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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
2章:戦い方のかたち

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第78話 落ちる一撃

毎日20時投稿

風が吹きすさぶ。


獣は高所で身を低くし、次の攻撃の機会を窺っていた。


だがエンも先ほどまでとは違う。


エンはもう、追っていなかった。


小球を一つ、斜面へ流す。


もう一つを崩れた柱の根元へ置く。


戻さない。


動かさない。


ただ、そこに置く。


獣が跳ぶ。


いつものように安全な足場へ――降りようとして、わずかに動きを変えた。


そこには小球がある。


踏み込めない。


別の場所へ降りる。


だがそこも、さっきまでとは違う。


段差の先に巨大球が転がり、退路を塞いでいた。


「……そうか」


エンは小さく息を吐く。


分かった。


流れは作るものじゃない。


相手が選べる場所を減らせば、自然にできる。


獣が低く唸る。


初めて、迷いが見えた。


跳ぶ先がない。


安全な着地点が、減っている。


「いいよ、エン」


カナが前に出る。


「そのまま」


獣が動く。


強引に距離を詰めてきた。


もう選択肢が少ない。


カナが一撃を受け止め、横へ流す。


完全に止めない。


逃げ道を一つだけ残す。


エンは上を見上げた。


崩れた天井。


斜面。


そして、自分の上にある大球。


落ちる場所は、もう決まっている。


獣が最後の跳躍を選ぶ。


逃げるための一手。


だがその先は――。


「転進」


エンの声と同時に、大球が落ちた。


回転を乗せたまま、重力に引かれて加速する。


逃げ場はない。


獣が着地した瞬間、真上から叩きつけられた。


鈍い衝撃音が遺跡に響く。


砂埃が舞い上がる。


そして――獣は動かなくなった。


風の音だけが残る。


小球がゆっくりと転がり、どこかで止まった。


エンはしばらく動かなかった。


呼吸を整え、ようやく肩の力を抜く。


「……終わりました」


「うん」


カナが笑う。


「ちゃんと倒せたね」


エンは周囲を見回す。


球はもう循環していない。


それでも、戦いは繋がっていた。


戻ってこなくても、問題なかった。


「……できましたね」


「うん」


カナは軽く頷く。


「戦い方が完成しました」


その言葉に、エンは少しだけ照れたように笑った。


二人の間を風が吹き抜ける。


崩れた遺跡の上には、青い空が見えていた。


特別な何かが変わったわけではない。


新しい技を覚えたわけでもない。


ただ――うまくいった。


それだけだった。


だが、それだけのことがエンにとっては一番重要だった。


「帰りましょうか」


「そうだね」


二人は並んで歩き出す。


E級ダンジョン、五回目の攻略。


最後の戦いは、静かに終わった。


だが胸の中には、不思議と軽い達成感が残っていた。


次へ進める。


そんな確かな感覚と一緒に。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

★★★★★評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです。


本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の別作です。

現代日本×ヒーローSF

 「魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》」

蜂型の機兵が侵略者と戦う物語です。

もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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