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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
3章:流れを繋ぐ者たち

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第81話 短槍使いのノア

毎日20時投稿

扉が閉まる。


部屋の空気が、わずかに変わった。


ノアと名乗った少女は、机の前まで歩いてきて立ち止まった。


背中には一本の短槍。装飾はほとんどなく、実用一点張りの武器だった。


年齢はエンと同じくらいだろう。


だが立ち方が違う。無駄に力が入っていない。いつでも動ける姿勢だった。


「ノアです」


もう一度、簡潔に名乗る。


感情は薄い。だが無愛想というより、必要以上に踏み込まない距離感だった。


「今回、D級に上がるなら三人以上の編成が望ましい」


ギルドマスターが言う。


「実力と相性を見て、候補として呼んだ」


ノアは軽く頷いた。


「話は聞いてます。球を使う人ですよね」


エンは少しだけ苦笑する。


「……はい」


「変わった戦い方をするって」


悪意はない。ただ事実を確認しているだけの口調だった。


「先に言っておきます」


ノアは視線を逸らさずに続けた。


「私は、使いづらいです」


あまりにもあっさりした言い方に、エンは一瞬言葉を失った。


「スキルは《貫突》」


短く説明する。


「一撃の威力だけが上がります。溜めた分だけ、威力が伸びます」


「単純だな」


ギルドマスターが補足する。


「だが伸び幅が大きい。報告では、単発火力はB級相当だ」


エンが思わず目を見開いた。


「B級……?」


「最大出力時だ」


ノアは淡々と続ける。


「ただし、準備が必要です。動きながらは使えません。止まって、狙って、踏み込む」


つまり。


「……ためる時間を稼ぐ必要があるし、と当たらないと意味がないってことですか?」


「はい」


即答だった。


「それと」


ノアは少しだけ視線を下げる。


「武器がもちません」


背中の短槍を軽く叩く。


「全力で撃つと、だいたい壊れます」


「全力でなくとも、スキルを数発も撃てば壊れてしまいます」


カナの眉がわずかに動いた。


「……毎回?」


「ええ」


淡々とした返答。


「だから長期戦は苦手です。一撃外したら終わりです」


ギルドマスターが口を挟む。


「これまで組んだパーティでは、そこが問題だった」


「準備している間に戦闘が終わるか、動かれて外すか」


ノア自身が続けた。


「結果、火力はあるけど安定しない。そう言われてきました」


言葉に感情は乗っていない。


だが慣れている響きだった。


エンは少し考えてから口を開いた。


「じゃあ……当たれば強い、ってことですよね」


「そうです」


ノアは迷いなく答える。


「当たれば終わります」


断言だった。


自信ではなく、事実として。


カナが腕を組む。


「武器、壊れるのは仕方ないの?」


「強度を上げても意味ないです」


ノアは首を振った。


「威力に対して、負荷が勝るので」


ギルドマスターが補足する。


「無理に高級品を使っても消耗が早いだけだ。結果的に金が続かない」


カナの目が少しだけ細くなる。


「……なるほど」


何か考えている顔だった。


「だから、先に言っておきます」


ノアは静かに言う。


「合わなければ、すぐ抜けます」


部屋が少し静かになる。


「無理に合わせるつもりはないですし、合わせてもらうつもりもありません」


その言い方は冷たいというより、諦めに近かった。


今までそうしてきたのだろう。


エンは少しだけ考えてから答えた。


「……分かりました」


ノアがわずかに眉を動かす。


「でも、一回は試してみましょう」


自然に言葉が出た。


「やってみないと、合うかどうか分からないですし」


ノアは数秒だけ黙った。


予想していなかった返答だったのかもしれない。


「……そうですね」


短く答える。


それ以上の感情は見せない。


ギルドマスターが小さく息を吐いた。


「話は終わりだ」


立ち上がる気配。


「D級登録はこの三人で進める。あとは現場で判断しろ」


それだけだった。


部屋を出る直前、エンはふとノアの短槍に目を向けた。


一撃で壊れる武器。


だが、それでも使う。


その理由は、少し分かる気がした。


強いからだ。


単純で、まっすぐな強さ。


D級の戦いは、きっと今までとは違う。


そんな予感が、静かに胸の中に広がっていた。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

★★★★★評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです。


本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の別作です。

現代日本×ヒーローSF

 「魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》」

蜂型の機兵が侵略者と戦う物語です。

もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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