化祭も。
体育祭も。
修学旅行の話題も。
全部。
俺には関係なかった。
少しだけ寂しい気持ちはある。
でも、不思議と後悔はなかった。
『相棒。』
「ん?」
『窓の外をご覧ください。』
俺は顔を上げた。
白いものが、ゆっくり空から落ちてくる。
「雪か。」
『今年の初雪です。』
しばらく二人で眺めていた。
「前の人生でも。」
「受験の頃、雪が降ってたな。」
『記録しています。』
「……あの頃は。」
「東大なんて。」
「夢のまた夢だった。」
AIは静かに答える。
『今回は違います。』
俺はうなずいた。
「ああ。」
「今回は違う。」
◇
カレンダーを一枚めくる。
一月。
共通テストまで。
残り三十日。
俺はその数字を見つめる。
胸が少しだけ苦しくなる。
『緊張していますか。』
「してる。」
「めちゃくちゃ。」
『正常です。』
「お前は?」
『私は緊張しません。』
「いいな。」
『代わりに、相棒が二人分緊張してください。』
「何だそのシステム。」
『効率的です。』
「効率悪いわ。」
二人で笑う。
笑い終わると、俺は机に向き直った。
参考書を開く。
鉛筆を握る。
深呼吸。
「行くぞ。」
『はい、相棒。』
「ここからが本番だ。」
外では静かに雪が降り続いていた。
読んでいただきありがとうございます!
もし面白いと思ってくれたら、ブクマや評価で応援してもらえると執筆の励みになります!




