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追いついた、その先

一か月後。


競合会社。


開発室には大勢の社員が集まっていた。


技術責任者が最後の確認を終える。


「負荷試験、問題ありません。」


「メッセージ機能、正常です。」


「つながり機能も問題ありません。」


「更新一覧、正常です。」


「セキュリティチェックも完了しました。」


技術責任者は画面を見つめる。


そして、ゆっくり息を吐いた。


「完成です。」


一瞬の沈黙。


次の瞬間、開発室から大きな拍手が起こった。


「よし!」


「間に合った!」


「本当に一か月で作ったぞ!」


一か月。


他の開発を止めた。


人員も増やした。


休日も返上した。


ARCBOOKの交流機能を徹底的に研究した。


そして、ようやく完成した。


社長も開発室へ姿を見せる。


「よくやった。」


技術責任者が頭を下げる。


「ありがとうございます。」


社長は新しい画面を見る。


友達申請。


承認。


更新一覧。


メッセージ。


最低限のプロフィール。


ARCBOOKとほぼ同じものが揃っていた。


役員の一人が笑う。


「これで条件は同じですね。」


別の役員も頷く。


「あとは広告で呼び戻せばいい。」


社長も小さく頷いた。


「大々的に発表しよう。」


「はい。」


「ARCBOOKだけにある機能ではないと市場に知らせる。」


「分かりました。」


ようやく。


追いついた。


社内には久しぶりに明るい空気が戻っていた。



その日の午後。


ARC本社。


西園寺が競合の発表資料を持ってきた。


「社長、来ました。」


悠は資料を見る。


競合サービス。


大型アップデート。


友達機能。


メッセージ。


更新一覧。


西園寺が苦笑する。


「本当に一か月で作りましたね。」


悠は頷く。


「優秀だよ。」


白石も画面を覗き込む。


「かなり似てる。」


九条が一言。


「似てる。」


白石。


「九条君、怒らないの?」


「別に。」


「真似されたのに?」


「作れるなら作る。」


悠は笑った。


「それが市場競争だ。」


高橋も資料を確認する。


「法律上も問題ありません。細かい部分は変えていますし、機能そのものを独占することはできません。」


白石は少し不満そうだった。


「分かってるけど、やっぱりずるい。」


西園寺が笑う。


「前にも同じこと言ってましたよ。」


「だってずるいものはずるい。」


その時、九条が悠を見る。


「こっちも準備が終わってる。」


西園寺。


「うちもついに発表か?」


九条。


「コミュニティ機能いつでもいける。」


一瞬、静かになった。


白石が笑う。


「そうだね。」


西園寺。


「今日競合に合わせる?」


悠は時計を見る。


「予定どおりだ。」



午後八時。


ARCBOOK。


新しい機能が追加された。


**コミュニティ。**


映画。


音楽。


スポーツ。


ゲーム。


料理。


旅行。


学校。


資格。


仕事。


利用者自身がテーマを決め、自由に集まれる場所。


今までARCBOOKで繋がる相手は、基本的に知っている人だった。


だが、今日から違う。


同じものが好き。


同じことに悩んでいる。


同じものを目指している。


それだけで人は集まれる。


公開直後からコミュニティが作られ始めた。


『映画好き集まれ!』


『阪神ファン』


『大学受験情報交換』


『おすすめラーメン』


『海外旅行好き』


『ゲーム攻略研究会』


数十。


数百。


そして、さらに増えていく。


知らない人同士が話す。


情報を交換する。


気が合えば、つながる。


ARCBOOKの中だけで、新しい人間関係が生まれ始めた。



翌日。


競合会社。


役員会議。


テーブルには新聞や雑誌が並んでいた。


自社の大型アップデート。


反応は悪くない。


『友達機能追加!』


『メッセージが便利になった。』


『ARCBOOKと似た機能が使えるようになった。』


役員が笑う。


「上々ですね。」


「広告も今日から本格的に始まります。」


社長も頷く。


「ここからだ。」


その時、マーケティング担当者が会議室へ入ってきた。


「社長。」


「何だ?」


「ARCBOOKも昨日、新しい機能を追加しました。」


社長の表情が止まる。


「新しい機能?」


資料が配られる。


**コミュニティ機能。**


役員の一人が眉をひそめる。


「何ですか、これは?」


担当者が説明する。


「共通の趣味や目的を持つ利用者が、自由に集まれる機能です。」


「知らない人同士が?」


「はい。」


画面にはすでに多くのコミュニティが並んでいた。


映画。


音楽。


スポーツ。


ゲーム。


受験。


旅行。


料理。


そして、その数は今も増えている。


会議室が静かになった。


一人の役員が小さく呟く。


「またか……。」


社長は何も言わない。


一か月。


必死で走った。


ようやく。


ARCBOOKと同じ場所へたどり着いた。


その日に。


ARCBOOKはまた先へ進んだ。


技術責任者が資料を見つめる。


「これも作りますか?」


社長はすぐには答えなかった。


しばらく画面を見る。


そして言った。


「直ぐに準備にとりかかれ。」


役員たちが顔を上げる。


「でも、まずは今の機能で勝負する。」


「ですが。」


「こちらにも交流機能はある。」


「機能だけなら、もう大きな差はない。」


社長はマーケティング担当を見る。


「広告予算を増やせ。」


「どれくらいですか?」


社長は少し考える。


「倍だ。」


会議室がざわついた。


「社長、それはかなりの金額になります。」


「分かっている。」


「芸能人も追加する。」


「キャンペーンも打て。」


「せっかく追いついたんだ。」


社長はARCBOOKの資料を見る。


「ここで市場を取り戻す。」


「はい。」


役員たちが再び動き始めた。


まだ負けてはいない。


同じ機能は作った。


知名度もある。


資金もある。


広告を増やせば、人は戻ってくる。


競合はそう信じた。



ARC本社。


西園寺が競合の広告出稿計画を見る。


「社長、向こうが広告をかなり増やすみたいです。」


悠。


「そうか。」


「大丈夫ですか?」


悠はARCBOOKを見る。


そこでは今も、新しいコミュニティが生まれている。


友達が友達を呼ぶ。


知らない人同士が出会う。


そして、また新しいつながりが生まれる。


悠は静かに笑った。


「やらせておけばいい。」


西園寺。


「強気ですね。」


「広告で人は呼べる。」


悠は画面を見る。


「でも、人間関係までは買えない。」


競合はさらにアクセルを踏んだ。


ARCBOOKも止まらない。


勝負は、次の段階へ入った。

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