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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
3章:流れを繋ぐ者たち

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第86話 D級ダンジョン

毎日20時投稿

D級ダンジョンの入口は、E級のそれとは空気が違っていた。


人の出入りはある。だが数は少ない。


談笑する声もなく、装備の確認をする音だけが静かに響いている。


「……やっぱり、ちょっと違いますね」


エンが小さく言う。


「当たり前」


カナは肩を回しながら答えた。


「D級はからは死亡事故も増えるからね。無理する人は減る」


ノアは何も言わず、入口の奥を見ていた。


緊張している様子はない。ただ、周囲の動きを観察している。




今回のダンジョンは遺跡型だった。


石造りの通路。ところどころ崩れた壁。視界は悪くないが、通路の分岐が多い。


「無理しません」


エンが言う。


「まずは様子見で」


「了解」


「はい」


二人の返事は短い。




最初の敵は、これまでと大きくは変わらなかった。


獣型モンスターが一体。


エンは小球を展開し、いつものように進路を制限する。


問題なく流れができる。


ノアの一撃で戦闘終了。


ここまでは、E級と変わらない。




違和感が出たのは、その次だった。


通路の奥で、低い音が響く。


石が擦れるような音。


「……止まって」


カナが小さく言う。


次の瞬間。


横の壁が、ゆっくりとせり上がった。


「え?」


エンが思わず声を漏らす。


通路が、変わった。


さっきまで繋がっていた道が、完全に塞がれている。




「魔法です」


ノアが即座に言った。


「地形操作系」


その直後、奥からモンスターが現れる。


細身の亜人型。手を掲げている。


魔法を使っているのは、あれだ。


エンはすぐに小球を動かした。


だが、思った位置に流れない。


壁が増えたことで、逃げ道の計算が狂う。


モンスターが横へ移動する。


小球が追いきれない。


「……違う」


エンが小さく呟く。


いつもの感覚がない。


流れが続かない。


カナが前に出て時間を稼ぐ。


ノアは踏み込めない。


撃てる位置が作れない。


モンスターは距離を取りながら、さらに壁を生成する。


通路が狭くなる。


視界が切れる。


「エン!」


「分かってます!」


大球を動かす。


だが、壁に阻まれて回り込めない。


流れが、途切れる。


ノアが一瞬だけ踏み込んだ。


だがすぐに止まる。


「無理です」


短い判断だった。


撃てば当たるかもしれない。


だが外せば終わる。


今はまだその位置ではない。




壁がさらに動く。


完全に通路が分断される寸前だった。


エンは歯を食いしばる。


今までなら、ここで終わっていた。


だが――。


「……撤退します!」


即座に判断した。


カナが頷き、ノアも迷わない。


距離を取り、来た道を戻る。


追撃はない。


だが、背後で石の動く音が長く響いていた。




ダンジョンの外に出た時、三人ともすぐには言葉を出さなかった。


失敗だった。


明確に。


エンはしばらく入口を見つめる。


「……流れが、作れませんでした」


自分でも分かっていた。


今までの戦い方が通じなかった。


カナが腕を組む。


「地形が変わるなら、転がすのはきついね」


ノアも頷く。


「動きが読めません」




エンは静かに小球を握った。


滑らかな表面。


完成された形。


だが、使い方が追いついていない。


ふと、ギルドマスターの言葉がよぎる。


――なぜ浮かせない?


その時は深く考えなかった。


だが今は違う。


転がるから、止まる。


地形に縛られる。


もし――。


エンは顔を上げた。


「……やっぱり、やり方を変えます」


二人がこちらを見る。


「だから少し、時間ください」


次の戦いに向けて。


流れを、もう一度作り直すために。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

★★★★★評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです。


本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の別作です。

現代日本×ヒーローSF

 「魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》」

蜂型の機兵が侵略者と戦う物語です。

もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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