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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
3章:流れを繋ぐ者たち

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第85話 完成した一撃

毎日20時投稿

E級ダンジョンの奥は、いつもより静かだった。


足音と、球が床をかすめる小さな音だけが響く。


エンは小球を二つ前方へ出し、大球を少し後ろに置いた。通路の幅、壁の位置、逃げ場になる空間を確認する。


いつも通りだ。


だが今日は、少しだけ違った。


後ろにいる二人の動きが、もう分かっている。


「来ます」


カナが短く言った。


岩陰から現れたのは、装甲の厚い獣型モンスターだった。E級でも奥に出る個体。動きは速くないが、正面からでは削りにくい。


ノアが槍を構える。


まだ動かない。


エンは小球を転がした。


一つは正面へ。もう一つは右側へ回す。


獣が左へ逃げる。


そこへ大球を滑り込ませる。


進路が狭まる。


獣は一瞬だけ足を止めた。


フロウラインに加入する前なら、ここでノアは踏み込んでいた。


だが今回は違う。


動かない。


待っている。


エンはわずかに息を吐いた。


流れが続いている。


焦らなくていい。


カナが前に出て、軽く武器を合わせる。


押し込まない。


弾いて、横へ流す。


獣が反射的に動く。


その先に、小球がある。


踏み込みが鈍る。


さらに大球が進路を塞ぐ。


逃げ場がなくなる。


獣が、初めて迷った。


「……今です」


エンが言った瞬間だった。


ノアが踏み込む。


動きに迷いはない。


止めていた力を、一気に解放する。


短槍が一直線に伸びた。


鈍い衝突音。


装甲が砕ける。


獣の体がその場で完全に止まり、崩れ落ちた。


余計な動きは一切なかった。


一撃。


それだけだった。


ノアは槍を引き抜き、軽く息を吐いた。


「……当たりますね」


ぽつりと呟く。


驚きではなく、確認するような声だった。


「避けない」


「避けられない、ですね」


エンが答える。


言ってから、少しだけ照れくさくなる。


だがノアは否定しなかった。


その後も戦闘は続いた。


二体同時に現れた場面でも、流れは崩れない。


エンが位置を作り、カナが支え、ノアが終わらせる。


戦闘時間は短い。


だが、急いでいるわけではなかった。


自然に終わる。


そんな感覚だった。




三戦目。


やや大型の個体が現れた。


E級としてはかなり硬い。


カナが軽く盾で受け止めるが、すぐには崩れない。


エンは小球を回し、逃げ道を削る。


獣が強引に突破しようとする。


大球が進路を変える。


わずかなズレ。


その瞬間。


ノアが動いた。


踏み込み。


突き。


衝撃音が通路に響いた。


今度は槍先がわずかに歪んだ。


だが、敵はその場で崩れ落ちていた。


戦闘が終わり、ノアは槍を見下ろす。


「……これも終わりですね」


「後で替えよう」


カナが軽く言う。


それだけだった。


誰も驚かない。


それが普通になりつつあった。




帰り道。


ノアがぽつりと呟いた。


「今までと、違います」


エンが振り向く。


「なにがです?」


「撃つ場所を探さなくていい」


短槍を肩に担ぐ。


「待っていれば、来る」


少しだけ言葉を探してから続けた。


「……初めてです」


その声は、小さかった。


エンは何も言わなかった。


ただ少しだけ嬉しくなる。


自分のやっていることが、誰かの強さに繋がっている。


それが、はっきり分かったからだ。




ダンジョンの出口が見える。


夕方の光が差し込んでいた。


フロウラインの戦い方は、ようやく形になった。


流れを作り、繋ぎ、終わらせる。


その一撃は、もう迷わない。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

★★★★★評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです。


本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の別作です。

現代日本×ヒーローSF

 「魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》」

蜂型の機兵が侵略者と戦う物語です。

もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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