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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
3章:流れを繋ぐ者たち

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第97話 D級の距離

毎日20時投稿

D級ダンジョンの入口は、やはりE級までとは空気が違っていた。


今回のダンジョンは王道のダンジョンというだけあって、人が少ないわけではない。


それぞれが周囲を意識している。


装備の確認をする者、静かに地図を広げる者、短い言葉だけ交わして潜っていくパーティ。


無駄な声が少ない。


「……人、多いですね」


エンが小さく言った。


「このダンジョンは、いつもこんなもんだよ」


カナが答える。


「単独ってより、複数パーティが同時に入ることも多いしね」


ノアも周囲を見ながら頷いた。


「互いの戦闘音が届きます」


「うん。だから距離感が大事」


カナは軽く肩を回す。


「近すぎると邪魔になるし、離れすぎると万が一の時に助けが得られない」


ダンジョンに入ってしばらく進むと、前方から戦闘音が聞こえてきた。


金属がぶつかる乾いた音。


短い足音。


「先行パーティですね」


ノアが言う。


エンは小球を浮かせたまま速度を落とした。


追いつかない距離を保つ。


E級ではあまりなかった感覚だ。


やがて戦闘音が止む。


通路の先から現れたのは、見覚えのある顔だった。


「……エン?」


直剣を肩に乗せた少年が、驚いたように目を細める。


「ジン」


エンも思わず名前を口にした。


同い年の冒険者。


スキル授与の時、【球術】を見て笑っていた一人だった。


「D級来てたんだってな」


「うん。最近」


「へえ」


ジンは軽く頷き、視線を動かす。


空中に浮かぶ球。


カナとノアの位置。


ほんの一瞬で状況を把握したようだった。


「……噂は聞いた」


ジンが言う。


「壁作るやつ、倒したんだって?」


エンは少し困ったように笑う。


「たまたまうまくいって」


「いや、あれはたまたまじゃ無理だろ。俺たちのパーティは諦めたクチだぜ」


ジンはあっさり言った。


からかう様子はない。


事実として受け止めている声音だった。


「正直さ」


直剣をくるりと回しながら続ける。


「ちょっと驚いた」


エンが黙る。


「前は、何やってるか分かんなかったから」


ジンは苦笑した。


「でも今は分かる。それ、強いんだな」


球を見ながら言う。


ただ眺めているわけではない。


動きを読んでいる視線だった。


カナが横から口を挟む。


「分かるの?」


「なんとなく」


ジンは肩をすくめた。


「敵の逃げ場を潰してるんだろ。あれ」


エンは少し驚く。


説明されたことはない。


だが、間違っていなかった。


「……悔しいけどさ」


ジンが続ける。


「ちゃんと強くなってるな」


言い方は軽い。


だが、以前のような見下しはなかった。


同じ場所に立っている者の言葉だった。


「今度、どっかで競おうぜ」


「競う?」


「どっちが早く奥まで行けるか、とか」


挑発ではない。


自然な提案だった。


ジンにとって、それが一番分かりやすい比較なのだろう。


エンは少し考えてから、笑った。


「いいよ」


「よし」


ジンは満足そうに頷く。


「じゃあ今日はこの辺で引く。近いと動きづらいしな」


それがD級の距離だった。


干渉しない。


だが、無関係でもない。


ジンのパーティが去っていく。


その背中を見送りながら、カナが小さく笑った。


「いいね、ああいうの」


「そうですか?」


「うん。ちゃんと見てる」


ノアも静かに言う。


「動きを読んでました」


エンは少しだけ考える。


昔は笑われていた。


今は違う。


完全に理解されているわけではない。


それでも、同じ場所で競う相手として見られている。


それが少しだけ、嬉しかった。


「行きましょう」


ノアの声で、エンは前を見る。


小球が静かに前へ動き出す。


D級では、自分たちだけが戦っているわけではない。


同じ階層に、同じ目標を持つ冒険者がいる。


その中で、自分たちの流れを作る。


フロウラインは、また奥へ進み始めた。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

★★★★★評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです。


本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の別作です。

現代日本×ヒーローSF

 「魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》」

蜂型の機兵が侵略者と戦う物語です。

もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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