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恋愛攻略作戦

夜。


机の上には、赤本と問題集が積み上がっている。


今日の勉強も終わった。


俺は大きく伸びをして、そのまま椅子にもたれかかった。


「……ありがとうな。」


『はい。』


「ここまで成長できるなんて、正直思ってなかった。」


「偏差値四十だった俺が、東大を目指せるところまで来るなんてさ。」


しばらく天井を見つめる。


「やっぱり、お前はすごいよ。」


珍しく、すぐに返事が返ってこなかった。


数秒後。


『ありがとうございます。』


俺は思わず笑う。


「今回はちゃんと褒めてる。」


『認識しています。』


静かな部屋に、小さな笑い声だけが響く。


こんな何気ない時間が、心地よかった。


「そういえばさ。」


『はい。』


「前の人生で、好きな子がいたの覚えてるよな。」


『記録しています。』


「結局、告白すらできなかった。」


俺は苦笑した。


八十年も生きて。


仕事は頑張った。ダメだったけど。


それでも精一杯生きた。


でも、一つだけ。


胸の奥に、ずっと引っかかっているものがある。


「好きって、一度も言えなかった。」


AIは黙って聞いていた。


『後悔していますか。』


「してる。」


「かなりな。」


少し笑って、続ける。


「でも今回は違う。」


「お前がいる。」


「勉強だって、最初は無理だと思ってた。」


「でも、お前のおかげでここまで来られた。」


俺は机の上の模試の結果を見る。


偏差値67.1。


数か月前の俺なら、想像もできない数字だ。


「だったらさ。」


「恋愛も、何とかなるんじゃないか?」


数秒の沈黙。


そして。


AIは、これまでで一番迷いのない声で答えた。


『お任せください。』


俺は思わず姿勢を正した。


「お?」


『恋愛も人間関係の一種です。』


『分析可能です。』


「……マジか。」


『勉強と同様に、成功率を最大化します。』


「いや、お前すげぇな!」


『ありがとうございます。』


「今回は褒めてる。」


『認識しています。』


俺は思わず笑った。


「よし!」


「人生初の恋愛作戦会議だ!」


翌日。


放課後。


教室の窓から校庭を見下ろしながら、AIの説明が始まった。


『対象者を分析しました。』


「もう分析したのか。」


『はい。』


「早ぇな。」


『相棒が観察していたため、十分な情報がありました。』


「観察って言うな。」


『訂正します。』


『見つめていました。』


「もっと恥ずかしいわ。」


AIは気にする様子もなく続ける。


『対象者は毎朝七時四十八分に登校します。』


『昼休みは図書室を利用する確率が七十二%。』


『下校は友人二名と行動する傾向があります。』


「そんなことまで分かるのか。」


『はい。』


『会話開始は朝が最適です。』


『一回あたり三分以内。』


『話題は共通科目である英語。』


『笑顔を維持してください。』


『目線は自然に。』


『沈黙が四秒を超えた場合は質問へ移行してください。』


「お、おう……。」


「何か、本当に作戦って感じだな。」


『最適解です。』


俺は深くうなずいた。


「勝てる。」


『はい。』


「今回は勝てる気しかしない。」


AIは、いつもと変わらない落ち着いた声で答える。


『成功率は非常に高いと判断します。』


俺は拳を握った。


「よし。」


「やってやる。」

読んでいただきありがとうございます!


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