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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
3章:流れを繋ぐ者たち

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第96話 評価というもの

毎日20時投稿

ギルドに戻ったとき、いつもと空気が少し違っていた。


ざわついている、というほどではない。


だが視線が多い。


受付前を通るだけで、何人かの冒険者がこちらを見ているのが分かった。


「……なんか見られてません?」


エンが小声で言う。


「見られてるね」


カナは気にした様子もなく答えた。


ノアはいつも通り無表情だが、周囲の様子はきちんと観察している。


素材の換金を終えたあと、受付嬢が少し困ったような顔で言った。


「今回の討伐なんですが……少し確認が入りまして」


「確認?」


「はい。討伐報告が、珍しいもので」


そう言って奥へ引っ込む。


数分後。


戻ってきたのは、受付嬢だけではなかった。


周囲にいた何人かの冒険者も、自然と近くに集まっている。


「……あんたたち、本当に倒したのか?」


年上の冒険者が声をかけてきた。


責めるような口調ではない。


純粋な確認だった。


「はい」


エンが頷く。


「地形を変えるやつですよね」


「やっぱりか……」


男は頭を掻いた。


「俺らも前に挑んだことあるが、連携がぐちゃぐちゃにされてな。あれ、まともに戦えねえんだよ」


周囲からも同意の声が上がる。


「あの壁、視界切られると終わりだ」


「前衛と後衛が分断されるんだよな」


「逃げるしかなくなる」


エンは少し驚いた。


自分たちにとっては、今回のリベンジだった。


だが他のパーティにとっては、そもそも倒す対象ではなかったらしい。


「討伐記録も……ほとんどないんです」


受付嬢が小さく補足する。


「確認したところ、この街ではかなり久しぶりになります」


その言葉に、周囲がざわついた。


「マジかよ……」


「新人上がりのD級だろ?」


「三人で?」


視線が集まる。


だが嫌なものではなかった。


疑いというより、純粋な驚きだった。


カナが肩をすくめる。


「相性が良かっただけだよ」


「いや、あれ相性でどうにかなる相手じゃねえって……」


冒険者が苦笑する。


「普通は連携崩された時点で終わる」


エンは少しだけ考えた。


確かにそうかもしれない。


自分たちは、たまたま流れが切れなかった。


ただ、それだけだ。


だが――。


「……球が止まらなかったんです」


気づけば口にしていた。


周囲が一瞬静かになる。


「壁があっても、関係なかったので」


説明としては簡単すぎた。


だが、それが事実だった。


「……変わってんな」


誰かが笑った。


悪意はない。


むしろ楽しそうだった。


「でも、だから勝てたのか」


受付嬢が改めて頭を下げる。


「正式に討伐確認が取れました。報酬はこちらになります」


提示された金額は、普段より少し多かった。


危険度補正が入っているらしい。


カナが口笛を吹く。


「へえ、悪くないね」


ギルドを出ると、夕方の光が差し込んでいた。


エンは少しだけ肩の力を抜く。


「……なんか、すごいことしたみたいになってましたね」


「まあね」


カナは笑う。


「実際、嫌われてた相手だし」


ノアも小さく頷く。


「普通は戦いにくいです」


エンは空を見上げた。


実感は、あまりない。


できることをやっただけだ。


ただ、周りの反応が少し変わった。


それだけだった。




ギルドの二階。


窓際から、その様子を見ている人物がいた。


ギルドマスターだった。


「……やっぱりな」


小さく呟く。


報告書に書かれていた内容。


球が止まらない戦い方。


地形に縛られない動き。


「普通じゃない」


だが、それを今伝える必要はない。


本人はまだ、自分の異質さを理解していない。


それでいい。




ギルドの外では、三人が並んで歩いていく。


笑いながら、次の話をしている。


まだ、自分たちがどう見られ始めているのかも知らずに。


フロウラインの名前は、静かに広がり始めていた。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

★★★★★評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです。


本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の別作です。

現代日本×ヒーローSF

 「魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》」

蜂型の機兵が侵略者と戦う物語です。

もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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