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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
3章:流れを繋ぐ者たち

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第80話 面談

毎日20時投稿

面談の呼び出しは、三日後だった。


受付で名前を告げると、奥の階段へ案内される。


普段、冒険者が立ち入ることのない区画だ。階下の喧騒が遠ざかり、足音だけが静かに響く。


「……なんか、緊張しますね」


エンが小声で言うと、カナは肩をすくめた。


「私は別に。怒られるわけじゃないでしょ」


「そうですけど」


とはいえ、ギルドマスターと直接話す機会など普通はない。E級までの昇格は書類と実績で済んでいた。


D級は違う。


その意味を、今になって実感していた。




案内された部屋は質素だった。


大きな机と書類棚。壁には周辺ダンジョンの地図が貼られているだけだ。


机の向こうに座る男が顔を上げた。


「来たか」


落ち着いた声だった。威圧感はないが、視線だけが鋭い。


「座ってくれ」


二人は向かいに腰を下ろす。


しばらく、紙をめくる音だけが続いた。


「E級ダンジョン四回制覇。加えてフラッド時の制圧参加」


ギルドマスターは書類を閉じる。


「実績としては問題ない」


淡々とした口調だった。


「だがD級は、実績だけでは上げない」


エンは背筋を伸ばす。


「理由は分かるか?」


「……責任、ですか」


「そうだ」


頷きが返る。


「D級からは、自分の判断が他人に影響する。現場の安定を崩す者は上げられない」


そこで一度言葉を切り、少しだけ表情を緩めた。


「もっとも」


「君は、崩さない側だと聞いている」


“聞いている”。


その言い方に、エンはわずかに目を瞬かせた。


「私は現場をすべて見ているわけではない」


ギルドマスターはあっさりと言う。


「報告書と、戻ってきた冒険者の話だ」


指先で机を軽く叩く。


「妙な戦い方をする新人がいる、と何度も聞いた」


カナが小さく笑いをこらえた。


「妙、ですか」


「ああ」


ギルドマスターは頷く。


「派手ではないが、前線が崩れない。気づけば敵の動きが制限されている。そういう話だ」


エンは少しだけ視線を落とした。


自分では、普通にやっているつもりだった。


「そこで一つ、確認したかった」


ギルドマスターの視線が、エンの手元へ向く。


いつの間にか取り出していた小球。


「なぜ転がしている?」


唐突な質問だった。


エンは言葉に詰まる。


「……え?」


「君のスキルは、浮かせられるはずだ」


「はい」


「なら、なぜ浮かせない?」


答えが出なかった。


本当に、考えたことがなかった。


球は転がすものだと思っていた。


それが一番うまくいったから。


それ以上の理由はない。


「もう一つ」


ギルドマスターは続ける。


「複数の球を同時に操作していないつもりか?」


「してない……と思います」


そう答えながら、自信がなかった。


「報告では、常に複数の球が動いているらしい」


「止まっているように見えても、位置が微妙に変わっていると」


エンは思わず小球を見つめた。


無意識に、動かしているのかもしれない。


だが自覚はない。


「また、投げてもいいだろう」


ギルドマスターは続けた。


「速度を乗せてぶつけるだけでも、十分な威力は出るはずだ」


その発想に、エンははっとする。


確かにそうだ。


転進で威力が出るのなら、最初から速く動かして当てればいい。


なぜ考えなかったのか。


いや――。


考えたことすらなかった。


胸の奥が、少しだけ熱くなる。


(……できるのか?)


浮かせる。


投げる。


同時に動かす。


今までやらなかっただけで、できる可能性がある。


試してみたい。


そんな気持ちが、自然と湧いてきた。


「……考えたこと、ありませんでした」


エンは正直に言った。


「でも……」


少しだけ言葉を探す。


「これから、試してみます」


ギルドマスターは小さく頷いた。


「そうだろうな」


否定も肯定もしない。


ただ確認しただけ、という様子だった。


「だが」


続けて言う。


「君は今の戦い方で結果を出している」


視線がまっすぐ向く。


「無理に変える必要はない。選ぶのは君だ」


その言葉は、助言というより確認に近かった。


その横で、カナが腕を組んで考え込んでいる。


「……球って」


ぽつりと呟く。


「全部、同じじゃなくてもいいのか」


ギルドマスターの目がわずかに細くなる。


「そう考える者もいるだろうな」


それ以上は言わない。


「……」


しばらくの沈黙のあと、ギルドマスターは椅子にもたれた。


「D級昇格については問題ない」


淡々と告げる。


「ただし――D級からは二人では少ない」


二人が顔を上げる。


「そこでだ。相性の良さそうな者がいる」


扉の方へ視線が向く。


「入れ」


ノックの音。


扉が開いた。


短槍を背負った少女が、静かに部屋へ入ってくる。


こちらを一瞥し、感情をあまり乗せない声で言った。


「……ノアです」



いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

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本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の別作です。

現代日本×ヒーローSF

 「魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》」

蜂型の機兵が侵略者と戦う物語です。

もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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