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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
2章:戦い方のかたち

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第69話 前線の混乱

毎日20時投稿

E級ダンジョンの入口を抜けた瞬間、空気の重さがはっきりと分かった。


いつもと違う。


静かではないのに、落ち着かない。


遠くから戦闘音が断続的に響いてくる。


「……もう始まってますね」


エンが小さく言う。


「うん。思ったより早い」


カナも表情を引き締めた。


複数のパーティがすでに内部へ入っている。


通常なら奥へ進むにつれて戦闘は分散するはずだった。


だが今回は違う。


音が、前から途切れない。


少し進んだところで、状況が見えた。


広めの通路。


前方で三つのパーティが交戦している。


ゴブリンの群れ。


数が多い。


倒しても、奥から次が出てくる。


「多いな……」


誰かが舌打ちする声が聞こえた。


前衛が押し込み、後衛が攻撃する。


動き自体は悪くない。


だが――前に進めていない。


エンはすぐに気づいた。


「……減ってない」


「うん」


カナも頷く。


倒している。


だが前線の位置が変わらない。


後ろから補充されている。


数が途切れない。


結果として、全員がその場に縫い付けられている。


ゴブリンが一斉に前へ出る。


前衛の一人が押し返す。


だが横から別の個体が入り込む。


「右、空いた!」


「分かってる!」


声が飛ぶ。


連携は崩れていない。


それでも、余裕がない。


誰も一歩前へ出られない。


エンは小球を一つ転がした。


壁に当たり、方向を変える。


もう一つ。


少し離れた場所へ流す。


まだ戦闘には入らない。


まず、流れを見る。


「エン?」


「……説明できませんけど」


エンは前方を見たまま言う。


「このままだと、押されます」


勝っているのに。


それでも前線が少しずつ後ろへ下がっている。


数に押されている。


実際、その兆しはすぐに現れた。


後衛の一人が位置を下げる。


それに合わせて前衛も半歩下がる。


隙ができる。


そこへゴブリンが流れ込む。


「くっ……!」


戦線がわずかに歪む。


大きな崩れではない。


だが、このまま続けば確実に後退する形だった。


エンは小球の音を聞く。


霧の遺跡とは違い、視界はある。


だが数が多い。


一体ずつ対応していては終わらない。


「……同じですね」


「なにが?」


「霧の遺跡と」


エンは小さく息を吐いた。


「見えてるだけで、やることは同じです」


もう一つ、小球を流す。


三つの球が、通路の中を動き始める。


まだ誰も気づかない。


前線は依然として押し合いのままだ。


だがエンには見えていた。


この戦いは、強さで押し返すものではない。


流れを変えなければ、終わらない。


ゴブリンの群れが、再び前へ出る。


その進行方向へ、小球が静かに入り込んだ。


戦場が、ほんのわずかにずれ始める。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

★★★★★評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです。


本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の別作です。

現代日本×ヒーローSF

 「魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》」

蜂型の機兵が侵略者と戦う物語です。

もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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