表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
17/119

証明

「返すぞ。」


教室に答案が配られていく。


夏休み明け、最後の全国模試。


教室にはいつも以上に緊張した空気が流れていた。


「神谷。」


先生が一枚の紙を持ったまま止まる。


教室が静かになる。


先生は俺を見た。


「……よくやった。」


それだけ言って答案を渡した。


俺はゆっくり裏返す。


全国偏差値。


70.3


一瞬、何も考えられなかった。


七十。


ついに。


七十を超えた。


『目標値を達成しました。』


頭の中で、AIが静かに告げる。


俺は小さく息を吐いた。


「……ありがとう。」


『どういたしまして。』



教室は静まり返っていた。


「七十……。」


「本当に?」


「四十だったよな?」


「半年で?」


誰も笑わない。


誰も疑わない。


もう奇跡ではない。


実力だった。


先生が教壇へ戻る。


「静かに。」


教室はさらに静かになった。


「努力は才能を超えられる。」


先生はゆっくり教室を見渡す。


「私は教師として何度もそう言ってきた。」


「だが。」


「ここまでの成長を、この短期間で見たのは初めてだ。」


教室の視線が、全部俺に集まる。


先生は続ける。


「神谷。」


「前へ。」


「え?」


「いいから来い。」


俺は教壇の前へ立った。


「何か特別な勉強法でもあるのか。」


教室中が耳を澄ませる。


俺は少しだけ考えた。


AIのことは言えない。


だから。


「毎日。」


「やるだけです。」


教室が静かになる。


「昨日より今日。」


「今日より明日。」


「少しずつ。」


「それだけです。」


先生は俺を見つめた。


そして笑った。


「そうか。」


「それが一番難しいんだ。」


俺は席へ戻る。


友人が肩を叩いた。


「東大。」


「行けるな。」


俺は笑う。


「ああ。」


「やっと。」


「スタートラインだ。」



放課後。


誰もいなくなった教室。


窓から夕日が差し込んでいた。


俺は答案を机の上へ置く。


偏差値七十・三。


前の人生なら。


絶対に見ることのなかった数字。


「なあ。」


『はい。』


「ここまで来たな。」


『はい。』


「あと少しだ。」


AIは少しだけ間を置いた。


『ここからが本番です。』


俺は笑う。


「分かってる。」


「だから。」


答案を鞄へしまう。


「最後まで走る。」


『はい、相棒。』


教室を出る。


季節は、もう秋になろうとしていた。

読んでいただきありがとうございます!

もし面白いと思ってくれたら、ブクマや評価で応援してもらえると執筆の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ