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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
2章:戦い方のかたち

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第77話 風喰いの獣

毎日20時投稿

低い唸り声は、風に混じって響いていた。


遺跡の奥へ進むにつれ、崩落の度合いはさらに激しくなる。


柱は途中で折れ、床は段差だらけになり、上から吹き込む風が強くなっていた。


そして――気配が違う。


「……いますね」


エンが小さく言う。


視界の先、高い瓦礫の上。


そこにいた。


しなやかな体躯。低く構えた四足。風に揺れる毛並み。


大型の猫科モンスター。


E級の最奥に現れる個体として、明らかに格上だった。


「速そうだね」


カナが静かにハンマーを構える。


獣は動かない。


だが、視線だけがこちらを捉えている。


次の瞬間――消えた。


「上!」


カナの声と同時に、頭上から影が落ちる。


エンは反射的に小球を動かした。


だが間に合わない。


獣は着地と同時に方向を変え、すでに次の足場へ跳んでいる。


「……速い」


小球が追いつかない。


着地位置が読めない。


今までの敵は、流れに入ってきた。


だがこいつは違う。


流れの外を動く。


エンは大球を動かす。


転進で加速した大球は、相手の進路を塞ぐ。


だが獣は直前で方向を変え、壁を蹴って回避した。


金属球が虚しく石壁を打つ。


「くっ……」


また追っている。


気づいた瞬間、エンは歯を食いしばった。


今までと逆だ。


相手の動きに合わせて球を動かしている。


それでは遅い。


再び影が落ちる。


カナが受け止め、横へ弾く。


だが深追いはできない。


獣はすぐに距離を取り、上段へ逃げる。


高所。


段差。


崩れた柱。


安全な場所だけを選んで移動している。


「……頭いいですね」


「うん。嫌なタイプだ」


カナが短く答える。


エンは小球を散開させる。


着地点を塞ぐ。


だが数が足りない。


獣はわずかな隙間を見つけ、そこへ降りる。


止まらない。


流れが作れない。


大球をもう一度動かす。


転進。


だが今度も空振りだった。


獣はすでにそこにいない。


「……当たらない」


エンは小さく呟いた。


力が足りないわけじゃない。


速さでもない。


やり方が違う。


風が強く吹き込む。


砂が舞い、視界が一瞬揺れる。


その隙を狙って、獣が低く滑り込んできた。


カナが間一髪で受け止める。


衝撃で足が滑る。


「エン!」


「はい!」


小球を動かし、退路を作る。


なんとか距離を取る。


だが余裕はない。


獣は再び高所へ戻った。


上から見下ろしている。


焦っているのはこちらだけだ。


「……違う」


エンは息を整えながら呟く。


分かっている。


当てに行っている。


だから読まれる。


そのとき、カナがぽつりと言った。


「ねえ、エン」


「はい?」


「あれさ」


獣の視線を追う。


跳び移る場所。


着地する場所。


「危ないところには降りてない」


エンははっとした。


確かにそうだ。


崩れた床。傾いた足場。転がる瓦礫。


そういう場所には、一度も降りていない。


必ず、足場の安全な場所を選んでいる。


「……つまり」


カナが続ける。


「降りる場所を、なくせばいいんじゃない?」


風が吹き抜ける。


エンはゆっくりと周囲を見渡した。


段差。斜面。瓦礫。


配置できる場所はいくらでもある。


今までとは逆だ。


追うんじゃない。


選ばせる。


獣が再び跳躍の姿勢を取る。


次に動くのは、向こうだ。


だが今度は違う。


エンは静かに小球を動かした。


着地できる場所を、一つずつ消していく。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

★★★★★評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです。


本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の別作です。

現代日本×ヒーローSF

 「魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》」

蜂型の機兵が侵略者と戦う物語です。

もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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